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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 結局、ラファエル=ランドクイストを説得するのに失敗した二人は待合室でラファエルが戻ってくるのを待っていた。さすがに会合の邪魔をする訳にはいかないので、待ちぼうけを喰らっているようだ。


「さすがに一筋縄ではいけませんね。あの方は」


「お前を小物扱い出来るのはあのセンコーぐらいだろうな」


 旺伝はトリプルディーの戦闘力を知っているからこそ、この発言が出来た。彼との邂逅では手も足も出ずに負けてしまった。そして、この世界では重要な職に就いている者ほど強者という法則のような物があるので、自ずとトリプルディーの戦闘力は計算できる。


「思っていた以上のキレでしたよ。やはりあの人に老いはないようですね」


「本当にそうなのかな」


 ここで、旺伝は疑問に感じた。


「え?」


 トリプルディーが不思議そうな顔でこちらを覗き込む。


「ラファエルの全盛期がどうだったのか、俺達は知らない。もしかすると昔はもっと強くて、更に口達者な奴だったかもしれない」


 そう、ラファエルの過去を知る者は数少ない。しかも、過去を知っている皆が口々に真実を語ろうとはしない。まるで口封じでもされているかのようにだ。彼に纏わる文献や書物も残っていない。だからこそ、ラファエルの全盛期など知る由も無かった。もしかすると今が全盛期かもしれないが、大昔、ラファエルがもっと若かった頃が全盛期なのかもしれない。


「もしかすると、今の彼は老いている?」


「お前にはその可能性を否定出来るのか?」


「出来ませんね。私のコネを持っていても彼の過去を知る事は出来ませんから」


 過去とは振り返るものだが、体験していない過去は振り返れない。証言してくれる者がいるのなら話は別だが、この場合はそうはいかないのだ。


「そもそも……奴は一体、何者なんだろう」


 頭の中に疑問が浮かぶ。まるで水槽に風船を入れたかのように、プカプカとだ。それも一つや二つじゃない。奴に関しては色々な疑惑が満載だ。


「その答えを知っている者はいます。いますが、まるで禁忌の様に口を閉ざし邸ますからね。もしも貴方の疑問を解決しようとするならば相当な出会いが無ければ不可能でしょうね」


「ラファエルの過去を知っている者との出会いか」


「ここ100年の彼は分かっています。ですが100年以上前の事は何も分かりません」


「一応聞いてみるが100年前のラファエルはどんな感じだった?」


「今と何も変わりませんよ」


「何もか!」


 旺伝は驚いて、素っ頓狂な声を上げた。100年も昔というのに今と何も変わっていないのだから驚くのも無理はない。


「ええ。容姿も口調も何もね。以前某動画サイトで彼の演説を見ましたが、それが残っている彼の最古の動画です。アップロードされたのは丁度100年前でした」


「ちょい待てよ。ってことは100年前から爺さんだったのか」


「魔導国宝として認定されたのが100年前ですからね。もっと生きているという事でしょう」


 そう、本国ではあまりにもラファエルが英雄として崇められているため急遽用意された彼だけの資格だ。無論、他の者も魔導国宝に認定される事は可能だが、その認定基準があまりにも難解なため、現状この資格を持っているのは彼だけという事になる。


「つまり魔導国宝になる前の過去が消えているという事か」


「こんな芸当が出来るのも彼だけでしょうね。普通ならば彼の過去を暴露する証拠や人間が現れてもおかしくないのに、彼に限ってはその限りではありません」


「とても人間業じゃないな」


 旺伝は信じられないといった感じで首を振るしかない。


「そもそも彼が人間だという証拠もありませんしね」


「まさか、人間の形をした異種族だと言うのか」


「貴方の言葉を使わせて頂きますと、その可能性は否定できないでしょう。私にも貴方にもね」


 さすが社長だけあって飲み込みが早い。旺伝の言っていた事をこの短時間で完全に理解しているではないか。


「確かにそうだ。その通りだな」


 先程自分の言った言葉なので同意するしかない。


「ですが、これも可能性なだけです」


「もしも異種族だとしたら、どんな種族だろうか」


「悪魔文字を翻訳できるのですから、それこそ悪魔かもしれませんよ」


「ハハッ、言えてるな!」


 笑いながら旺伝は理解した。今までの会話はラファエルが悪魔だと蔑むための会話だったのだと。




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