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第五・五話  幸一以外のそれぞれのGW四日目

幸一も美紗子も出てきません。補足として書きました。

 ゴールデンウィーク四日目。火曜日。


 太一はベッドで横になりながら考えていた。

 俺はお金に対する考えがおかしい。

 俺のお金は減らしたくない。でも、物は欲しい。

 どうすればいい?大人なら働いてお金を増やせば、使ってもまた増やせば・・・子供の場合は?

 使えばお金は無くなる。でも我慢して待っていればまたお小遣いとかお金は入ってくる。

 一回無くなったって良いんじゃないか?

 何で俺はこんなにお金が無くなるのを恐れてるんだ?

 まだ楽な事を考えてる?

 本当は全部分ってる。分ってるんだ。

 これから決着をつけるんだ。

 太一はベッドから起き上がると自分の部屋を出て、階段を下りてリビングへと向かった。太一の足がガクガクと震える。

 「あのさ、母さん」

 太一は万引きの件を母親に話し始めた。


 この日は夕方になり、雨が降り始めた。

 天気予報は一部地域にゲリラ豪雨が発生する可能性があると告げていた。

 瑞穂は降り始めた雨が窓に伝うのを眺めていた。

 施設に来て三日が経つ。ちゃんとした食事を三食頂き、体を洗い、新しい下着に服と水色のストライプのパジャマを与えられた。助け出された時衰弱していたので、今はまだパジャマでベットに横になっている。

 生に対する安心感が出てくると、瑞穂は母親の事が気懸かりになっていた。

 『瑞穂だけは側にいてね。瑞穂無しでは生きていけないわ。瑞穂が全てなの。瑞穂。瑞穂。瑞穂。・・・』

 母親と一緒にいる時間、一体何回聞かされただろう。

 それでも離れると瑞穂は母親が恋しくてしょうがなくなった。

 何処にいるんだろう?一人で大丈夫だろうか?心配だ。

 そんな事ばかりが頭を擡げていると、不意に窓の外に母親が立っている様な気がした。

 「ママ」

 そう言うと瑞穂はベットから起き上がり、もたついた足取りで部屋の外に出た。通路の先に出口が見える。出口まで歩いて行く。

 「ママ?」

 瑞穂は辺りを見回した。

 施設の敷地の門の先に母親の姿が見えた。

 瑞穂は自分に会いたくて探して来てくれたんだと思った。

 「ママ!」

 瑞穂は叫ぶと激しくなって来た雨の中を門の方へと裸足のまま走り出した。

 その姿を職員が見つけ慌てて職員も走り出す。

 瑞穂は門を抜けその先の車道へと飛び出した。

 「瑞穂ちゃん!」

 後ろから職員が呼び止める声に瑞穂は足を止め振り返った。

 

 美紗子の母親は車での買い物の帰りだった。

 物凄い雨になって来ていた。まるで海の中を運転している様だった。

 不意に目の前に人の立っている姿が見えた。

 急いで急ブレーキを踏む。

 キキィーー

 『お願い!よけて!』

 心の中で叫ぶ。

 しかし誰にもその声は届かなかった。


 水色のパジャマを着た瑞穂は即死だった。


 美紗子は何も知らず妹と父親と、母親の帰りを待っていた。



  つづく  


          

  


 

 

読んで頂いて有難うございます!


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