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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 トリプルディーと旺伝は食堂の中で飯を食べながら会話をしていた。この何気ない行動にもちゃんとした意味合いが含まれている。人間という存在はどうしても知り合いと喋りたくなる生き物なので、ついつい友達と外食に行って会話を交わすというケースがほとんどみられる。これは別に友達だけではなく、仕事の同僚や家族ともそうだ。所謂、交流関係を深めるツールとして、こういった外食が使われる事は多分にある。


 今回の食事はそういった意味合いも含まれているようだ。お互いに喋りたい事があってかつ、コミュニケーションを取りたいという本能がそうさせているのかもしれない。人間というのは不思議な存在で、理性を保っているように見えても実際は本能を使って生きている者がほとんどである。本能という言葉が野蛮的で嫌われ、ついつい理性という言葉を使ってごまかしてしまうが、そうじゃない。なんでもかんでも理性に結び付けるのは可笑しい。人と話したいと言う時は集団行動をしたいという本能的な表れなのだ。


 よって、トリプルディーと旺伝は本能的に会話をしている事になる。それよりも、もはや習性に近いだろうか。人間の野性的行動が忍び寄る危険を察知して、仲間と一緒に行動しているのだ。ここでいう『危険』とは勿論、あの老人の事を差すのだが。




 *****************




 香ばしく焼けたサーロインステーキをがっつく旺伝だ。彼の家系は代々、無類の肉好きなので旺伝もそれは例外ではない。勿論魚も好きだが、それ以上に肉を見ると興奮を抑えきれない。実を言うと、以前山父の家を訪れた時にイノシシの肉を食べたくて仕方なかったのだが、そこは我慢した。トリプルディーが頑なに「結構」と言っていたのと、朝から肉を食べて気分が悪くなったらどうしようという警戒心のような感情が働いたからだ。


「はあ……俺は今、肉を食べる喜びを胸に感じている」


 薄目になって、すっかり乙女な表情になっていた。


「そこまで美味しいというのですか」


「噛めば肉汁が溢れて、口の中で弾ける」


「そうですか。それは良かったですね」


「口の中で音楽を奏でている」


 そこまでだと言うのだ。肉という存在は。


「そこまで喜んで頂けると、こっちとしても嬉しいですよ」


「あのセンコーと会う前のちょっとした幸福だな」


 ここで、旺伝は頭の中にラファエル=ランドクイストの顔を思い浮かばせた。整った無精髭に彫の深い顔立ち、そして老人だというのに恵まれた毛髪量、全てがそんじょそこらの老人とは訳が違う。彼の全身から放出される圧倒的な威圧感は人々をたちまち凍りつかせる。それぐらいオーラだけでも違うのだ。


「着々と進んでいますね。時間は」


「残り60時間程度か?」


「そうですね。時限爆弾のタイムリミットみたいですが」


「あの人に比べれば、時限爆弾なんて赤ん坊みたいなもんさ」


 まさにその通りだった。彼の力があればモンスターペアレントなどあっという間に沈黙してしまう程の影響力を持っている。人間的にもそうだが、教師としても向こう所敵無しと言っても過言ではない。無敵超人という言葉はまさしく彼の事だ。


「一瞬否定しようと思いましたが……否定できませんね」


「そうだろう。あの教師との邂逅は未だに忘れられない」


 脳裏に焼き付いているというのだ。


「何かあったのですか?」


「俺がモンスターに襲われている時だ。奴が助けに来て、見た事もない白い魔法を使ってモンスターを一瞬の内に滅殺してしまった」


「最強の魔法使いに相応しい勝ち方ですね」


「俺は未だにあの魔法が何だったのか、聞きだせていない。ここになって少々気になってきたのさ。マジで」


 それが旺伝の本音だった。あの魔法の正体を聞こうとしても今まで何度もはぐらかされてきた。しかもネチネチとした愚痴を手土産にされる始末だ。これでは旺伝の精神が持たないので、独学で調べてみたが、そんな魔法の記述はどの書物を調べても載っていない。まさに謎の魔法だったのだ。



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