24.シスター・マレット HG
翌日です。ここは村長の家の前です。仮面の医師リンナレイと白衣の天使がやってきました。その後ろに褐色の革鎧の女がいます。
「本当に、看護婦さんはこんな格好なのか?なんか、珍しいものを見る目つきだぞ。」
「何を言う。王都の治療院では当たり前の格好だ。」
「どうして、ミニスカートなんだ。スースーするぞ。」
「白衣の天使、看護婦さんの格好は、それに決まっているだろう。なあ、アイリー!」
「ふふ、アン、かわいいわよ。ホントに天使みたい。しかし、似合うわね。なんだか負けた気がするわ。」
「うう・・」
その格好は、白い看護帽に、裾から白いストッキングの足が覗く白衣です。アイリーはあ看護婦のコスプレができると喜んでいたのですが、男のアンに負けてちょっと残念そうです。
本当は、この時代の服装ではないのです。レーニのこだわりで、王立治療院の制服にまでしてしまったのでした。ちなみに、今は看護婦でなく看護師といいます。白い看護服は明治以後で始まったようですが、血の色が目立つように青や緑、汚れの目立ちにくい黒や紺が普通で、白い服は着ないようですね。また、下半身はズボンが普通のようですね。こんなかわいい看護婦さんの格好は、アニメの幻想です。まあ、アンがかわいいから良いか!おお、そのミニスカートを恥ずかしがるアンの仕草は萌えるわ!
「すみません。村長さんのお宅ですか!」
「わお!あなた方は?」
異様な姿の一行が家の前に立っているのですから、村長が驚くのは当然です。何しろ、おかしな白装束の集団が、青肌の魔族の幼女を抱いて現れたのです。他の村人も興味津々で遠巻きに眺めていました。
さっきは、王立治療院の制服といいましたが、それを知っているのは、王都に行ったことのある人間だけです。こんな片田舎の村人が知っている訳ありません。医者は、魔術師のようなローブを着ているものなのです。
「私は、王立治療院の医師リンナレイだ。」
「王立治療院ですか!そんなエライ方がどうしてこんな片田舎まで・・」
「王命でロイレプス湖畔の奇病の調査に来た。アン、王命をみせてくれ。」
「はい。」
アンはレイの宝箱から王命を取り出します。一緒に、聖女からギルドへの依頼状もみせます。
「おお、この押印は、まさしく、王家の紋章だ。こちらは、聖女レーニ様の依頼状だな。これは失礼しました。」
「こちらのお嬢様は?」
「冒険者ギルドに依頼した臨時の看護婦と護衛だ。武器も扱えるので警護の役目もやってもらっている。こちらから、アン、アイリー、カレンだ。」
「それで、何をされるのでしょうか。」
「診察だ。治療もやる。この村の病人を集めてくれ。」
「わかりました。」
王都よりの『仮面の医師リンナレイ』が来たと言うので、みんな藁にもすがる思いで駆けつけました。我も我もと大混乱になるところでしたが、入り口で長身のカレンが腕組みしつつにらみをきかせて立っていました。そのため、順番をおとなしく待っています。アイリーとアンは、白い看護服を着てリンナレイの助手をしています。そして、みんな、症状が消えて喜んで帰って行くのです。
「おお、やはり、女神様の加護だ!痛みが引いたぞ。」
「リンナレイ様、すごいぞ。」
「いやあ。これは効くな。ばあさん腰も治ったぜ。」
「いや、看護婦の可憐な癒し笑顔が・・」
「アン様に、やさしく手を握ってもらうと天国のような気分になるんだ。」
「ホントか。おれも、行くぞ。」
「おまえは、健康だろうが!」
「うるさい。看護婦さんに手を握ってもらうんだ!」
「おいこら!ちゃんと並べ!」
「おい、騒ぐな。あの怖い姉ちゃんがにらんでいるぞ。」
「あれは、オーガの子孫だ。騒ぐと食われるぞ。」
いやはや、男どもの誤解は凄いですね。とっても良い匂いがしたというものもいる始末です。男だからそんな筈はないんですけど。
患者の中には、動けないほど重傷の人もいました。レーニの治癒魔法で、痛みは引くのですが、麻痺した手足は再び動くことはなかったのでした。
