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10.護衛任務AG

「お早うございます。」

「あーん、ウサギちゃん!・・・・うぐ」


 アンとカレンが、ギルドに入るとコリンナさんが飛んできました。アンはさっとよけます。コリンナさんは床に激突していました。


「よお、ウサギコンビ・・・もとい、殲滅のウルフキラー、アンとカレンじゃないか。」

「これは、シルヴェスター・グルーバーさん、先日は、貴重な情報をありがとうございました。今日はどうしたんですか。」

「いやあ、行商の護衛を冒険者ギルドに頼みにきたんだ。実は、『暁の風』と言うクランが受けてくれたんだが、そこは、今、二人だけしかいないんだ。おまえらはどうだろうか。100匹以上のゴブリンの巣を殲滅したんだろう。確か、最短記録で、Dランクに上がったんだろう。」

「カレン、どうする?」

「護衛は、Cランクからじゃなかった?」

「それは、問題ありません。ゴブリン退治は、Cランクに相当する偉業です。私の愛するウサギちゃんは十分だと思います。依頼料は弾んであげてね。」

そう言うのはいつの間にかに復活したコリンナさんです。

「実は、今回は家族も連れて行くんだ。王都に行くと言ったら妻が付いてくると言ってね。女の多いクランがいいんだ。」

「僕は男ですけど。」

「カレンさんは女だろう。おまえだって、女みたいなもんだ。」

「違いますよ!」と怒るアンです。

「まあまあ、それで依頼料はいくらですか。」とアンをなだめるカレンです。

「金貨20枚だが・・」

「やります!」と、アンの口をふさぎながらひとつ返事するカレンでした。


 出発は3日後でしたが、翌日、ギルドでクラン同士の顔あわせをすることになりました。

「おはようございます。」

「あっ、ウサギちゃん。アランさんが待っているわ。」

『暁の風』は、男女2人のクランでした。男は金髪で20才程のほっそりした精悍な感じでロングソードを携えていました。女は16、7才程の青い髪の少女で鉄製の弓を持っています。


「おれが、『暁の風』のクランリーダー、剣士のアラン・ダックワースで、こちらが弓士のアイリー・ベッカムだ。」

「僕たちのクラン名は、まだないんです。僕が錬金術師のアン・ノーベルで、こちらが剣士のカレン・ターラントです。」

「おう、おまらか。ゴブリン、100匹を殲滅したと言うウサギコ・・いや、その、女のコンビか?あの中には、ソルジャー、メイジ、アーチャーまでいたというじゃねぇか。すげぇなあ。」

「いえいえ、たいしたことではありません。」

「すまねぇな。本来は俺の相方達と4人でやる予定だったんだが、みんなケガをしているんだ。シルヴェスターさんの護衛は何回も請け負っているんだが、今回は、女性を希望ということなんで、アイリーとおまえらに頼んだんだ。こいつが、紅一点のアイリーだ。」

「初めまして、アイリー・ベッカムです。あ・・」

 アイリーさんは、アンとカレンを見て、何か言いたそうな顔をしましたが、結局、特に何もいいませんでした。

「さて、護衛するリーダーだが、これは経験者の俺で良いか?」

 アラン・ダックワースはそう言いましたが、特に反対するものはありませんでした。

「別に構わない。」

「次に、護衛するときの参考にしたい。得意技を教えてくれ。」

「私は、見ての通り、これよ。」

 鉄製の弓を掲げてみせます。

「カレンさんは剣か?ちょっと、俺を相手に、見せてくれるか。アイリーもたのむ。こいつらに見せてやってくれ。アンさんはよくわからんが何か見せてくれるか。」

「ああ、いいわ。外に行きましょうか。」

「わかった。」

「カレン・・僕はなにしようか。」

「生活魔法でも見せたら?【浄化】とか。」

「うぐ・・」

「大丈夫よ。ウサギちゃんはそのかわいさが武器だから・・」

「コリンナさん、ちょっと、離れて下さい。僕も外にいかないと。」


 アンがコリンナさんをふりほどいて、ギルドの外にでると、3人並んでアンを待っていました。


「さて、どうすればいいの。」

 カレンがそう言うと、アランさんはいきなり剣を抜き、上段から切りつけてきました。カレンは体を翻して避けます。

「わぁ、何をするの。」

「なかなかの反射神経だな。ならば・・」

 今度は踏み込みつつ振り下ろした剣を回して振り上げます。カレンはこれをバックステップ躱し剣を抜いて構えます。アランは満足そうに笑っていいました。

「見事だ。ところで・・人は殺したことあるか?」

「いや・・ゴブリンならあるけど。」

「そうか。良い経験になるといな。」


 そう言うとアランはアイリーの方を見ます。


「私は魔弓士、魔法の補助で命中率を上げるの。まずは、これよ。」


 屋根の上に小鳥が数羽止まっているが見えました。アイリーはその屋根を見ながら、あらぬ方向に弓を構えると1本の矢を飛ばします。矢は大きくカーブを描いて、小さな鳥に命中しました。


