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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 もはや朝から意気消沈している二人だったがいつまでもテンションを落とす訳にはいかない。今日はなんていったってラファエル=ランドクイストと会う予定なのだから。当然、彼の連絡先を知らない二人はアポ無しという事になる。


 そんな二人は「アポ無しで、菓子も無いのか!」というラファエルの怒り狂う顔を思い浮かんだので、朝から近くの商店街に買い物に来ていた。無論、トリプルディーは有名人なので変装をしている。今日のコーディネートは丸いサングラスをかけて、アロハシャツを着ていた。ハッキリ言ってナンセンスだと旺伝は思っていたが、もはやそれにツッコミを入れる余裕すらない。どうやって、ラファエルの怒りを鎮めるかだけに集中せざる終えないのだから。



 **************************



 まだ朝の7時だというのに商店街は活気に満ち溢れていた。何を隠そう、二人が住んでいる碩大区は東京都の中でも商人の町として有名だ。なので、朝から商店街が賑わっているという事である。人混みでもみくちゃになりながら、どうにかお目当ての和菓子屋さんに辿り着いた二人は暖簾を潜って店内に入る。


「さて、何を買いましょうかね」


「適当にもっさんまんじゅうでも買えばいいんじゃねえか?」


 もっさんとは碩大区の公式的ゆるきゃらだ。髭をボーボーに生やして、鼻から鼻毛が出ているナンセンスの塊だが、世間からは微妙に人気があるのだった。ところが旺伝はこのゆるきゃらを嫌っていて、テレビや街頭で見かける度に心がゾワゾワとする。


「そうですね。そうしましょうか」


「でも、ちょっと高いな」


 ショーケースには8個入りで2100円というとんでもない数字が書かれていた。普通のまんじゅうならば800円程度で買えるというのに。


「本当ですね……まんじゅうのくせに生意気な」


「ぼったくりか?」


 あまりにも高額なので思わず、ギリギリと歯軋りをする。


「かもしれませんね」


「でも、ここは創業200年近い老舗中の老舗だしな」


「その面子に信じて買ってみましょうかね」


 こうして、二人はもっさんまんじゅうを一つ買って店を後にした。次は特に用事が無いので、二人は適当に時間を潰しながら商店街を周る事に決めた。


「特にやる事はありません」


「今日は暇なのか?」


「いいえ。会社には仕事が山盛り残っていますが、それどころじゃありませんからね。先にあの方を片づけておかないと仕事に集中できませんよ」


 そこまでの存在だと言うのだ。ラファエル=ランドクイストという男は。


「そうか……それでセンコーは何時に足若丸に来るんだ?」


 と、旺伝は問うたのだった。


「朝の10時ですね。今日は月に1度、魔法学校の校長が集まる月寄りの日ですから当然あの方も来訪してくるでしょう」


 魔法学校は日本に1つしかない。他の国でも大体1つと相場が決まっている。なのでそんなに多くの校長は集まらないのだ。


「月寄りって……確か裏社会の用語だったよな」


「私も裏社会の住人ですからねえ。つい使っちゃいますよ」


 忘れがちだが、ラストラッシュは社長だけではなく盗賊としての顔も持っている。それも盗賊ギルドの支部長だというのだから驚きだ。


「そういうものなのか」


「堅気の人間には分からないでしょう。この気持ちは」


「どんな気持ちなんだ?」


「いつ、どこで命を狙われるか分からない気持ちですよ」


「今日その命が潰えるかもしれんな」


 旺伝流の冗談だったが、トリプルディーは笑っていなかった。


「文字通り、あの人とは一度命の奪い合いを致しましたから」


「ああ……そんな事言ってたような言ってないような」


 どうなのか、記憶が曖昧だった。


「確かに、あのバトルが再来するかもしれません」


「そうなった時は確実にこのエリアは吹き飛ぶだろうな」


「そうなったら困りますね」


「だったら、暴力ではなく口を使ってくれよ」


「心配ありません。社長という役職は伊達ではありませんから」


 そう、交渉事には慣れているというのだ。



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