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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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048


 地下に広がっていたのは謎の洞窟だった。まるでドリルで掘られたかのようにぽっかりとした空間が出来上がっていて、そこらに人の手が加えられた形跡も確認できた。


「なんだ、ここは」


 電気が点いている。どうやらここは最近まで使われていたらしい。それで懐中電灯が不要だと思った旺伝は自分のポケットにちゃっかりしまった。ラストラッシュも目の前の謎に気を取られていて気付いている素振りは見せない。


「魔法学校の地下に謎の空間ですか。これはミステリーを感じますね」


 眼鏡をクィと持ち上げながら、興味津々な様子で辺りを見回している。今にも崩れ落ちそうな天井とは裏腹に、明らかに人工物のアスファルトが地面に敷き詰められている。


「ここを封鎖していた理由が何となく分かって来たぜ」


 暫く歩いていると、奥に赤いランプが点滅している場所を発見した。そこに行ってみると、なんと巨大な二枚扉が眼前に現れた。ガラスは透明だったので中を除くと、そこにはビーカーや三角フラスコなどの実験道具がそこら狭しと並んでいた。どうやらここは地下研究所であると旺伝は確信したのだ。


「成程、ここで恢飢の生体実験をしていたのですね」


 ハプスブルグ研究所で見た実験施設とそっくりなのだ。それは資金提供元のラストラッシュが良く知っているだろう。


「恢飢の反応もここから発信されているぜ」


「決まりですね。早速開けましょう」


 ラストラッシュはそう言うと、鍵穴にマスターキーを差し込んでガチャリと回した。まもなく扉の鍵は開いたので二人は施設内部に侵入する。今度は慎重にだ。どこから恢飢が襲ってくるか分かったものじゃない。


「反応は近いぞ」


 後ろを向いて歩いていると、尻に何かがドンと当たった。旺伝は緊張した面持ちで恐る恐る振り返る。彼の目に飛び込んできたのは巨大なビーカーに収められている半漁人の姿だった。ビーカーは四つの机に囲まれていて、机には研究資料らしき紙が散乱しているではないか。


「どうやら、これがそうらしいですね」


 ビーカーの半漁人は目を瞑って、プカプカと塩水の中に浮いている。まるでこれから皿に盛られるために漬けられている魚のようだ。


「ああ。赤い点滅が止まらないぜ」


 恢飢探査機のアプリから危険信号がビンビンと発せられていた。旺伝はもうこいつは必要ないと確信して、アプリを終了させてスマホをポケットの中にしまいこんだ。要領としてはさっきの懐中電灯と同じだ。


「四方の机には紙が無造作にばら撒かれています。恐らく、私共より先に侵入者が訪れて研究資料の類を持ち去ったのでしょう」


 ラストラッシュの言う通りだ。研究資料の大事な箇所だけが乱暴に引きちぎられている。ほとんどの資料がタイトルと裏表紙だけ残されているのだ。


「人工能力者開発計画か」


 タイトルにはそう書かれていた。


「わざわざタイトルを残すとは……何かのメッセージ性を感じますね」


「それよりも、能力者開発計画が魔法学校の地下で行われていたことが驚きだな。しかもここに書かれている日付は昭和だぞ。能力者や魔法でさえおとぎ話とされていた時代だ」


 魔法がこの世に存在していると知らしめられたのは第三次世界大戦が終わってからだ。暴走するインドを制止させるために神が降臨して魔法を使ったと歴史で語られている。22世紀では小学校の社会科で習うことだ。


「これは差し詰め、オーパーツという事でしょうか?」


 人工能力者とはかけ離れた姿の悍ましい恢飢を見ながら、ラストラッシュはそう言っていた。


「とんでもない謎だな。俺達には手が付けられん」


 半ば諦め状態で、かぶりを振る旺伝だ。


「しかし、この謎を解明したいと思いませんか?」


「そりゃできたらしたいけどよ」


「この研究所の謎を解明するのはここに訪れた侵入者の手がかりを探すことです」


 ラストラッシュはそう言って、研究所を散策し始めるのだった。




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