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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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079


 二人の足取りは非常に重かった。特にトリプルディーはさっきから何回溜め息をついたのかも分からない程である。ここまで二人を地獄の底に叩きつける理由、それこそがラファエル=ランドクイストと対面する事だった。彼との因縁は凄まじく、二度と会う事はないだろうとお互いに確信していた。


 にも関わらず。


 こうして二人で足若丸魔法高等学校の門を叩いているのだから人生とは分からないことだらけだ。今日は魔法学校の校長が集まる月寄りの日なので、遠路はるばる魔法界からあの男がやってくるということだ。


 しかし、受付の話しによれば、まだラファエルは到着していないという事だったので二人は正門でラファエルの到着を待つことにした。炎天下の中、二人共やけに真面目なスーツに身を包んでいるので、暑くて暑くてたまらない。もう嫌だ。このまま帰ってしまおうという、まるで仕事量の多さにびっくらこいた新入社員のような気持ちになっている両者であった。


 だからと言って。


 このまま手ぶらで帰る訳にもいかない。どうにかラファエルと話をつけて悪魔文字の翻訳をしてもらわないといつまで経っても話が前に進まないからだ。



 *****************



「遅いですね。いやまったく遅いですよ」


「俺達が早すぎるだけだろう」


 二人は暑さにやられて無意識にコントをしていた。


「何を言われるか分からないので月寄りの始まる1時間前から用意したのですが、その作戦が仇となりましたね」


 そうだと確信するトリプルディーだった。


「まあ、遅れるよりかマシだよ」


「そうですね。ここはポジティブに物事を考えましょう」


 人間はネガティブだからこそポジティブな事を考えるのだ。元々ポジティブな人間は自分の事をポジティブとは思っておらず無意識に前向きな事を考える者だ。一方、ネガティブな人間が意識を前向きにしようとポジティブな言葉を口にして、どうにか気持ちを前向きにしようとする。


 トリプルディーはどちらかというと後者のタイプだと旺伝は感じた。なぜならば忙しい環境に身を置かれるとどうしても寝不足になってしまい考える事が後ろ向きになってしまうからだ。それはここ最近で嫌がおうにも思い知らされた事実だった。


「ポジティブっつうとどんな感じだ?」


「そうですね……ラファエル先生と会うのが楽しみだと脳を錯覚させるのです」


「それは無理難題だな」


 言下に否定する。そんな事は不可能だと旺伝自身が良く知っているからだ。


「でしょうね」


「だよな」


 二人は苦笑いを浮かべた。とその時だ。黒いリムジンが前方からやってきたと思うと、二人の至近距離まで接近してきた。これには旺伝も度胆が抜かれて心臓の鼓動がいつもより早くなる。


 すると、リムジンから出てきたのは高身長の男だった。ガタイが良くてまるでバスケットボール選手のような背の高さを誇っている。二人の身長は共に191センチを超えているが、それ以上の高さなのだ。故に2メートルは超えているだろう。


 その男が後部座席の扉を丁寧に開けると、その男よりもさらに身長の高い大男がリムジンから出てきたのだ。


 顎には整った無精髭を蓄えて、恵まれた毛髪量の白髪をなびかせてサングラスをかけている老人だ。


 間違いない。奴こそがラファエル=ランドクイストだ。


 その圧倒的な身長で威圧感が凄まじく、サングラスを装着しているので表情すら読み取れない。二人はあっという間に後手に回ってしまった。


「この者達を知っているのですか」


 二人を見つめるラファエルの様子に疑問を感じたのか、黒服の男がラファエルに話しかけていた。


「ああ。知っているとも」


 ラファエルは見据えるかのように一直線に二人を睨み付けていた。たとえサングラスをかけていても、奴の鋭い眼光が心臓に突き刺さりそうな勢いだ。


「何者なのですか?」


「右に立っている金髪の男は、たかが数兆円の利益で舞い上がっている小物だ。生まれた時から愚か者として蔑まれ、一生罵倒され続ける運命が待っている」


 始まった。ラファエルの鞭が。


「…………」


 下手にラファエルを刺激する訳にもいかないので、トリプルディーは何も言い返さずに屈辱に耐えていた。


 すると、ラファエルが旺伝の額に指を差して、こう言い放った。


「そしてこの男はフリーターになるために学校を中退した負け犬だ。これから先、一生負け犬人生が待っているというのに無駄な努力を続けている……まったく嘆かわしい存在だ。この男には何の価値も無い」


 こうして二人はとんでもない先制パンチを喰らわされたのだった。




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