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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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 時計の針が昼の12時を指した。これ以上散策しても成果を得られないだろうと判断した二人は近くのファミレスに寄っていた。お昼時という事もあり、店内はそれ相応に混雑している。


「夏休みですから、学生さんも多いですね」


 席に座って、辺りを見回しながらラストラッシュが言っていた。確かに学生らしき私服姿の少年少女がワイワイと雑談を交えながら飯を食っているではないか。


「ちょい待て。今時の学生はファミレスで飯を食うのか!」


 目を大きく開いて、思わずラストラッシュの顔をガン見してしまう。


「はい」


 短く答えていた。


「定食を頼めば1000円はくだらないぞ。学生の1000円は高いと思うが」


「親がお金持ちなら、そうとは限らないでしょう」


 ラストラッシュはズバリと答えた。子供時代では、金の感覚は親の稼ぎによって決定されるのだと。


「つまりこいつらは金持ちの息子?」


 学生に睨みをきかせながら、とたんに渋い顔になっていた。しかしそれでも顔が整っているのが旺伝だ。


「そうかもしれませんね」


「そうか。このガキ共は親の金を毟り取って飯を食ってるのか」


 言い方は悪いが、つまりそういうことなのだと旺伝は感じた。


「そう言えば、玖雅さんは親から金を貰うのが嫌いなタイプでしたね」


「当たり前だ。親に頼っているうちは人間的に成長が出来ない」


 若干17歳の身でありながら、そのことを分かっているのだ。親の手を一切借りずに一人暮らしをすることで、初めて人間的成長が促進されるのだと。


「成程、そこらの学生と違う考え方を持っているのですね。玖雅君みたいな独自の考え方を持てる人は将来的に企業家を目指してみてはいかがでしょうか?」


「あんたみたいにか?」


「ええ。これで、互いに普通の人間ではないことが判明しましたね」


「こちとら、最近まで死と隣合わせの狩猟をして生活費を稼いでいたからな。考え方も普通の人間とは違うさ。そうだろう」


「私も人殺しや盗みに抵抗感はありません。常人とは違いますね」


「逆に普通とは一体なんだ?」


 旺伝はふと疑問に思った。そもそも普通の定義とは何なのか。


「深い質問ですね。普通を追及した人なんて誰もいないでしょう」


「普通の定義は誰にも分からないってことか?」


「無意識に組み込まれた人生道とでも言いましょうか。その人生道をまともに歩いているのが普通で、踏み外しているのがアウトローでしょうか」


「俺達は完全にアウトローだな」


「それに異論はありません」


 すると、ようやく店員さんが近づいてきて「ご注文はお決まりになられましたか?」という定番の言葉で語りかけてきた。二人は既に何を食べるのか決まっているので、素直に頷く。


「出来れば、俺はお嬢ちゃんを召し上がりたいのだが」


 しかしここで旺伝の悪い癖が出てしまった。美人や可愛い子をみかけると、ついナンパを仕掛けてしまう非常に悪い癖が。しかも旺伝がベストに好みな褐色肌の美人ときた。もう本能が制御不能になっているだろう。


「わ、わたしをですか?」


 驚いた様子で、口を開いていた。


「今晩俺と楽しいことをしないか? 君がまだ体験したことのない、歓喜と興奮の世界に招待してあげよう」


 旺伝の大きな目が彼女の瞳の奥を覗きこんでいた。相手が目線を反らすまで目を合わせ続けるというナンパの基本を熟知しているようだ。


「ハイ……よろこんで」


 店員は素直に受け入れていた。やはりイケメンというのは何かと特だ。このように真昼間からナンパをしても断られない。


「あの、注文よろしいですか?」


 頬を赤らめてポワンポワンとしている女子店員にラストラッシュが話しかけていた。その一言が効いたのか、まるで魔法が解けたかのように顔色を元に戻してメニューを聞き取り始める店員だった。


「スタミナうどんの冷を一つお願いいたします」


「俺はマグロ丼にしよう」


「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」


 少女は旺伝に可愛らしくウインクをしながら、パタパタと厨房に駆けていった。完全に一目ぼれしてしまっている。無理も無いだろう、絶世のイケメンにナンパされればハイという選択権しか頭に登ってこないのだから。


「お楽しみは結構ですが、会社の寝室は使わないでくださいね」


「分かってるよ。車が一台あれば十分だ」


 旺伝はそうだと言うのだった。




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