006
「結局、この日は連絡なしか」
旺伝は青色の髪の毛を掻き毟り、布団の上に寝そべった。そして、スマートフォンのメールを起動させて文字を書いていく。相手は幼馴染だった。
「18時30分に港に集合な」
メールを送信。すると、ものの10秒で返事が来ていた。内容は「忙しいのにありがとうね」という一文だけだったが、それで言いたい内容を理解した旺伝は布団から飛びあがった。そして、壁に掛けられた時計を確認する。
「18時か。飛ばせば間に合うな」
外に出ると、そのままボードに飛び乗った。いつも掛けている青色のサングラスを装着してだ。坂道を下り、遠くに見える港まで一直線に走って行く。あまりの速さに住宅や電信柱が風のように過ぎ去っていった。
■
港に到着すると既に人で溢れていた。今日は花火大会という事もあり、碩大区の住人という住人が屋台の焼きそばやフライドポテトを片手に和気藹々としている。旺伝はその中で、必死に幼馴染の姿を探すのだった。しかし、探せど探せど見つからない。さすがに可笑しいと感じた旺伝はその場に立ち止まって四方八方に体を動かして、幼馴染の姿が無いかと見回った。
ポン。
と、肩を叩かれた。振り返ると、真っ赤な顔に鋭い牙を兼ね備えた赤鬼が後ろにいた。
「うわああ!」
いきなりの赤鬼にビックリ仰天した旺伝は大声を上げたのだ。すると、赤鬼は「ククク」と笑いながら顔を外したのだ。そして、本当の顔を見せた赤鬼の正体は幼馴染だった。先程の鬼ではなく、満面の笑みを浮かべた可愛らしい彼女はピンク色の浴衣を着ていた。彼女の名前は赤月友奈。小学校と中学校は全て同じクラスにいたという仲良しブリだったが、高校は互いに違う高校に行ってしまい、こうして会うのは二年振りだった。
「どうどう、ビックリした?」
目の前の彼女は、小首を傾げてフリフリと体を揺らしていた。旺伝は久しぶりに見る浴衣姿の名馴染みを見て血が上り、思わず片手で鼻を隠す。
「脅かすなよ。心臓止まるかと思ったじゃねえか」
そう、本気で驚いてしまった。
「ねえねえ、旺伝君は甚平着てないの?」
「ああ。着てないな」
「祭りといったら浴衣と甚平だよ。もー!」
友奈は頬を紅潮させて頬を膨らませる。するとそこに「そうですよ」と言いながら後ろでに近づいてくる人影があった。
「ちょいちょい、何の冗談だよ」
後ろにいたのは、ヤンチャそうな金髪のモヒカンに真面目そうな眼鏡が特徴的な怪盗……トリプルディー・ラストラッシュその人だった。前回と前々回はスーツに狸のコスプレという格好だったのだが、今回は祭り事を考慮して、甚平を着ていた。
「何も。ただ私は御洒落をして祭りに参加しているだけです」
そう言ったラストラッシュの元に友奈が会話に参加してきた。友奈は甚平姿のラストラッシュに夢中になって目をキラキラとさせている。
「カッコいい。背が高くて素敵な眼鏡です!」
「おや。この子は旺伝君の彼女ですか?」
ラストラッシュは下を向いて友奈と視線を合わせた。
「そうです!」
と、友奈は言ったのだが、肝心の旺伝は首を大きく横に振って否定した。
「待て待て! 俺達はただの幼馴染で……」
「そう熱くなって否定しなくても良いでしょう。彼女がそう言っているのですから」
「それよりもだ。お前は何しに来た? ここには金目の物なんてねえぞ」
長身のラストラッシュと同じ背丈の旺伝は身長が191センチあった。恐らく、ラストラッシュも190センチ代だろう。
「だから言ったでしょう。祭りを見に来たと」
そうは言っているが、疑いの目を持たないといけない。
「それならラストさんも一緒に花火見ませんか!?」
気軽に声を掛ける友奈に、思わず待ったをかけた。
「駄目だ。こいつは人から物を盗む泥棒だぞ」
「えー、そんな悪い人に見えないけど。優しい口調だし」
「あほ。モノホンの悪人は物腰柔らかい態度で近づいてくるんだぜ」
「失礼ですね。私を悪人呼ばわりですか」
ラストラッシュは、クィッと眼鏡を持ち上げる。
「どう見ても悪人だろうが」
「まあいいでしょう。せっかくですので、私も同伴します」
「やったー! イケメン二人に囲まれた!」
そう言いながら、旺伝とラストラッシュの周りをクルクルと踊って回っていた。
「友奈に手を出すなよ」
「当たり前でしょう。人の彼女に手を出すのは……」
「ナンセンス」
そう、二人は同時に声を出したのだった。




