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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 ラファエル=ランドクイストという存在は何なのか。それを一言で例えるのは難解である。誰よりも知識があり、誰よりも高圧的で、誰よりも厳しい。彼そのものが謎という漢字一文字に等しい。彼の事を詳しく知っている者は一人握りしかおらず、その誰もがラファエルという存在が何なのか、口を開こうともしない。


 そして、彼と出会った者は皆が彼から放出される不思議な魅力に取りつかれて、信仰の目でラファエルを見るのだ。彼の何が魅力的なのか、それはこれまでに残した数多くの学術的成果と世界中の魔法使いが憧れる『魔導国宝』という資格を持っているからだ。彼は全ての学術に精通しており、その全てにおいて抜きんでた知識を頭の中に溜めこんでいるらしい。その知識量は群を抜いている。だから、魔導国宝という魔法使いの頂点の称号を手に入れる事が出来たのだ。



 しかも、それだけではない。



 ラファエルは現代で最強の魔法使いと噂されていて、実際年齢が不明である。なにしろ彼にまつわる資料が全くないので、100年前から生きているという説もあれば、1000年前から生きている説……と見解がバラバラなのだ。真実はラファエル本人のみぞ知っている。


 そして、ここでは何故若者二人がラファエルを嫌われているのかという疑問に繋がっていく。最強の魔法使いに嫌悪を抱く理由、それはラファエル自身の性格に問題があった。自分が自他共に認める最強の魔法使いであるが故に、傲慢な態度で威張り散らし、ネチネチとした愚痴を日頃から呟いているのだ。


 特にトリプルディーと旺伝の二人はラファエルにこっぴどくやられていた。何を隠そう、二人は学年こそ違えど、同じ学校で学んでいた。その当時の校長先生がラファエル=ランドクイストなのだ。彼は優等生である二人に対しても、上から目線で物を言い、まだ習っていない範囲の問題を答えさせ、ニヤニヤと口角を上げていた。ようするに、黒板の前で困り果てる優等生を見て、優越感に浸っているのだ。この教師は。


 だが、これはほんの一例に過ぎず、トリプルディーと旺伝の二人はその後もラファエルに嫌がらせを散々されていた。しかもラファエルは他の生徒には優しく接していて、そこまで怒る素振りを見せることもなければ、ネチネチとした態度で接することはない。何故か、ラファエルに目をつけられた生徒だけ嫌味攻撃の対象となるのだ。


 高校時代にその対象だった二人は、大きく溜め息を吐いていた。あまりにも憂鬱な気分で上手く言葉が出ないのだ。このままでは研修中のレジ店員のように暗い気分になってしまう。


「まさかあの方と再び会う事になろうとは、予想外ですよ」


 さすがのラストラッシュも額に汗をかいている。いつも余裕な態度で、何があっても取り乱さないラストラッシュにしてはとても珍しい行動だと旺伝も思っていた。


「ああ……鬱になりそうだ」


 額を押さえて、頭を抱えている旺伝だ。


「私はネガティブに考えるのは嫌いですが、今回だけは特別ですね。高校時代の嫌な思い出が蘇りますよ」


「実は俺もだ。奴には散々な目にあったからな。特に精神的に」


「彼の言葉は毒針のように鋭くて、心臓に効きますよ」


「弟の学校にもあんな教師はいないだろうな」


「ええ。あそこまで強烈な教員は中々いませんよ。めったに笑いませんし、無愛想の域を遥かに超えています。良く言えば寡黙、悪く言えば感じの悪い人ですかね」


 ラストラッシュは懐から扇子を取り出して、扇ぎ始める。服を開けて鎖骨を見せながら、胸に直接風を送るのだ。


「確かにあれは無愛想だったな。何考えているか分からんし」


「口を開けば、大量の愚痴ですからね。本当に困った人です」


 二人は「うーんうーん」と唸っている。意地悪で無愛想な人は世の中に大勢いるが、えてしてそういう人物は心が優しいと相場が決まっている。しかし、このラファエルという男は例外で、心までもが汚れてしまっている。いくら洗おうが、汚れの落ちない頑固汚れになってしまっているのだ。



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