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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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041


 旺伝とラストラッシュは注文の品が来るまでに談笑を交わしていた。そこまで親しくない人物と隣り合わせになった時、人はコミュニケーションを取らないといけないという一種の脅迫観念に囚われてしまう。少なくとも、旺伝はそう感じていた。ここで会話をしないといけないという空気を察してだ。


「まったく、貴方には絶望しました」


 ラストラッシュは優雅にコップの水を嗜みながら、そう言っていた。旺伝が声を出そうとした瞬間に話しかけられたので、思わず記憶が沸騰して、何の事だかさっぱり分からなくなった。


「ん、何の話しだ?」


 すっかり抜け落ちてしまい、ラストラッシュに尋ねた。


「さっきのナンパですよ。玖雅君には友奈さんというフィアンセがいるのに」


 ラストラッシュはそう言っていた。


「誰がフィアンセだ。あいつとはタダの幼馴染だって言ってるだろ」


 少なくとも旺伝はそう思っている。


「あんな可愛い子と付き合わないなんて、いっそ私が……」


「おいやめろよ。御前みたいな冷酷マシーンが彼氏とか想像したくもない」


「あら、私は結構優しいですよ」


「どこがだよ。正反対だろうが」


 旺伝はそうだというのだった。どちらかと言うと残忍なのだと。


「私は会社の業務を第一秘書に任せて、玖雅君のお仕事を手伝っているといのですから、かなり優しい部類に入るでしょう」


「ん? 第一秘書?」


 ニュアンスに引っかかりを覚えた。秘書は自分だけじゃないのかと一瞬感じたからだ。しかし、


「ええ。本部にもう一人秘書がいます」


 旺伝の読みは当たっていた。どうやら自分は二番目の秘書らしいのだ。


「どういう奴だよ」


「綺麗な女性秘書ですよ。それに胸も大きい」


 旺伝にとって大きいオッパイの定義はEカップ以上だ。それ以下のおっぱいは貧乳だと定めている。それは17歳にして百戦錬磨の旺伝だからこその感性だった。


「ああ、良く映画に出てるような奴か……羨ましいな」


 最後の羨ましいは独り言のように小さく呟いた。


「私と同じく、眼鏡を掛けています」


「やっぱりな想像通りだ」


 なんとなくどんな人物なのか想像がついた。きっと黒髪で赤い眼鏡を掛けたスタイル抜群の女秘書なのだろうと。旺伝は女好きのため、思わず一筋のヨダレが口から流れてしまい、ペーパーで拭いた。


「容姿もそうですが能力的にも優秀ですよ、彼女は」


「へえ、そうなのか」


「なんせ引き抜いてきましたからね」


「そこまでして採用したのか」


「私は欲しい物あればどんな手を使っても手に入れますから」


「はは、泥棒の鏡だね」


 忘れがちになりそうだが、ラストラッシュは合法的な盗賊だ。全世界に20社以上の支部を持つ大企業の社長という身分でありながら、裏では盗人として活動もしている。恐らくだが、睡眠時間なんてほとんど確保できていないのだろうなと旺伝は感じ取った。


「お褒めの言葉、まことにありがとうございます」


「しかし、泥棒なんてやってたら寝る時間ないだろう?」


 疑問を素直にぶつけた。すると、ラストラッシュは首を横に振っていた。


「いいえ、寝る時間はありますよ」


「マジかよ」


「平均で、1時間30分も寝ています」


 その一言で、旺伝は度胆を抜かされた。もし自分が1時間30分睡眠ならば、半日で倒れて医療魔術師がとんでくるだろうと想像したからだ。


「ちょい待て。そいつは仮眠だろう」


「何を言いますか。人には適正睡眠時間というものがあるのです」


「つまり、てめえはショートスリーパーなのか」


「ええ。ありがたいことに」


「そいつはナイスセンスだな。俺なんてロングスリーパーだぜ……」


 長年の夜更かし生活が体をロングスリーパーにしてしまったのだ。そのせいで8時間以上は睡眠をとらないと頭がフラフラしてしまうという状態にまで陥っていた。しかし、ここ最近の出来事で満足に睡眠をとることができなくなっているのだった。













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