「え?ウソ。」

「スゴい!」

「さらに、この銀の矢を使うと魔法が込められるの。高いくせに使い捨てだからおいそれと効果は見せられないけど。」


 それは、鉄の矢に銀の鏃をつけたものと総て銀のものと2種類ありました。


「総銀のものもあるあるんだね。純銀製?」というアンです。

「純度が高いほど込められる魔力総量が高くなるのよ。」

「純銀だと柔らかすぎて曲がっちゃわない?貫通力もなくなるし。」

「魔法で貫通力を上げるから問題無い。」

「へぇー、綺麗だね。矢筒をみせて、何本あるの。」


 アンは矢筒を眺めて、銀の矢の数を確認すると、アイリーに返します。アイリーは気がつかなかったのですが、総銀の矢が1本増えていました。アンがこっそりと【魔素生成】を使ったのでした。


「どんな魔法を込められるの?」

「炎、氷、爆裂とかね。私は火魔法と風魔法の素質しかないから、氷や爆裂は宝珠を使わないといけないけど。」

「アンができるんじゃないの。矢がささるとそこが凍る『氷結の矢』とか。」

「ん、『氷結の矢』か。付与魔法と氷魔法ができないといけないんだ。そんな・・・うーん、できるかもしれない。スキルがあるぞ。」

「で、できるのか!さすが、生活魔法のオーソリティ。でも、弓は引けないのね。」

「当たり前だ!自慢じゃないが、この細腕でそんな鉄弓ひけるか。」

 アンは世の女性がうらやむほど細身です。筋肉ダルマとなりつつあるカレンならば別ですが・・

「魔力付与ができるのか。なるほどな。おまえの得意はそこか。他にも毒が使えるんだろう。ブラックデスを毒餌で仕留めたと聞いたぞ。ゴブリンも毒ガスを使ったとか。どこに隠し持っているんだ。」

「秘密だ。どちらも、遅効性なんで、効いてくるまではカレン頼みだった。あてにしないでくれ。」

「まあ、いいか。じゃあ、明日な。」


 当日です。東門にグルーバー商会のキャラバンが集合しています。クレーバー商会の奥さんとその娘もいます。なにやら奥さんと旦那さんがもめているようです。そこに,アンとカレンが現れました。


「おまえなあ、これは無理だぞ。」

「何言っているのよ。これは必要なものなのよ。」

「すみません!」

「おお、アンとカレンか。今日はよろしくな。」

「こんちは、アン・ノーベルとカレン・ターラントです。よろしくお願いします。」

「まあ、かわいい、お嬢さんだこと。よろしくね。私は、スザンナ、この子のが娘のアリスよ。」

「僕は男ですけど。それより、一体何をもめていたんですか。」

「このひとたら、食べ物は干し肉と小麦だけでいいというのよ。野菜もなくてはだめなのに・・」

「途中で村とか町によるからそこで食べればいいだろう。生ものは腐るんだよ。」

「でも、芋やリンゴぐらいならばいいでしょ。」

「ああ、なるほどね。わかりました。僕が持ちますよ。イベ・・空間魔法を使うんで、腐りません。新鮮な生野菜を運べますよ。」

「そ、そんなことできるのか?」

「荷馬車丸ごとなんて、大量は無理ですけど。」と言うアンです。

「アンは料理や洗濯も得意ですからお任せください。料理の腕はそこらの料理人に負けていません。洗濯も浄化魔法でイッパツです。生活魔法の天才ですから、メイド代わりに使ってください。」と言うカレンです。

「コラ!カレン、余計なことを言うんじゃない。あくまで、僕の仕事は警護だぞ。」

「いいことを聞いたわ。是非、お願いしますわ。」と言うスザンナさんです。

「結構です。但し、グルーバーさん、警護とは別料金でお願いします。」とカレンがすかさず言います。

「わ、わかった。考えておくよ。・・上乗せでいいか。」

「いや、アンは倍額で!1人で2役、2倍働きますから・・」


 それから、アン、シルヴェスターさんとスザンナさんの3人は、ああでもない、こうでもないと言い合いながら、アンが荷台の半分を収納してしまいました。残りは家に残すことになったようです。初めての旅行であるスザンナさんには必要だったものです。しかし、シルヴェスターさんは、貴族のような贅沢だとぶつぶつと文句を言っていました。