今は昼休み、レーニの表情は冴えません。一服しながら休むレーニにアンが声をかけます。どうも、ストレスがたまると一服するようです。
「また、タバコを・・」
「これがタバコか?」
「え?煙がでているじゃないか。」
「これは魔法でだしているのさ。只の筒だよ。気分だけ。」
「そこまでして、タバコを吸うのか!それより、診察してどうだった?」
「やっぱり、この病気はあれだね。」
「やっぱり、あれか。治せるか?」
「症状は軽減出来るけどね。治癒魔法の限界だな。」
「そうか。脳神経細胞は増殖しないと言われているからな。」
「治療できないのも、そんな知識が邪魔をしているかも知れねぇな。」
「問題はそいつがどこからきたかだな。」
「魚だろう。」
「たぶん、そうだろう。日本でも海魚に蓄積されて、それを人間がくったというのが定説だからな。」
「そう思う。魚を食うなと言いたいところだか・・」
「問題は魚のこれがどこからきたかだ。このあたりは鉱山も工場もないんだ。それに、ケイモクがおかしな事を言っていたんだ。」
「何を?」
「症状のひどい患者の頭が光っているとね。」
「あれは魔素だというのか?確かに地球の工業技術では広く使われているが、この世界ではそれだけ文明が発達してないからな。」
「しかも、ここ、数年で急に発生したらしい。魔法の可能性が高い。」
「しかし、変だな。だれがばらまいたかのか?何のために?」
「病気をはやらせるためだろう。遅効性の毒薬みたいなものだからな。」
「ありうるのは、へんな呪術士が治療薬とかを売りまくったり、宗教がはやったりするとだが、今のところそれはない。」
「実祭、困っているのは、干し魚業だけか。」
「それ以外の不利益を被ってないなあ。」
「そうすると、西の海の業者か?」
「ところが、ケイモクにここ魚をみせたたんだ。でも、光ってないというんだ。」
「何!それは本当か。そうすると、魔素は別物か?ますます、訳がわからなくなったな。」
お昼を済ませたカレンとアイリーがそこにやってきました。
「ねぇねぇ、何を難しいことを話しているの。」とカレンが聞きます。
「この病気の原因だよ。」と答えるアンです。
「魚から摂取した水銀じゃないの。」
「アイリー、どうしてわかるの。」と驚くカレンです。
「どう見ても水俣病じゃない。」と驚くアイリーです
「何、その水俣病というのは?」
「知らないの。昔、チッソという会社が水銀を含んだ廃液を垂れ流して、その水銀に汚染された魚を食べた住民がイタイイタイ病、別名、水俣病にかかったという公害病の典型例よ。」
「えー、凄いわ。よく、そんなこと知っているわね。」
「普通よ。」
「あ、痛ぇ。どうして、僕を殴るんだ!」
「まあまあ、夫婦の会話はもういいから!」
「これのどこが会話なんだ!」
「こらこら、午後部を開始するぞ。」
ここは隣村の教会です。今日もたくさんの患者がルシンダ・マレットのもとに来ています。彼女は必死で治療続けているのですが、教会に並ぶ患者は100人を超えています。そして、彼女の魔力では一日十数人しか治療できないのです。そして、せっかく治療してもひと月もすれば再発するのです。まるでザルで水を救うような毎日でした。
そこに、若い男が駆け込んできました。漁師のケヴィンでした。
「シスター・マレット!」
「お願いします。私の母をなんとかお願いできませんでしょうか。今朝、容体が急変して、呼吸が浅くなったんです。」
「お待ちなさい。ここに、順番を待っている人が、これだけいるのよ。」
無理矢理引き連れていこうとするケヴィンを、手伝いのシスターが止めます。
「しかし・・」
さらに、列で並んでいた男がケビィンの前に立ちはだかります。
「おい、俺は昨晩の夜からここで待っているだ。痺れて魚が取れねぇ。しかし、シスターに治療してもらうと治るんだ。また、魚が取れるようになる。」
「でも、母さんが・・」
「ウチだって、ガキが腹を空かして待っているんだ!稼がないと死んでしまうんだ!」
「わ・・・・わかっている。そこをなんとか頼む。おっかぁが、死んじまうんだ。」
