008
「あー! あそこに焼きそばの屋台を発見しました!」
友奈は元気よくハキハキと声を出しながら屋台の元に駆け寄った。旺伝とラストラッシュも顔を見合わせて、屋台に向かった。すると、屋台からは焼きそばの香ばしい匂いとソースの香りが漂っていた。
「焼きそばか」
「焼きそば……なんですかそれは?」
ラストラッシュが尋ねてきた。
「細い麺を焼いて豚肉とかキャベツと一緒に料理するんだよ」
旺伝はかなり大雑把に説明していた。
「豚肉ですか……」
すると、ラストラッシュは浮かない顔をして焼きそばを見つめるのだった。その眼差しは、焼かれた豚肉に向けられていた。
「そうか。インドには豚肉を食べる習慣は無いのか」
これは宗教的な問題だった。
「豚肉は地域によって食べるところもありますが、牛はありません。私はどちらも食べたことがありませんからどんな味か分かりませんね」
ラストラッシュはそう言うのだった。
「日本で例えると犬肉みたいな感じか」
「はい。そうです」
「ごめんなさい。そうとは知らず」
見ると、友奈は肩を落として伏し目がちになっていた。ラストラッシュはそんな友奈に近寄って、頭の上にポンと手を置く。
「大丈夫ですよ。私は平気ですから気を落とさないでください」
と、ラストラッシュは言うのだ。
「だったら焼きそばを食うのはやめておくか」
旺伝はそう提案をした。
「では、日本の祭りは他にどんな物が有名なのですか?」
「かき氷だな」
「かき氷ですか。それなら分かります」
「あ、ちょうどあそこにあるよ!」
友奈が指差した先には確かに、かき氷屋さんが出店を開いていたのだ。一行は駆け出して、立てかけられている看板のメニューを読む。
「イチゴ、ブルーハワイ、レモン、マンゴー、フルーツミックス、バナナ」
代表で旺伝が看板のメニューを読み上げた。
「どれもおいしそう」
目をキラキラと輝かせているのは友奈だった。
「確かに氷にシロップをかけるのは画期的なアイディアですね。誰が最初に考えたのかは知りませんが、素直に尊敬しますよ」
隣のモヒカンは真面目な顔をして尊敬すると言っていた。
「で、何を食べる?」
旺伝が皆に聞いた。
「イチゴ!」
元気よくだ。元気よく返事をする彼女だ。
「そうですね。私はフルーツミックスをいただきましょうか」
「俺はブルーハワイだ」
旺伝がそう言った。
「旺伝君って青色好きだもんね」
幼馴染だからこそ、旺伝の好きな色を知っていたようだ。
「青いサングラスに青い服、そして青いかき氷。まさに、三種の神器だ」
そして、三人は店員に自分が欲しいかき氷を注文した。かき氷を受け取ると、それぞれは歩きながらにかき氷を食べるのだった。
「やっぱり祭りと言えばかき氷だね」
「そうだな」
旺伝は、ブルーハワイのかき氷をパクパクと食べていた。すると、横の金髪モヒカン男は甚平から銀色のスプーンを取り出して、上品に食べていたのだ。
「ひんやりとした氷の口どけと様々なフルーツの味が絶妙のハーモニーを奏でています」
「こいつはたまげたぜ、スプーン持参かよ」
「私は何時でも御飯が食べられるように、フォークとスプーンは常に持ち歩いていますよ」
ラストラッシュはそう言うのだった。




