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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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 東日本の悪魔が何故、魔法学校の地下研究所に居たのか、まったく不可解な謎があるもんだと、二人は顎に手を当てて唸り続けていた。あの研究資料を破ったのも奴の仕業なのか、あの正体不明の視線も奴による威嚇だったのか、考えてもキリが無い。直接、奴に問いたださないと真相は闇のままだ。


「この黒い羽根は奴の物だったのか」


 放射能漬けと言われると、触りたくなくなるものだ。旺伝はその黒い羽根を防護服に身をまとったルリに渡す。


「しかし、痕跡を残すとは……おかしいですね」


 プロの盗賊であるラストラッシュには常識を疑う事らしい。痕跡を残すという事象は。


「誰もがお前みたいに完璧野郎じゃないからな」


「私だって自分を完璧だと思ったことはありませんよ。完璧な人間はこの世に居ませんからね。皆、誰しもが弱点を持っています。それは東日本の悪魔にもいえる事でしょう」


 人間も悪魔もそう変わりはしない。ラストラッシュが言いたいのはそういう事だろう。きっと。


「所長さんはどう思ってるんだ?」


 改めてルリに意見を問うてみた。


「……そうだな。東日本の悪魔は個体数が少ないから研究材料すら持ち合わせていない全く未知の生物だ。私的には非常に興味はあるが、なんとも言えんな」


恢飢探査機ルホンモリヤも役立ちそうにないな」


「レーダーに映らなかったのか?」


「ああ。映ったのは地下室の恢飢だけだ」


「地下室の恢飢?」


 ルリは不思議そうに首を傾げて、目を真ん丸に開いている。


「実はとある魔法学校に地下研究所がありましてね、そこで恢飢が培養・研究されていたのです。しかも連中はそこで人工能力者を開発していたとか何とか」


「ほう……人工能力者か」


 此の世には魔法だけではなく能力というものが存在している。それは決して訓練や修行で培われる魔法とは違い、能力はいつ開花するか分からない。一生能力に目覚めない者もいれば、能力に目覚めて猛威を振る者もいる。ある意味、魔法よりも繊細で扱いが難しいとされている。そんな能力者を科学の力で生み出そうとしているというのだ。同じく科学者のルリにとっては実に興味深い事だろう。


「とある魔法学校って、普通に言えばいいだろう。この近くには一つしかないんだから」


「そちらのほうが謎っぽくていいでしょう」


 そう言うのだった。謎がいいのだと。


「能力者を開発するというのは近未来ファンタジーに良くある事だが、まさか本当にそれが進んでいたとは思わなかったよ」


 自分が生きているこの現実という空間で、そんな絵空事が実際に行われていることに感嘆を抱いているようだ。


「それも秘密裏に事が進んでいたようです。研究資料の類は何者かに破り捨てられていたので真相は謎のままですが」


「その真相を東日本の悪魔を知っているかもしれないと!」


 ルリは興奮状態になっていた。きっと科学者としての血が騒いでいる筈だ。


「そうだ。まずは東日本の悪魔を探さないと始まらん」


 旺伝は両手を組んで壁にもたれかかっている。眠いのだ。


「奴を捕まえる事で出来れば、東日本の悪魔について調べて、人工能力者の真相にも近づけるという事か。一石二鳥ではないか!」


 ピョンピョンと跳ねて嬉しそうだ。そこらへんはまだ10歳程度の少女という事もあって純粋に感情を表に出している。


「そういうことですね」


「だが、どうやって見つければいい? 恢飢探査機ルホンモリヤも役に立たなかったぞ」


「自然に待つしかない」


 ルリはそうキッパリと言っていた。


「やっぱり……そうなるのか」


「仕方ありませんね。向こうが動き出すの待ちましょう。あちら側も玖雅君を狙っているのですから、必ず対面できますよ」


 ラストラッシュも同じ意見のようだ。


「その時は手伝ってくれよ。今度はタダで」


 極力、山羊頭の悪魔に変身する事は避けたい。アレをしてしまうと、呪いが全身に廻るスピードが速まるだけではなく体の老体化も進んでしまう。


「そうですね。他ならぬ玖雅君の頼みであれば」


 良いと言うのだ。


「お前がいれば何とかなりそうだ」


「それはどうでしょうかねえ。戦ってみないと分かりませんよ」


「少なくとも俺一人で戦うよりかは勝率が高い」


「そうだといいですねえ」


 ラストラッシュはシミジミとしていた。





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