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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 こうして疑問がつきない旺伝だったが、時間は必ず経過する。そして、トリプルディーが出していた問いが着実に答えへと近づいていく。


「さあ、種明かしの時間が近づいてるんじゃねえか?」


 さっきからトリプルディーが示している人物が何者なのか、きになって仕方がない旺伝は心も体もウズウズとしていたのだ。


「そうですね……そろそろ時間のようです」


 トリプルディーは壁にかけられている時計を見ながらそう言っていた。


「今の俺は、お前の言っている助っ人の正体が知りたい」


 髪がムズムズする。やはり人は問いを投げかけられると、急激に頭を回転する行きお者である。やはり謎こそが生きているという実感を湧かせてくれる最高のカンフル剤だ。


「そろそろ約束の時間ですから、もう少々お待ちください」


 まるでお客様に対応する店員のような口ぶりだ。トリプルディーは高価なネックレス、煌びやかに光る黄金の腕時計を身に着けている。その派手な格好を見ると、まるで宝石店の凄腕店長のようにも思えてしまう。それぐらいの人物なのだ・


「思ったけど、なんでてめーは年下の俺にも敬語で喋るんだ?」


 ここで、大中小で言えば中程度の疑問が脳裏に湧いた。何故トリプルディーはどんな人間にも敬語を使い、物腰が柔らかいのかまるで理解出来なかった。なんせ、玖雅家の人物は敬語よりもタメ口で喋る人間が大勢いるので、敬語の何がいいのか理解すら出来ない。たとえ年上でも、相手が温厚な人物なら平気でタメ口を使う。そんな家系なのだ。普通ならば、怒られるのだがこの家系は成功者の吹き溜まりと言われるぐらいのエリートな家系なので、誰も彼らを注意する者はいない。むしろ、タメ口でも許される雰囲気を持っている者がほとんどだ。


 旺伝もその内の一人だ。現に、ラファエルにも敬語を使っていないがそれで怒られた事は一度も無い。やはり敬語が間違っているからと言って怒られるのは人間の性質による。明らかに真面目な好青年が間違った言葉を使っていると、平気で年上の人に怒られる。だが、旺伝のように破天荒な人間は多少間違った言葉を使っていても許されるのだ。


「私が敬語を使う理由ですか?」


「何事にも理由が生じるからな」


「そうですね……物心ついた時から私が敬語を使っていました。その理由は両親にあります」


「ほう。てめーの両親が原因なのか」


「ラストラッシュの家系は代々、敬語で喋る人がたくさんいました。なので私も自然とそうなったという訳ですよ。特に難しい理由ではありませんね」


 そうなのだ。人間の本質は育った家系によって形成される。真面目な家で育った子は真面目になり、破天荒な家で育った者は破天荒になる。無論、例外はあるが大体はそうなってしまう。この二人のように。


「なんだよ。俺達、逆の家庭で育ったんだな」


 そう言って、旺伝は笑い飛ばした。


「そうですね。これは実に面白い現象だ」


 するとトリプルディーはIQ200の頭をフル回転させているようだ。きっと、数多くの知識を脳内で融合させて答えを導き出そうとしているのだろう。


「偶然か必然か」


 判断に困る。この世界は偶然で構築されているのか、それとも必然で構築されているのか、生きていく上で我々の永遠のテーマである。


「勿論、私達の出会いは必然です。運命に導かれました」


「ちょい待てよ。一歩間違えれば口説き文句じゃねえか」


 そう、女は特別や必然という言葉に弱い。「お前は特別な存在なんだよ」、「偶然じゃない、これは必然の出会いだ」などと低い声で耳元で囁けば大抵の女はイチコロである。無論、両想いである場合だが。


「私は女性を口説く時はもっと友好的な言葉を使いますから大丈夫ですよ」


 しかし、トリプルディーはこの無難な決め台詞を使わないというのだ。


「ほお……それは興味があるな」


 女好きの旺伝は興味津々だ。



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