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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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 悪魔の生態系は未だに不明な点が多い。放射能に汚染された事によって特殊能力に目覚めた人間という見解は多くみられるが、それでも推測に過ぎない。彼等はどうやって生まれるのか、どうやって生命維持をしているのか、22世紀の発展した科学力を持ってしても東日本を攻略する事は出来ないので学者達は苦労しているだろう。


 なんせ、放射能を完全に除去をするのは今の科学力でも不可能だからだ。今までに東日本を攻略して日本の本来ある国土を取り戻そうと国会の議員達は試行錯誤をしていたが、全て水の泡と化した。一時期、自衛隊による突入作戦も敢行されたが、帰ってきた隊員はわずかに1名。直に。その者も精神崩壊してしまったので東日本で何があったのかも分からずじまい。


 東日本に入って公式的に戻ったのはこの隊員だけだ。非公式では数名いるみたいだが、それでも少なすぎる。あまりの危険地帯っぷりに今の政府もお手上げ状態になってしまい、今では東日本の存在は多くの謎を抱えたミステリースポットと化してしまった。


 旺伝は、そんな東日本から帰還した数少ない男だ。しかし、帰ってきた時には東日本で起きた物事を全て忘れてしまい、記憶喪失になっていた。かろうじて覚えているのは『何者かに勝負を仕掛けられて負けた』という事だ。旺伝の呪いは、どうやらその者に付けられたらしく、現状では呪いが全身に廻らないように精神安定剤を飲んでいる事で精一杯の状態にあるのだった。



 ●



「失礼します」


 旺伝とラストラッシュは頭を下げながら所長室に入った。すると、やはり所長のルリはまだ作業をしていて何やら怪し気な実験をしているではないか。


「おっ。また来たのか?」


「ちょい待て、何やってんだよ」


 覗き込むと、ビーカーの中で緑色の液体が沸騰していた。しかも、何かの指の様な物体がブクブクと浮かんでは熱に負けて消滅している。


「恢飢に効く物質を調べているところだ」


 可愛い顔してとんでもない実験をしている。思わず旺伝も目を逸らしたくなる程に。実際、旺伝は目を逸らしているが。


「その変な指は恢飢の指かよ」


「そうだよん」


 目線をビーカーに落としたままルリはそう言った。


「それはさておき、所長に調べて欲しい物を持ってきました」


「ほうほう。夜更かしを指摘しないと思ったら、そういう事か」


「ええ。今回は大目に見て差し上げますので、これを調べて頂けませんか?」


 ラストラッシュは例の黒い羽根をルリに手渡した。ルリはそれを手に取ると、興味深そうに観察している。


「何か分かったか?」


「ちょっと待っててくれ」


 ルリは冷凍室から、なにやら厳重そうな箱を取り出して来た。それは金庫のように固く鍵で閉ざされていて、開けるのに一苦労しそうだ。実際、ルリはいくつもの鍵を解くのに必死で顔が真剣そのものになっている。


「そんなに大事なものなのかよ」


 旺伝がツッコミを入れている間に鍵が開いた。旺伝はその箱の中を覗き込む。


「?」


 隣のラストラッシュは首を捻っていた。まもなく旺伝も同じ事をするのだが。


「なんだこれ」


 旺伝は首を傾げた。その箱に入っているのは何の変哲もないペットボトルだったのだ。しかも中身は空。こんな物にあれだけ鍵をかけて厳重に保管していた意味が分からなかった。


「実は……ペットボトルだ!」


「分かってるよ、それぐらい!」


「しかも放射能つきのな」


「!」


 なんと、このペットボトルは放射能で汚染されているというのだ。二人は驚いて、一歩だけ後退した。


「社長が持って来た羽根にも微量の放射能を検知した」


「つまり、こいつは?」


 旺伝には何となくだが心当たりがあった。認めたくはないが、認めざる終えない自分の失点も含めて。


「ああ。この羽根の持ち主は東日本の悪魔だろう」


「やっぱりそうか。奴はあの場所に居たんだ!」


 自分の危機察知能力の無さに幻滅する。考えれば無くはない話しなのだ。


「どうやら、面白いことになってきましたね……ここで事態が繋がりますか」


 すると、ラストラッシュは如何にも悪役な言葉を発していた。





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