「病気で苦しんでいるのは、おまえおだけじゃねぇ!」
「・・・」
みんな黙り込んでしまいましした。確かに徹夜で並んでいる人もいるのです。シスター・マレットもどうして良いかわらなくなりました。
しばし、沈黙の後、シスター・マレットが口を開きました。
「どのくらい離れているの。」
「隣村ですので、歩いて半日ほどですが・・」
「わかりました。申し訳ありません。本日の治療は、夜からとします。」
「シスター、そんなことしては、寝ている暇がありませんよ。」
「それよりも、今、失われようとしている命を守ることが大事です!」
「坊主!あっちに、俺が乗ってきた荷馬車がある。シスターを乗っけて行きな。」
「いいんですが!手が痺れて漁ができないんじゃ。」
「いいんだよ。最近は、漁ができても魚が売れねぇ。」
「ケビィン、馬は扱えるの?できないなら、俺がしてやるぞ!」
「助かります。船は自信があるんですが、馬はちょっと。」
「じゃあ。早く!」
「シスター、しっかり、捕まってくれよ。飛ばすぞ!」
こうして、ケヴィンはシスター・マレットを荷馬車に乗せて連れていくことに成功したのでした。歩いて半日ほどのところを、荷馬車が壊れんばかりの速度で駆け抜け、3時間ほどに縮めました。
「見えた!あそこです。」
見れば褐色のがっしりした少女が家の前に陣取っています。
「これは、シスター・マレットですか!」
「あなた方は何者でしょうか。」
「私は、カレン・ターラントという冒険者です。王立治療院の医師のリンナレイの護衛です。」
「え?では、王立治療院の先生が来てくださったのですか?」
「その通りです。」
「ケビィンさん、良かったですね。これでもう安心ですよ。きっと、お母さんも直るでしょう。」
ケビィンも王立治療院の医師が来ていることに、安堵の色が現れました。しかし、仮面の医師リンナレイが出てきてそれを否定します。
「それは甘いな!」
「え?先生ですか・・」
「ああ、リンナレイだ。これだけ重症化すると私の手には負えない。もともと、この病気は慢性化することはあっても、こんなに急変することはあまり無いんだ。」
「そうなんですか?」
「どうも、脳幹の部分がやられたらしい。熱が引かない。シスター・マレット、あなたの治癒魔法を試してくれないか。」
「先生がだめなものを、私などでは・・」
「いや、頼む!私の治癒魔法では、痛めた脳神経が回復しない。」
「脳神経?なんだかよくわかりませんが・・わかりました。やってみます。」
家の中に入ると、白衣を着たかわいい少女が年配の女性の手を祈るように握っています。その少女が言いました。
「毒は除いたんだけど。痛めた脳神経がもとに戻らない。シスター、頭を重点的にお願いします。」
「あなたは?」
「僕ですか?錬金術師のアン・ノーベルです。今は先生の助手をしています。シスター、こっちです。」
「頭ですか?痺れているのは、手足でしょう?」
「いいから、これは最新の理論に基づいた治療法なんです。ああ、元気ではつらつとしたお母さんをイメージしてやって下さい。」
「わかりました。」
シスター・マレットの癒しの光は、仮面の医師リンナレイとやや光の色が違うようです。アンのものとも違います。
シスター・マレットが、治癒魔法を頭にかけると、赤らんだ顔がみるみる白くなり、熱が下がってきました。浅く粗い呼吸も深い呼吸から普通の安らかな寝息に変わりました。
「おお、すごい。私ではこうはならなかった。」と感心するリンナレイでした。
「そんなはずはありません。王立の先生以上だなんて・・」と顔を赤らめるマレッタです。
「理屈は知っていても、ウデが不十分ということはあるんだよ。君は素晴らしい!君、ひょっとして、欠損を回復するハイ・ヒールが使えるのか?」
「やったことはあります。小さな子供でしたが、そのときは、数日間寝込みましたが・・」
「きっと、それだな。今回は、君は小さな範囲でそれをやっているんだ。だから脳神経の障害も直るんだ。」
