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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
43/221

043


 玖雅旺伝とトリプルディー・ラストラッシュの二人は、お昼ご飯を食べ終わると、一路、足若丸魔法高等学校の正門に来ていた。やはりここは魔法学校という事もあって強者たちが集まっている。それに釣られて東日本の悪魔もやってくるのではないかと予測してここに来たのだ。その予測が当たっているのかどうかは分からないが、早速反応があった。


 恢飢探査機ルホンモリヤでそれを確認すると、どうやらこの学校の中で反応しているらしい。この学校自体が東京都の文化遺産に登録されているので、立ち入り自体は自由だ。しかし、それでも生徒達が勉強をしている場所なので、当然入れないところもある。その入れない場所から反応しているのだ。これは困ったと、二人は同時に顔を向けた。そして、旺伝は溜め息を吐きながらこう言うのだった。


「どうするんだよ。めちゃくちゃ怪しいぞ」


 魔法学校の中から恢飢と思しき生命反応がビクンビクンしているのだ。さしもの旺伝もこれは見逃せない。


「行くしかないでしょう」


 ラストラッシュも同じ意見のようだ。しかし、


「だが、地図によれば点滅している場所は校舎のようだぜ」


 恢飢探査機ルホンモリヤには簡単な地図と一緒に恢飢らしき生命反応が点滅している。あまりにもお粗末な地図で、そこが本当に校舎かどうかは分からなかった。そこで二人はスマートフォンを開いてインターネットに?げた。そしてそこから足若丸魔法高等学校のホームページに辿り着くと、地図にアクセスした。


「さすが世界一の魔法学校だ。ホームページに載ってる地図も分かりやすいな」


 旺伝は自身が両手に抱えている恢飢探査機ルホンモリヤの点滅場所とその地図に書かれている建物の構造を確認する。すると、やはり点滅している場所は校舎ではないか。それも『立ち入り禁止第一級』と書かれているのではないか。これには旺伝もかぶりを振って、項垂れるばかりだ。そんな旺伝の態度が気になったのか、ラストラッシュもスマートフォンを覗き込んだ。ラストラッシュは何故旺伝がこのような態度を取っているのか完全に理解したようで、フムフムと小声を呟きながら頷いている。


「どうやら、駄目なようですね」


「そうだな。一般人の俺達やまして生徒でも立ち入りを禁ずると地図に書いてある。ご丁寧にコメマークをつけてな」


 生徒ですら入ってはいけない校舎だ。旺伝はそれに気が付いて、そもそもなんで立ち入り禁止なのか疑問に思い始める。


「何故、ここは立ち入り禁止なのでしょうか」


 どうやら、ラストラッシュも同じ考えのようだ。それだけで自分が間違った疑問を浮かべていない証拠になり、気が楽になる。


「お前もそう感じたのか。実は俺も疑問に感じている」


 前々からこの学校にはキナ臭い噂が蔓延していた。だからこそ、弟をこの学校に入学させたくないのだが。


「んん……その中に大事な何かがあるのかもしれませんね」


 ラストラッシュは額に人差し指を押さえながら独特の口調で推理を始めていた。


「ちょい待て。まさか、それを恢飢が守っているのか?」


「その可能性は十分に考えられますね。はい」


「嫌な予感がするな」


 旺伝の脳内信号が危険を察知していた。しかし、時すでに遅し。見ると、ラストラッシュの口角が限界まで上がりきっている。そのせいで、とてつもない笑顔をさらけだしているではないか。


「怪盗魂が揺さぶられますね」


「何をあほな事言ってんだ!」


 いつものように突っ込みを入れる。だが、今回の突っ込みはいつにもまして真剣だった。なんせ、この男は法律を破る気でいるのだから。


「私は魔法界で認められた公式の怪盗ですので大丈夫ですよ」


 そう言いながら、懐から盗賊手帳を取り出してこちらに見せていた。確かに魔法界の国王公認だと書かれている。


「たとえお前が大丈夫でも、俺は大丈夫じゃねえだろ!」


 自分で言ている言葉だが、的を得ていた。旺伝は盗賊でもなんでもないタダの祓魔師なので、当然の如く不法侵入は罪になる。


「いいえ、バレなければ問題ありません」


 如何にも盗賊らしい考え方だ。バレなければ一切問題がないのだと。


「ノープログレム……いいや、イエスプログレムだ! 誰が好き好んで法律を破るんだよ。冗談じゃねえ、俺は会社に戻るぞ」


 問題大有りなのだと、旺伝は訴えながら背中を向けた。すると、ラストラッシュが背中に言葉をぶつけてくる。


「ここで挫けるのですか、まったくナンセンスですね」


 ラストラッシュの言葉がまるで鋭利なナイフのように心を貫く。


「ナンセンスだと?」


 旺伝の耳がピクリと反応し、それと同時に後ろに振り返った。ラストラッシュは未だに先程の笑みを崩していない。


「貴方が東日本の悪魔を見つける情熱はその程度ですか。ここに反応している生物がもしかすると自分が捜索している標的じゃないかと思わないのですか?」


「……そうか。そうだなお前の言う通りだ。今までの俺はナンセンス病にかかっていたようだ。よし、この建物に侵入して調べ尽くすぞ!」


 旺伝はナンセンスと言われるのを嫌っていたのだった。



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