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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 ラファエル=ランドクイストという男と邂逅した者は口々にこう言う。「とんでもない爺さんだ」と。彼が年寄りだからと言って舐めた口を聞く若者は実に多い。それこそ思っている以上に世間の若者は無謀だ。


 ラファエルにタメ口を使った者は容赦ない罵倒の嵐にあって、中には精神を病んだもいた。だからと言って皆が皆そうではない。ラファエルの陰湿なイジメに耐え抜いた者は、社会でどんな理不尽な事があっても耐えられる強靭な精神力を身に着ける事が出来るのだ。ある意味、ラファエルは精神力を鍛えるスペシャリストなのかもしれない。


 そんな老人が今、二人の目の前に立っている。サングラスを装着しているので表情がまるで読めないが、不機嫌である事はほぼ間違いないだろう。面白くなそそうに口角を歪めて、眉間にシワを寄せている。


 相手が普通の爺さんならば一喝してやればいい話だが、この男相手だとそうはいかない。まず、口喧嘩で勝つ事は不可能である。これまで幾度となく口達者な人間が彼に言い返そうと口を開くが、最終的には誰もが無言と化していた。口からマシンガンのように罵倒の言葉を放出するので、「こりゃ敵わん」と諦めるようだ。


 旺伝とトリプルディーの二人は口で刃向う事をしていない。なぜならば、一度拳と拳のぶつかり合いで負けているので勝負する気すら起こらない。最初から勝敗が分かっている試合など誰も受けないのと同じだ。


 それぐらい、ラファエルは口だけではなく戦闘力も達者とされている。しかも常に手を抜いて本気を出していないというのだから驚きだ。奴の奥底に眠っている本当の力とは一体何なのか。疑問が尽きる事はない。




 *******************




「見苦しい……今日はハエが二匹も飛んでいるじゃないか」


 ラファエルの口攻撃は止まる事を知らない。次から次へと罵倒の言葉が飛び出すのだからこちらとしても参ってしまう。それでもラファエルの起源を損なえばそれこそ国際問題に発展しかねないのので慎重な扱いが必要になってくる。


「私達は貴方様にお願いがあってきました」


「絶縁したのを知った上でそんな言葉を使っているのか?」


「はい」


 まさに、指を切る覚悟がトリプルディーの全身からあふれ出ていた。


わしとて暇じゃ無い。これから大事な月寄りがあるのでな失礼するぞ」


 と言い、ラファエルは黒服の男と共に学園内に入って行ったではないか。これには二人が慌てた様子で後を追い、速足で歩くラファエルに歩幅を合わせながら必死な言葉を投げかけた。


「お願いします。話しだけでも聞いてください」


「最底辺魔法使いである貴様等が儂に話しかけている時点で大問題だ。その十本の指が無事だけで有り難いと思うのだな」


 まるで話しを聞いてくれない。それどころか聞く耳すらもってくれないのだ。


「頼むよ。あんたにしか無理なんだ」


 旺伝も参加して、ラファエルをどうにか説得しようと頭を下げている。


「ふん。アポ無しでわしと話そうなぞ、おこがましいわ。千年経って出直して来い!」


 要するに、死ぬまで顔を見たくないという事なのだろう。絶縁した関係とはそういうものだ。決してラファエルが過剰な訳では無い。


「そこを何とか話だけでも折り合えませんか?」


「諄いぞ。今の儂は忙しいと言った筈だ」


「それでは会合が終わったらお話しを聞いてくれませんか?」


「ふん。見返りがあるのなら話は別だが、そうでなければ時間の無駄に過ぎん」


「お金ならあります」


 すると、その一言に反応したラファエルがピタリと止まって、トリプルディーの顔をジロリと睨み付けたと思うと、こう言ってきた。


「年老いた儂が、今更金に興味を示すと本気で思っているのか?」


「それでは何に興味を示すというのです?」


 トリプルディーも負けじと眼力を放つ。


「……知識だよ」


「知識?」


 旺伝が素っ頓狂な声を出して、尋ねた。今の旺伝は金欠なので金よりも知識が欲しいと言っているラファエルの言動が理解出来なかった。それにラファエルはありとあらゆる分野に精通していて、既に膨大な知識を頭に溜めこんでいる筈っだ。それなのに知識が欲しいというのだから驚きである。


「そうだ。儂を唸らせる知識があるのならば話は別だ。喜んで貴様等の言う事を聞いてやろう。だが、知識を持たずして此処に来たのならば……素直に諦めるんだな」


 ラファエルはそうだと言うのだった。



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