「脳神経?よくわかりませんが、この病気とどう関係しているのですか。」
「ああ、説明しようか。これは、魔素水銀中毒による頭の病気だ。首のケガをしたり、頭を割られたりしたら、人は死んでしまうことは知っているな。頭は体を動かしたり、体温を調節したりする大事な機能を持った組織である脳神経があるんだ。そこが水銀毒によって犯され壊れてしまうのがこの病気の本質だ。だから、毒を除いて、頭に治癒魔法をかけてやると直る!その毒はこの看護婦のアンが除くことが出来る。あとは、君が治癒魔法をかけてやればいいだけだ。」
「そうなんですか。でも、この病気はひと月ほどで再発しますが、それは大丈夫なんでしょうか。」
「再発の原因は、毒を取り除いてないことにある。この看護婦が完全に消去するから大丈夫だ。」
「本当ですが!ぜひ、教会に来て下さい。沢山の患者が待っています。ぜひ、毒を取り除いてやってください。」
「そうしよう。この看護婦が毒を除き、私が脳神経を回復させ、君が再生させるんだ。」
直しても、直しても、再発する奇病が治ると聞いて、シスター・マレッタは大喜びです。
しかし、アンが深刻そうな顔でいいました。
「それだけではだめですよ。これは食品毒による病気です。汚染された食品を特定しないとまた再発してしまいます。たぶん、数年ほどさきでしょうけど。」
「そうだな。確かにそれを解決しないと直したことにはならないな。たぶん、この当たりだけでよく食べられているもののはずなんだ。」
「魚はよく食べますよ。それが、原因でしょうか。」
「ある地方での話だが、それが原因だったことはあったんだ。それで調べてみたら、干し魚に毒はあるが、鮮魚にはなかったんだ。」
「何か、ヒントは・・干し魚で病気になるが、生魚は大丈夫だ。ここにカラクリがありそうだ。アンとケイモクで、干し魚の製造工程を見てこい。」
「なるほど。そいつを調べる手があるか。確か、ここでも干し魚を作っていましたね。見せて下さい。」
「ケヴィンさん、お願います。」
「わかった。嬢ちゃん、来てくれ。」
「えっ、ちょっとまってください。ケイモクはどこだ。」
「外で遊んでいたわよ。」
ケイモクは男性恐怖症ですが、小さな子と仲良くなるのは早いです。青い肌は好奇の目を引き、簡単な魔法で不思議をみせて仲良くなる方法を知っていました。
「おーい、ケイモク!仕事だ。」
「はーい。」
「えっ、青い肌・・この子は魔族なのか。」
「ええ、そうですが、ケイモクだけが魔素を区別してみることができるんです。」
「マソ?」
「魔法で作られた物だよ。それと天然のものと区別できるということだよ。今回はどうも魔法で作られた毒物が干し魚にあったらしい。どうもその毒物を少しずつ摂取して病気になったということらしいんだ。この子はその毒物が僅かでも見つけることができるんだ。」
「へぇー、凄い力ですね。こんな子供が・・ケイモクちゃん、偉いなあ。」
「いやん!」
ケヴィンはケイモクの頭を撫でようとしますが、ケイモクは、ケヴィンが怖いのでアンの足にぴったりと抱きついています。
「ごめんなさい。この子、奴隷として捕まったときにひどい目にあったらしくって、男性恐怖症なんですよ。気にしないでください。」
「そうか。かわいそうに、よっぽどの目に遭ったんだな。」
アンはケイモクを抱き上げて、作業小屋へ行きました。ここは漁港村です。波止場近くにたくさんの小屋が建っており、生臭い匂いが立ちこめていました。網を張ってその上に並べられた魚やヒモで繋がれた魚がありました。
「ここです。」
「まずは、最初と最後を確認したい。それから、順を追って、製造工程の確認だ。」
出来上がった干し魚を見せると、ケイモクは光っているといいます。生魚は確かに光っていないそうです。そこで、干したばかりのしらす干しの魚を見せると・・光っていません。
「え?おかしいな。確か、ここの干し魚は、干した魚を調味液に漬けるんだよな。その調味液をみせてくれ。」
「これだが・・」
「アン兄ちゃん。これは光っている。」
