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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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 するとようやく、旺伝とラストラッシュを乗せたヘリが足若丸魔法学校の屋上に辿り着いた。時刻は0時00分丁度。社会では10分前に目的に到達するのがマナーとされているが、生憎これは社会とはかけ離れた血戦だ。その名の如く、血が飛び散る戦いになるだろう。


 そして旺伝は距離を保ったまま、ヘリから飛び降りて無事に着地した。屋上は学校の校舎と思って侮るなかれ、戦いに相応しい広さだ。


「そこで旋回しててくれ」


 ヘリのプロペラ音にかき消されない様に大声を出した。すると、ラストラッシュが窓から顔を出して。こう叫び返していた。


「無知言わないでください。ここでの旋回は相当な技術がいりますよ」


「それじゃあ、戦いが終わるまでどっか行っててくれ」


「了解です。必ず迎えに行きますからね」


 こうして、ラストラッシュの乗せたヘリは光学的に姿を消して、何処か見えない場所まで飛んで行った。それを確認した旺伝は、屋上の真ん中で仁王立ちしているクロウの元に歩み寄った。一歩は遅いが、着々と進んでいる。


「時間通りだな」


「そういう玖雅君もな。どうやら互いに時間を気にするタイプのようだ」


 時間というものは厄介な存在だ。特に日本では分単位のスケジュールを求められるのが多々見受けられる。強いて言うなら、電車の待ち時間だ。たかが5分遅れただけで申し訳なさそうなアナウンスが響き渡るのは日本だけだろう。あそこまで謝られると。こっちまで申し訳ない気持ちになるというのに。


「昼のお前は随分と悠長だったが、今のお前は正確な時計そのものだな」


 時間通りに現れた事から、時計と例えたのだ。


「時間は限られているからね。それに俺は約束事を守る主義だ」


「そうか。それじゃ、とっとと始めようぜ」


 話しをしていると、旺伝が屋上の中心部に辿り着いた。両者はその場で制止し、互いに目線を合わして睨み合っている。二人は一定の距離が離れているので、敵と味方という関係性がそこに現れている。人間にはテリトリーという物が存在するが故の本能的な行動だ。それにより、互いにそれ以上近づこうともしない。


「君との会話をもっと楽しみたかったが……仕方ない。俺の手で自由をプレゼントしてあげよう」


「生憎だが、お前の定義する自由は真っ平ごめんだぜ」


 瞬間、両者が同時に黒い石を前に突き出す。そうすると、石から黒い波動が現れて両者の体を飲み込む。やがてその波動が完璧に全身を包み込んだと思うと、波動が爆発四散し、場に現れたのは悍ましい姿の悪魔だった。


 旺伝は山羊頭の悪魔で、クロウは顔こそ生身の時と同じだったが、代わりに両翼が肩から生え出ていた。そして漆黒の黒翼をバサバサと音を立てて扇がせたと思うと、次の瞬間には空を飛んでいるではないか。


「ハハッ。君の姿は何とも恐ろしいな。さっきの美しい顔はどこにいってんだ?」


「二度と御前に見せることはないだろう」


「そうか」


「さて、血戦の前に約束してくれ」


 人差し指を立てた。すると、その動きだけでクロウの顔が強張っていた。何か、得体の知れない威圧感のようなものが旺伝から放出されているのだろうか。


「なんだね」


「何故、お前は地下研究所の恢飢を知っていたか。俺が勝てばその答えを教えてもらうぞ」


「いいだろう。万が一にも玖雅君が勝利すれば、教えてやる」


「今度こそ話しは終わりだ。行くぞ」


 旺伝は勢いよく跳躍して、飛んでいるクロウに向かって右腕を伸ばした。


「遅い」


 しかし、次の瞬間には拳を握られていた。悪魔に変身した旺伝のパンチは壁を

粉々にする威力を誇るが、そのパンチをいとも簡単に止められてしまった。旺伝はそのまま振り落されて、地面に叩きつけられてしまう。




 ドガアアアアアアンンンン!!




 地面に叩きつけられた衝撃は尋常ではない痛みだ。それでも旺伝は何とか立ち上がって、上空を見上げた。すると、クロウは余裕の表情を見せて口角を上げていた。


「なんつうスピードだ。それに力もある」


 想定外の強さに、旺伝は歯軋りをする。


「君は空を飛んだ事はあるか?」


「いいや、ないね」


 互いに異形の存在だったが、声は生身の時と同じだ。両者共に少し深みのある声になっているが、別人のようには変わっていない。


「だが、俺は何度もある」


 そう言うと、翼から針のような鋭利なものを放射し始めた。当たったら痛そうだと判断して防がずに、避けることにする。


「っち。空中戦は苦手なんだよ」


 いとも簡単に倒立回転をしてアクロバティックな動きを見せながら、針による攻撃を回避する旺伝だった。あまりにも一方的な攻撃で、旺伝は避けることしか出来ない。地上には隠れる場所が少ないので、どうしても形勢逆転のチャンスを掴めないのだ。


「逃げるだけか。反撃したらどうだね?」


 挑発。旺伝のような戦いの素人でも容易に理解できた。しかし旺伝には挑発に乗らざる終えない理由が存在した。そもそも戦いというのは相手にダメージを与える事で初めて意味がある。如何にも挑発的な行為にも応え、攻撃をしかけるという判断も必要だ、それにより、旺伝は敢えて敵に挑発に乗ることにした。


「言われなくても!」


 それは分かっているとうのだ。




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