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プロローグ

初めまして、草化玲子といいます。この話は、我が子、草化杏の愛と冒険の物語です。私は、こう見えても世界的に神童と言われ、10才にして世界化学コンテストで最優秀賞とり、17才から東京物理化学研究所の職員をしている天才です。エヘン、すごいでしょ!当時は右も左もわからぬ乙女、30才の草化祐二先輩に親切にされて惚れてしまいました。その後、結婚して18才で息子の杏を出産しました。あろうことか、出産後に祐二は病死、母上と二人で杏を育ててまいりました。


いやあ、杏の可愛いこと! 親の私が言うのもなんですが、少女の様です。小さい頃はスカートを履かせてそだてたのですが、幼稚園に入る頃からおかしいと気づきやがって、スカートを履くのを嫌がるようになりました。高校生になった今は詰め襟です。つまらん!セーラー服の方が似合うのに!今も、おかっぱ頭のその姿は、男女を問わず護りたくなる乙女、ナンバーワンだとか・・・


ここは、緑あふれる学園都市です。多くの企業の研究所が集積しているところです。国営研究所はもとより、大学の研究機関も沢山あります。住宅地区は少し離れていますが、無人運転の交通機関で結ばれています。そして、杏の通う高校と私の勤める研究所もその緑の中にありました。


それは、さておき、昼休みの屋上です。いつものように、草化杏が弁当を広げていると、匂いにさそわれたかのように、長身の褐色の美女がやってきました。棚元蓮華です。


棚元華蓮には、可憐さはありません。がさつで男も勝りで女子力の無い残念美女です。草化杏とは対照的にスポーツ万能で、この高校へはスポーツ推薦で入学しています。6つクラブに入って、それぞれ、県大会や全国大会の上位に引き上げたのだから、高校としては儲けものでしょう。身長は185で、意外と良いプロポーションをしているし、顔立ちもいいくせに身をかまわないから、折角の美貌なのにゴリラ女と揶揄されています。


「おーい。アン!弁当ある?」


 日に焼けた元気な笑顔で、草化杏に声を掛けました。


「あるよ。今日は、玲子のやつ、弁当を忘れていきやがったんだ。」


 え?ウソ!杏のお弁当を忘れたのかしら・・しまった!実は、杏の女子力はすごいです。いえ、私が杏の女子力を鍛えた訳ではありませんよ。しかし、家事全般を母に頼っていたのは事実です。そして、母が亡くなると自分のできない部分を成長した杏にお願いしたのは否定しません。杏のお陰で家は綺麗に片付いており、おいしい食事にありつけています。今日もちゃんと、私の弁当も作ってくれていたのですが、持っていくのを忘れたようです。


「おお、ラッキー、今日は2人前だわ。アンの弁当は旨いから。」


「毎回、何だって、おまえの弁当までつくらなきゃならないんだ。おまえも女だろう。たまにはつくれよ。」


「そんなこと言わないで、私の料理の腕を知っているでしょ。」


そう言って、棚元華蓮は、草化杏の隣に座りました。


彼女の女子力は、劣っているものではありません。しかし、草化杏の料理を食べ時から、作るのをやめたそうです。息子の女子力恐るべし!


さて、棚元蓮華は、草化杏の幼なじみであり、彼といつもつるんでいました。さらには、家が隣であることを良いことに、中学生の頃から我が家に入り浸りで、食事から洗濯までお世話をしております。実質、お世話をやっているのは息子の杏ですが・・。彼女の両親は外国で、まだ、小中学生なのに一人暮らしをさせられているのですから、仕方が無もいのかもしれません。


春風が薫る屋上です。弁当の匂いに混じって漂ってくる白粉のような匂いを草化杏は楽しんでいました。ああ、そう言えばこいつも女だったなあと・・と杏が考えに浸っていました。


カランと言う音ともに弁当にプラスチックの箸か投げ込まれました。その音に驚いて草化杏が言いました。


「え?もう、食ったのか。」


「あれ?あんたはまだなの。早く食べなさいよ。」


「無茶言うなよ。カレンが早すぎるんだ。どこに入っているんだか。体重増えるぞ!」


「やかましい!」


「あ、痛ぁ。この暴力女め。」


「アン、今日もNWFやろうな。」


「ああ、帰ったらやろう。」


NWFとは、ニューワールドファンタジーの略です。二人が最近はまっているオラインゲームだそうです。二人は、β版より参加の古参組であり、はまり込んでいました。私の帰宅は遅いし、大学で徹夜することも多かったのを良いことに、ゲーム三昧の生活をしていたようです。棚元蓮華に到っては一人暮らしです。だれも止める者がいませんでした。杏はミトラスの巫女アン・ノーベルとして、華蓮はミトラスの守護戦士カレン・ターラントとして名前を売っていました。但し、お互いに性別を入れ替えてゲームをやってみたいです。こいつら何をやっているのか!二人はクランを作り、レベルもカンストしており無双していました。そして、そのゲームも終盤を迎えつつありました。


「次は、カナの塔か。今度もバーンと魔法を頼むね。」


「ああ、後衛は任せとけ。装備も充実してきたし、なんとかなるよ。」


「いよいよ。魔王イベントか。これを倒したらゲーム終了よね。」


「次は何をやる?」


「新しいのがでているという噂よ。また、アルケミストをするの。」


「ははは・・・・」


「つくづく、なんだってウィザードでなくて不遇のアルケミストなのよ。」


「不遇はよけいだろう。アルケミストは全属性持ちで万能なんだ。」


「ほんとは、アルケミストと言う言葉だけで選んでいるんじゃないの。この化学馬鹿め。」


「うるさいやい。」


「それより、また、ネカマするの。まあ、その方が似合っているけど・・」


「うーん。次はやらないつもりだよ。アン・ノーベルは、なかなか、可愛い子だろ。たまたま、できたキャラクターなんだけど。引くに引けなくなっちゃって・・」


 ニューワールドファンタジーは、プレイヤーのキャラクターを好きにデザインできます専用のツールもあり、3次元ポリゴンを駆使して、リアルなキャラクターができるのです。杏は専用ツールで懲りまくった評判の美貌のキャラクター、アン・ノーベルを作っていたのです。もっとも、画面の中で動くのは3頭身にモデファイされたキャラクターでした。苦労してデザインしたキャラクターはどこへ行ったかというと、ポインターを合わせると表示されるのです。


その時でした。屋上が白い光に包まれたと思うと何も見えなくなったのです。背もたれの金網が消え去り、草化杏はのけぞります。同時に足下が消え去り、落下し始めました。


「なんだこれは!」


「いやん。これは何? 杏!助けて・・」と抱きつく華蓮です。


そして、白い光の中をひたすら落下する感覚が続きます。そして、頭の中に女性の声が響きました。


『ニューワールドファンタジーの世界にようこそ!さあ、魔王を倒しましょう。ゲームと違って死に戻りはありませんからご注意を!』


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