009
花火大会という事もあり、やはり大会の開催地は人でごったがえしていた。旺伝とラストラッシュはかなりの長身であるが、このような状況ではそれも目立たなかった。そして、友奈を含めた三人は食べ歩きをしていた。
「あ、焼き鳥だ!」
友奈が勢い良く走って、焼き鳥の出店に向かったので、二人の男も後ろから着いて行った。すると、焼き鳥が焼かれているのだ。香ばしい匂いが、辺りを漂っている。だからこそか、皆が焼き鳥を求めて行列が出来ていた。
「美味しそうだな」
「確かに、焼き鳥は最高に美味しいですからね。ビールにも合います」
「そうなのか。俺は十七歳だから良く分からんが」
「焼き鳥と言えばビール、ビールと言えば焼き鳥。これは欠かせません」
ラストラッシュは日本のビールが好きなようだ。外国人には珍しく。
「そうなのか。俺も早く大人になって酒を飲みたいぜ」
「どんな酒を飲んでみたいのですか?」
ここで、ラストラッシュが尋ねてきたので、脳内でそれを考える旺伝だった。
「外国のお洒落な酒を飲みたいぜ」
「たとえば?」
「ドイツのビールは絶対に美味いだろうな」
「生卵入りビールですか」
「なんだそりゃ?」
「失礼、なんでもありません」
「なんだよ。おさがわせだな」
「ドイツは痛風が成人病ですからね。それだけビールが美味いのでしょう」
ラストラッシュはそう言うのだ。
「へえ。日本の成人病は鬱病だけど、ドイツは痛風なのか」
「ええ。お酒の飲み過ぎは良くないという事です」
「ラストラッシュは酒好きなのか?」
行列はまだ続いているため、話しを続ける二人だ。いっぽうの友奈は二人の事をジッと見つめながら会話を聞いていた。二人は高身長のため、友奈が此方を見ている事は目線的な意味で分からないようだ。
「勿論です。職業柄、酒を飲む機会は増えますからね」
「へえ。どんな酒が好きなんだ?」
「ビールも嗜みますし、ワインも頂きます。特にこだわりはありませんが、やはり高級ワインは香りが強いですよ」
「こればっかりは分からねえな」
十七歳だからか、高級ワインの匂いが強いかどうかは分からない。
「大人になってから飲んでみてください」
「そのときに金があればな」
「大丈夫ですよ。もし、お互いに生きていれば御馳走して差し上げます」
「互いに生きていればか……深いな」
そう、エクソシストと盗賊。どちらもいつ命を落とすか分からない危険な職業だ。それにエクソシストは報酬制だから収入もまちまちだ。盗賊はいわずもがなである。
「この危険な世の中、一般人でさえ命を落としかねません。仕事の同僚、友人、家族。彼等がいつ私達に牙を剥くか、分かりませんからね」
「こういう世だからこそ、人のセンスが問われる」
「玖雅さんはセンスに対して、かなりのこだわりがあるようですね」
その時だ。前の前にいるお客様が買い物を終えて、三人の番が近づいてきた。前のお客様が買い物を終えたら、次は彼等の番である。後ろにも行列が出来ているため、先に買うものを考えないといけない。
「お前ら、何を買うか決まったか?」
「私はネギまを頂きます」
「あら、渋いですね」
「そういうお前はどうなんだよ?」
と、旺伝が訊いた。
「私はつくねにしましょう」
「それじゃ、俺はももかわを食べるとするか」
三人は互いに違う物を頼むようだ。やはり、人によって好きな物は違うらしい。前の人が買い物を終えて、三人が買い物をする番となった。三人は食べたい物を店員に頼んで、お金を払って焼き鳥を買ったのだ。しかし、座って食べる場所が無い。
相談の結果、三人は焼き鳥を歩きながら食べることになった。




