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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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 プラズマ砲はまさに近代的科学の結晶だ。第三次世界大戦の勝者であるインドから武器技術を輸入し、自衛隊の主力武器として配置されてから、みるみるうちにその知名度を上げていき、今ではその名を知らぬ者はいないとされている。そんなプラズマに着目点を置いたのが、クライノート社取締役のトリプルディー・ラストラッシュだ。彼はインドという国籍を生かしてプラズマ砲を一から学び、技術力を吸収した。


 クライノートは、表ではスーパーマーケット産業を主立っている会社だが、裏では兵器開発も携わっており、最先端のプラズマを武器に応用すべく、日々研究開発に取り組んでいた。そんな中、研究責任者のラストラッシュは個人防衛武器のハンドガンに目をつけた。スーツの下に隠せて、なおかつプラズマ砲を発射する武器となれば、携帯の便利性と破壊力が優れた最強の銃が誕生するとラストラッシュは考えを導き出した。


 そして、その銃は無事に完成されて旺伝のホルスターの中に眠っている。今、旺伝は危機的状況にあり、ハードシップを使わざる終えない状態になっていた。


 目の前では鋭い槍を両手に抱えているクロウが空中に立っていた。今にもその槍で突撃しそうな雰囲気を醸し出している。


「あばよ。カラス野郎」


 ハードシップを取り出した旺伝は勢いよく引き金を引いた。その瞬間だ。高熱の液状プラズマがフルオートで発射された。反動は尋常ではなく、旺伝は一気に吹き飛ばされて、屋上の金網に当たって制止した。だが、それでも弾倉が空になるまでプラズマは連射され、後ろの金網がミシミシと悲鳴を上げている。とんでもない反動で、金網すらもぶち破りそうな程だった。


 当然、そんな状態では前も見えない。紫色の閃光が銃口より出でて、マズルフラッシュに似た現象が旺伝を襲っている。あまりにも眩しいので目を瞑るしかない。



 やがて。



 プラズマの砲撃が止まった。これで、ハンドガンの領域を超えた殺傷性を持っている事が判明されただろう。だが、それだけを確認するためにハードシップを使った訳では無い。旺伝はなんとか目を開けて、奴の生死を見ようとした。視界がチカチカとした未だに紫色がかっているが、しばらくすると元の視界に戻っていった。


「!」


 無残に削り取られた屋上のアスファルト部分。その中央にクロウはいた。高熱のプラズマに両翼が燃え千切られ、地面に這いつくばっているのだ。どうやら、フルオートで発射された液状プラズマを両翼でガードしたようだ。そのおかげで、なんとか体の原状を取りとめていた。だが、あれだけの攻撃を受けたのだから無事の筈がなかった。クロウは「ハアハア」と肩で息をし、こちらを真っ直ぐに睨み付けていた。


「こんなものを……隠し持っていたとは」


 既に虫の息といったところか。とにかく、勝敗は決していた。


「俺の勝ちだな」


 見ると、自慢の槍もどこかに消し飛んでしまっていた。


「認めたくないが、そうらしいな」


「さあ、約束だ。何故、地下研究所に潜入していたか教えてもらおう」


「導かれたからだ」


「何?」


 予想もしていない答えだった。


「俺も完全に事態を把握していないが、これだけは言える。何か大いなる力が働いて、俺はあの場所に行った。それも無意識に近い状態でな」


「大いなる力とは、あの目か」


 旺伝とラストラッシュが潜入した時に感じた謎の視線だ。てっきり、クロウの仕業だと思っていたが真実は違うらしい。


「目?」


「お前は感じなかったのか」


「まあ、それはいいさ。俺は主人の元に帰らせてもらう」


 まただ。虫の息だったクロウは黒い泡に包まれたと思うと、地面に吸い込まれるようにして姿を消した。これは完全に息の根を止められなかった旺伝の失態だった。


「くそ……俺はナンセンスだ」


 歯がゆい気持ちになり、地面を殴った。すると、耳からプロペラの音が聞こえてきたと思うと、視界にヘリコプターが現れた。迎えにきてくれたらしい。




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