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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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 二人は会話を続けていた。注文が来るまでの間は暇なので、常人が相手ならば気兼ねなくスマホを弄れるところだが、両者共に良い意味でイカレている。今は味方同士の筈なのに、隙を与えてはいけないという場の雰囲気を感じ取れた。と言っても、これは無意識の範囲内だ。二人とも本能では気が付いていたが、理性では気が付いていなかった。だからこそ、心の弾む楽しい会話が出来ているのだが。


「それにしても、こいつで本当に悪魔が釣れるのか?」


 隣の席に置いてある機械をコンコンと叩いた。


「どうでしょうか。不安もいいとこですね」


 不安だと言うのだ。さしものラストラッシュも。


「ちょい待て、お前さんはこいつの研究に携わった男だろうが。それにこのアイディアを提案したのもトリプルディー・ラストラッシュという男だ」


 敢えて、心に鋭く突き刺さる言葉を吐いた。


「申し訳ありません。しかし、まだ諦めるのは早いですよ。昼食を食べ終わったら再チャレンジといきましょう」


 ラストラッシュの奥の瞳が炎で燃えているのが分かった。眼鏡をかけているので一瞬冷静そうに思えるのだが、同時に今時モヒカン刈りをしているような男だ。冷静さと熱さの二つを心内に秘めている事を、この瞬間に悟った。


「やれやれ。休み時間は少ないときたか」


 あまりの眠たさに欠伸が出そうになったが、手で覆い隠した。自分よりも目の前の男の方が寝ていないのだと分かったので、そんな男の前で眠気を見せる訳にはいかなかった。旺伝なりのポリシーだ。


「暇な時間が一番脳に悪影響を及ぼします。いいアイディアを浮かばせるためには常に忙しい現場と向き合わなければなりませんよ。無職やニートが大成しないのはそれが原因です。彼らは時間が有り余っているだけに、優れたアイディアを思いつかない体に出来上がっています」


 ラストラッシュはそうだと言うのだった。暇な時間がアイディアを殺していくのだと。


「アイディアか。社長には必須だな」


 そういう代表的な仕事をしている人物にはアイディアを生み出す力が必要だと思った。しかし、


「いいえ人類共通に必要な事ですよ。何も社長だけでは有りません。優れた人生を送るためには、優れたアイディアが必要なのですからね。皆、それをアイディアと呼ばないだけで、それに似た考えを生み出しています」


 ラストラッシュは珍しく熱く語っていた。やはり社長という立場なだけあって、哲学的な話しになると心を燃やすようだ。


「成程な。いいアイディアに恵まれるためには忙しい環境に置かれることが大事って訳か。理解した」


 会話していると喉が渇いてしまうので、コップの水を頂いた。


「すみませんね。こういう立場になると、つい喋っちゃいますよ」


 自分の哲学をだ。


「心技体で一番大切なのは心だ。色々と勉強になったぞ」


 そう言いながら、コップをテーブルの上に置いた。


「お褒めの言葉、どうもありがとうございます」


「それで、次は何処を重点的に探せばいい?」


 いきなり本題に入った。もう頭の中を次の仕事に切り替えているのだ。ある意味では、先程の熱論でスイッチが入ったと言っても過言ではないだろう。やはり人間は、熱い言葉を交わし合う事で行動力を上げる生き物のようだ。


「そうですね。次は足若丸魔法高等学校付近を捜索してみましょうか」


「昨日行った場所だな」


「はい、山父様に助言を頂きましたね。しかし、今度は学園内には入りませんよ」


「学園内に反応があれば別だろ?」


 押し込む気満々だった。


「……そうですね」


 だと言うのだった。


「あの学校は怪しい匂いがプンプン丸だ。弟にもあの学校には入学するなと言い聞かせている」


「何故ですか?」


 不思議そうな目でこちらを見ていた。


「決まっているだろう。あそこには色々な誘惑があって勉学が捗らん」


 足若丸魔法学校は敷地内に巨大なアミューズメントパークを設けている。理事長がアメリカのニューヨークをモチーフに設計していて、そこではありとあらゆる娯楽施設が運営されていて、授業の妨げになってしまうというのだ。


「我慢すればいいでしょう」


 しかし、ラストラッシュの意見はこうだった。たとえ魅力的な施設があったとしても、我慢をすればいいのだと。


「違うんだ。あいつには理性が無いから欲求を抑えきれない」


 旺伝はそうだと言うのだった。



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