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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 旺伝とラストラッシュの対話は止まらない。まるで、戦場を駆けるマシンガンの弾のように、ありとあらゆる話題が飛び交っているのだ。それこそまさに熱中のマシンガントーク。何が二人をそこまで熱中させるのか。それはお互いの心の潜む共通点だ。二人は会話をする事によって、この共通点が刺激されて「分かる分かる」の一言を生み出している。年齢こそ多少違えど、世代的に言えばほぼ一緒の同期みたいなものなので、話しのネタが尽きる事は無いのだ。


 特にトリプルディー・ラストラッシュは社長でありながらも、まるで一般人のような感覚を持っている。たとえばスーパーにしても安い食材でどれだけ美味しい料理が作れるかという葛藤を常に脳内で起こしている。この感覚は一般家庭の主婦と一緒だ。食材だけでバカにならないので、常にお得な商品を求めてスーパーを徘徊している。その感覚がこの男にはあるのだ。


 人はどうしてもお金を多く持つと「散在しなきゃ」という脳の働きが生じる。だが、トリプルディーはそうじゃない。根っからの主婦魂が心の中にこびりついているのだ。これは決して悪いことでなく、むしろ良いことだ。これがトリプルディーの数少ない称賛ポイントとも言える。





 ******************





「注文が来るまでの間だけで随分と話しこみましたね」


「そうだな。だが、まだネタは尽きていない」


 あれから10分程度しか経っていないのでまだ注文はきていない。だが、その間に二人は凄まじい会話量を交わしている。その濃厚過ぎる会話を終えてもなお、まだ会話のネタは尽きない。


「それはそれは何とも頼もしいですね」


「この会社は何で残業が無いのか、さっきから疑問を感じていた」


 そうだと言うのだ。


「ほうほう。続けてください」


 眼鏡が光る。


「その理由を直接、お前から聞きたいと思ってな」


 旺伝はそうだと言うのだった。


「理由は単純ですよ。夜中まで残業するのは効率が悪いからであります」


 ハッキリとした声を出していた。


「効率が悪いだと? だが俺は真夜中にパフォーマンスする事には長けているぞ。本当にそうだと言い切れるのか」


 甚だ疑問であり、これには首を傾げる事しか出来ない。何て言ったって、言わずも知れた夜型人間なのだから。


「それは貴方が夜中に楽しい事しかしていないからですよ。基本的に嫌な事の連続する仕事を夜中にしてみなさい。きっと精神が弱りますから」


 トリプルディーの言っている事は確かに正しい。本来、夜に寝て朝起きるという習慣を持っている人間に夜型という言葉すら存在しない。夜に起きる理由があるから起きているだけであって、その事を夜型という言葉を使って簡略化しただけの事だ。夜に調子が良いのは、今までの生活でリズムが狂い昼の感覚が夜に来てしまうという昼夜逆転の現象が起きているだけだ。なので、夜型という言葉自体は非常に曖昧なのだ。


 なので、会社の残業に慣れてすっかり夜の生活に染まった人を根本的に変えるためには会社自体が変わらなきゃ意味がない。だが、会社の制度をそう簡単に引っくり返すことは絶対に不可能なので、トリプルディーは最初から残業を失くして社員の健康を保ってあげているようだ。


「ううむ……言われてみれば確かにそうかもしれない」


「せめて社員には残業の呪縛から解放してあげたかった。あれは精神的に辛い作業ですからね。そういう作業をするのは私だけで十分ですよ」


「ちょい待て。お前は残業しているのか」


「ええ。圧倒的に人手が足りませんからね。社長である私が補っているのですよ。本部でならばこんな事は無いのですが、日本支部はどうやら人員確保が出来ていないようで……はい」


 だから、この男は青白い顔をしているのかと旺伝は瞬時に理解した。




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