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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 ラストラッシュはついに剣が完成したのだと言っていた。これには12時間労働で疲れ果てていた旺伝も目の色を変えて立ち上がった。


「本当か!」


「ええ。級帝曇叡神殿きゅうていどんえいしんでんという場所に屈強な鍛冶屋さんがいましてね。その方に作って頂きました」


「ちょい待てよ。そこって碩大区の一番端じゃねえか!」


 これには旺伝も驚きを隠せない。碩大区は丁度熊本県の面積と同じなので、当然広い。だから一番端まで行くのは少々骨が折れる。時間もかかるし、仕事をたくさん抱えている今の旺伝は出来れば行きたくなかった。


「そうですね」


「取り寄せ出来るんだよな?」


「スーパーじゃありませんし、無理ですよ」


 ラストラッシュはそうだと明言していた。


「なんでだよ。ケチンボ!」


「確かに私はケチンボですが、それとこれとは話しは別です。問題は私ではなく、鍛冶屋さんの方なのですから」


「鍛冶屋の方だと?」


「ええ。あの方は少々頑固な方でしてね……剣の持ち主に直接手に取って見てもらいたいと言っているのです」


「ナンセンスだ。こっちは仕事が溜まってるのに!」


 普通の社員ならば9時に出勤して17時に退勤し、残業は御法度とされている。ところが、幹部や秘書などは例外で残業する事がもはや義務になっている。しかも社長のラストラッシュが誰よりも頑張っているので、誰も文句は言えないのだ。


「私がしておきますから大丈夫ですよ」


 そう言っているラストラッシュは明らかに疲労を隠しきれていない顔をしていた。なんせ彼は1時間睡眠で12時間以上も労働しているのだから疲れて当然だ。そんな哀れな人間に仕事を任せるほど、旺伝も鬼ではない。


「バカ野郎。誰がお前に頼めるかよ、今にも眠りそうな顔してるじゃねえか」


「……では、いかがいたしましょう」


「帰って徹夜でやるから大丈夫だよ」


「しかし徹夜は体に悪いですよ」


「それだと仕事が溜まっていく一方だろう」


 旺伝は知っている。翌日に持ち越した仕事がどれだけ精神的に突き刺さるかを昨日やっておけば良かったと絶対に後悔するので、旺伝は眠る前に全ての仕事を終わらせるタイプだ。それ故に徹夜は仕方ないのだと旺伝は考えていた。


 しかし、ラストラッシュは首を横に振り続けている。徹夜だけはしてはいけないと頑なに否定している。


「徹夜は人間の生き方に反しています。貴方……地獄に堕ちますよ」


 そう、神様は必ず見ている。徹夜をする事で確実に人間から離れていき、不確かな生物として変貌してしまうというのだ。


「そんな昔の占い師みたいな事を言われてもピンとこないな」


「ですから、早起きをして出勤をする前に仕事を終わらせるのです」


 それが旺伝の考え方だった。


「早起きだと! それは思考の外だった」


「そうです。何も徹夜をする必要はありません。早く起きて仕事をすればいいのですから」


 まさにラストラッシュは斜め上の発想をしていた。なにも体に悪い徹夜などしなくても、健康にもいい早起きをして、余った時間を仕事の時間として活用すればいいというのだ。


「凄いな。俺の頭ではそんな案は思いつけなかった。まさか早起きで時間を作るとは」


 旺伝は本気で首を縦に振って「ためになった」と呟いていた。


「今日は早く寝て、早く起きればいいんだな」


 早寝早起きは人として成功するために必須条件だ。徹夜をして昼夜逆転の者は必ず成功しない没落人生が待っている。なぜなら、普通の人間とは違う生活リズムによる精神的ストレスは必ずや心を蝕んでいくのだから。


「はい。それがベストな考えだと思いますよ」


 ラストラッシュは笑顔でそう言うのだった。




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