「これかあ!調味液に含まれているとは・・」
「調味液に毒があるのか。それはおかしくないか。俺たちは、干し魚はあんまり食わねぇぞ。売り物だからな。むしろ、毒の無い生魚を食べていることが多い。これでどうして病気になるんだ。」
「まあ、まあ、次は、こいつの原料を並べてくれ。」
「わかった。」
次々と瓶や樽が並べられます。ケイモクは黒い液の入った瓶を指し示しました。
「これは?」
「青油だよ。ここの特産の調味料だ。ブルーケイブを発酵して作るんだ。うまいぞ。だから、どこの家でも常備している。」
「醤油?ブルーケイブ?そりゃ何だ。」
「ショウユじゃない。青油だ。ブルーケイブはロイレプス湖特産の魔藻だ。このあたりの料理に大概入っているな。」
「これだ!このあたりの人だけ罹患するのは、この調味料を使っているからなんだ。」
「ばかな。青油は昔からあるもんだぞ。こんなのに毒が入っているわけ無い。」
「いや、毒が紛れ込んだのは、ここ数年だ。だから、旧いヤツは大丈夫なはずだ。村中の青油を集めてくれ。ケイモクに見せて、僕が毒を取り除く。」
「わかった。」
「僕は先生にこの結果を知らせてくるよ。」
ケヴィンが走ってゆくのを見て、アンはみんなの待つ小屋へ行きます。
「アン、何かわかったか。」
「このあたりの特産の青油という調味料が原因だった。」
「醤油?そんなものがあるのか。」
「醤油ではなく、青油だ。藍色の濃いブルーケイブという魔藻から作るらしい。おそらく、こいつの繁殖地が魔水銀で汚染されているのだと思う。まず、村中の青油を綺麗にしようと思う。」
「よし、それと同時に治療だな。アンは体の魔素水銀の除去、私が神経の修復、マレットが神経の再生だ。三人でかかれば魔力の消費も少ない。」
村中の青油が集められました。陶器の壺あり、ガラス瓶あり、樽ありと様々です。
「ケイモク見てくれ。」
「うん、みんな光っている。あっ、これは大丈夫だよ。」
見れば黒い埃の付いた古そうなガラス瓶です。
「うぁ、すげぇな。埃だらけじゃねぇか。」
「これは使えるのか。蓋の木が腐っているぞ。いつのやつだ。」
「さあ、10年ぐらいになるかな。」
蓋をあけると異臭があたりに立ち込めました。
「わあ、こりゃあ腐っているぞ。」
「嘘だろ。これは年代物の逸品なんだぞ。」
「わはは、それでも腐ったたら終わりだ!」
「ヒェー、高級品なのに・・」
そんなこんなで、魔素水銀の消去が進みます。次は、患者の治療です。アン達は、シスター・マレッタを連れて村長の家にもどりました。今度は、アンとリンナレイが治療をした後、シスター・マレッタが治療をするのです。すると、どんな重傷者も完治するのでした。これには、驚きの声があがります。
「おお、スゴい。さすがは、シスター・マレッタだ。」
「王立治療院のリンナレイ先生がさじを投げたのに!」
「いはや、どうなっているんだ!」
「これは、聖女様だ。女神の奇跡だあ。」
こうして、村中の魔素水銀がなくなり、患者がいなくなったのでした。
村長の家で村中の治療が終わった夕刻です。
「これで、この村は全員完治したな。」
「本当に、ありがとうございました。」という村長さんです。
「明日から、各村を回るか!」と元気に答えるアンです。
「お願いします。」と言うマレッタさんです。
「お疲れ様でした。」
「さあ、帰って、メシで作るか!」と元気に言うアンでした。
「おお、アンの野営メシか。」
ぞろぞろとみんなが立ち上がったときでした。ケビィンさんがあわてて飛び込んできました。
「すみません。忘れていました。シスター、教会にもどらないと!」
「あっ、そうでした。先生、もう少し、お付き合い願えませんか!」
「え?どうしたの。」
「こっちに来るとき、教会で待っていた人達に言ったのです。ここに夕方まで戻るので待ってほしいと。」
「じゃあ、みんな首を長くしてまっているぞ。」
「やれやれ、もう一仕事するか!」
「えー、ごはんじゃないの。」
今度は、教会にもどり、夜遅くまで治療を続けたのでした。




