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トリプルディーの差す最強の助っ人とは、終始旺伝はその事ばかり考えていた。一体どんな人物が来るのか、明白なヒントすら貰っていないので分からずじまいだ。しかし旺伝も会った事がある人物だと言うのだから予想外な人物では無い筈だ。もしかすると、昔に出会った友達かもしれない。だが、トリプルディーが旺伝の昔の友達なんて知る由も無い。
ともなれば、一体全体誰なのか、頭の中に疑問が湧いてくる。この疑問こそが人間の行動力の源でもある。もし人間から疑問を取り除いたら、いつまで経っても夏至時代のままだっただろう。エジソン、アインシュタインなどの著名人だってそうだ。頭の中に浮かぶ疑問が彼らの行動力を増したのだ。
故に誰でも著名人になる可能性はある。ここにいる旺伝だってそうだ。こうして誰が来るのか想像するだけでも、無限の創造性が広がるのだから。
そういった意味では、やはり謎こそが原動力となる。謎を与えられる事で疑問が湧いて、行動力に繋がる。常に真実と向き合うだけでは決して人間は成長しないのだと言う事を若干17歳の身分でありながら、少しづつ理解し始めた旺伝だった。
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「一体全体、誰が来るんだ?」
旺伝は訳が分からないといった感じで頭を悩ませていた。
「それは来てからのお楽しみですよ」
「で、そいつは本当に来るんだろうな」
「ええ。約束を守る男ですからね」
「成程……男か」
「これは失礼致しました。つい口が滑りまして」
と言いながら、トリプルディーは口元を右手で押さえていた。
「あまりこんな事を言いたくないが、最近女の匂いを嗅いでいないな」
大の女好きである旺伝は雌こそが心のよりどころである。どんなにカッコいい男が目の前にいようが男が女に勝る部分など何も無いと考えている。そんな旺伝が雌の部分で一番大好きな箇所はまさしく乳だ。大きければ大きい程、彼にとってはプラスとなる。と言っても、あまりにも大きすぎるのは許容外となるが。
「もしかして、女性が良かったのですか?」
「当たり前だろう。俺の知ってる女性陣はどれも美人ばかりだ」
そう、ここで美人が出てくれば最高に盛り上がると旺伝は考えていたのだ。しかし、そんな事は起こりえないという事をトリプルディーに言われたので、半ば落胆状態と化しているが。
「これまで、どれだけの女性を召し上がったのか是非聞いてみたいですね」
「俺の武勇伝などツマラナイさ。それよりもてめーの武勇伝が聞きたい」
そう、自分の武勇伝ほどツマラナイものは無い。ほとんどの人間は人に自慢できる事をしてきていない。というよりも、他人に自慢する程の活躍がないのだ。自慢という行為は好かれる行為では無い。よっぽど崇拝されているならば話しは別だが、どんな瞬間にも自慢はするべきではない。
相手から自慢してくださいというメッセージが無い限り、絶対に自分から言ってはいけないのだ。もしも言ってしまえば相手はきっと内心で舌打ちしているだろう。
「私の武勇伝ですか」
「てめー程の財力があれば、それはそれは立派な雌とベッドインしたんじゃないか?」
「どうでしょうね。想像にお任せしますよ」
ここでトリプルディーは謎を置いた。
「ちょい待てよ。せっかく自慢する機会を与えてやってるのにさ」
「私も自慢する程の事はしていませんからね」
そう、世界でナンバーワンの企業家ですら自慢する事は何一つないのだと言うのだ。
「それは嘘っぱちだって」
「いえいえ、謙遜するつもりは毛頭ありませんよ」
「立派なブツをお持ちなんだろう?」
「それはまあ……否定しませんが」
男としての優劣が決まるハッキリとした点だ。いくら相手が人生の先輩でも、この大きさで負ければ男としては恥ずべき事になる。
「やっぱりじゃねえか。その巨槍でどれだけの雌を昇天させたんだ?」
昼間から、二人の男が何を話しているのだと言うのか。しかもここは未成年が多く在籍している高校だ。さすがに刺激的すぎる。
「どうでしょうねえ」
「覚えていないぐらいという事か?」
「そうかもしれませんし、そうでないかもしれません」
何故か、トリプルディーはハッキリとした答えを提示しなかった。