 その時、大斧を担いだ大男がやってきました。いかにも強そうですが、太股に包帯を巻いています。


「おい、アラン!来てやったぜ。」

「アランさん、この人は?」と言うアンです。

「クラン『血剣』のリーダー、『熊殺しのリオン』だ。女ばかりで心許ないと言っていただろう。ケガをしているが、Cランクのベテランだ。」とアランが答えます。

「まあ、確かに、そんなことは言ったが・・アンとカレンはいいか?」というシルヴェスターさんです。

「それは、僕たちは腕が信用できないということですか?」とアンが言います。

「すまん。Dランクに上がったばかりだからなあ。護衛経験が、アランだけいうのがちょいと心配でなあ。」とすまなそうに言うシルヴェスターさんです。

「それに、おまえら護衛は初めてだろう。対人経験はあるのか?リオンさんは傭兵として戦争の経験もある。」とアランが言います。

(戦争の経験ねぇ。その割には、ゴブリン軍団にはやられているじゃねぇか。まあ、いいか。ここは、ひとつ、折れておくか。)

「わかりました。リオンさん。ご指導のほどよろしくお願いします。」とアンが言います。

「おれは、御者もできる。荷馬車のひとつも任せてくれればいいぞ。」とリオンが言いました。

「それは助かるな。他のヤツ、馬は乗れるが御者はもうひとつと聞いていたんでな。」と、シルヴェスターさんは、スザンナさんの荷物の御者をしていた男に言いました。

「そうだな。エリオット、そいつを片付けてくれ。」

「え?片付けると言っても、この荷物はどうするんですか。」とエリオットが答えます。

「店の倉庫にでも放り込んでくれ。貴重品や痛むものはアンが持ってくれた。はやく出発したい。頼んだぞ。」


 こうして、グルーバー商会のキャラバンは出発することになりました。幌馬車2台と箱馬車1台です。幌馬車2台には、グレーバーさんの手下のエリオットとリオンが御者として乗り、奥さんと娘さんの乗った箱馬車はアイリーが御者を勤めます。馬3匹で、アンとカレンが2人乗り、アランとシルヴェスターさんがそれぞれ1人乗りです。

 アンはカレンの背中に張り付くようにして鞍をまたいでいます。落ちないようにしっかりとカレンに抱きついています。(しかし、バイクに2人乗りというのを一度はやりたがったが・・こりゃ、思っていたとの反対だな。まさか、女に抱きつくことになるは・・)とげんなりするアンです。


「カレンは馬にも乗れるのか。すごいな。」というアンです。

「爺ちゃんにいろいろ仕込まれてね。」とカレンが答えます。

「さすがは野生児だな。あっ、痛てぇ。」とまた殴られるアンです。

「そこは胸よ。へんなところを触わらないで!」

「つかむほどないのに・・」

「うるさい!」

「あっ、痛てぇ。」

 そうは言ってもカレンがどこかうれしそうなのは気のせいでしょうか。


いつもように、地獄の門番にごあいさつです。

「レスリーさん、それでは行ってきます。」とにこやかにカレンはあいさつしました。

 ところが、レスリーさんは、小屋の中からカレンに手招きをします。

「おい、アンとカレン、ちょっと、こっちへ来い。」

「はい。なんでしょう。」

 しかたなく、アンとカレンは馬をおりて、小屋に入りました。


 小屋に入ると小声でいいました。

「どうして、リオンがいるんだ。」

「グルーバーさんが、女ばかりだと不安だと、ダックワースさんにもう1人ぐらい男がいないかとたのんだみたいなんです。」と言うカレンです。

「男がここにいるのですけどねぇ。」と言うアンです。

「おまえじゃなあ・・」とレスリーさんがいいます。

「うぐ!」と怒るアンを無視して、レスリーさん言いました。

「そうか、それは仕方がないなあ。しかし、リオンには気をつけろよ。悪いウワサが多い。」

「わかりました。」

 アンとカレンがと小屋を出ると、今度は大きな声で言いました。

「繰り返し言うが、本当に気をつけろよ。王都の近くで盗賊にあったという話が伝わっている。」

 さらに、小袋をカレンに投げ渡しました。

「これは何ですか。」と言うカレンです。

「選別さ。どうしようもなくなったら、それを渡して命乞いをするんだ。」とレスリーさんが答えます。

「ありがとうございます。わかりました。気をつけます。」

「盗賊にあったときの見せ金か。ガハハハ。このリオン様いるんだ。大丈夫だよ。」と言うリオンです。



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