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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯1 山羊頭の男
4/221

004


 ピピピピ。朝を知らせる目覚し時計と共に旺伝は布団から飛び起きた。そして、現在の時刻を確認する。時刻は朝の6時40分。正確な時間だった。


「くそ。朝は辛いな」


 高校を中退してからというもの、不規則な生活を送っている旺伝が、何故朝に目を覚ましたのか。それは仕事が入ったからだ。いかに新米のエクソシストと言えど、旺伝のコネがあれば自然と仕事は入ってくる。


「おっ。眩しい」


 カーテンを開けると容赦ない朝の光が襲ってきた。普段、不健康と不衛生という名の服を着ている旺伝にとって、朝日の力は驚異的な物だったのだ。


「こんな朝早くから仕事なんてついてねえな」


 エクソシストとは恢飢という化け物を狩るハンターの総称だ。二十二世紀に入ってから、恢飢は日本や世界中にその姿を見せ、今では社会を脅かす程の危険な存在になりつつある。そんな恢飢は二十四時間何処に現れるのかエクソシストは皆目見当つかないため、不規則な生活を余儀なくされるのだった。


「久しぶりに朝飯でも食うか」


 そう、玖雅旺伝は一日に二食しか食べない主義なのだが、この日仕事でたまたま朝早起きしたため、朝ご飯を食べてみようかという気持ちになったのだ。さっそく、彼はトースターにパンを置いて焼き始めた。朝のフレッシュな気分と焼きたてのパン、そしてブラックコーヒー。片手に新聞を見れば最高なのだが、生憎旺伝は新聞を読まない取らない派だったので、代わりにウェアラブル端末でメールのチェックをしていた。


「っち。今日は早めに帰らねえとな」


 メールボックスを確認すると、幼馴染からメールが送信されていた。その内容とは、今日の夜に夏祭りを見に行かないかという誘いだった。友人からの誘いを断るのはナンセンスだと思っている旺伝は無論「OK」という二文字を書いて送信。


「美味いな。いつも深夜に食ってる食パンの味とは全然違う」


 その通りだ。食パンは朝起きてから食べるのが最高に美味しいのであって、それ以外の時間帯に食べるのは旨味が落ちてしまう。サックという触感と甘いマーガリンの味を最高に引き出してくれるのは早朝だけ。


「しかし瞼が重いな」


 それもその筈。前夜はラストラッシュが侵入してからというもの、頻繁に下痢に襲われて、死にかけていたのだ。まさに地獄の時間で、眠りについたのは胃の中に入った食べ物を全て吐き出してからだった。だからこそ、朝一番に食べた食パンを最高に美味しいと感じたのかもしれない。


「あの野郎……次会った時はギャフンと言わせてやるぜ」


 昨日の屈辱的な出来事を思い出して沸々と燃えている旺伝。彼は食パンを食べ終わると、テーブルの上に無造作に置かれていた丸い瓶を手に取って、パラパラと中身を取り出した。


「こんな物に頼る日が来るとはな」


 旺伝が手に取ったのは精神安定剤だった。旺伝はそれをお茶で流し込んだ後、大きく伸びをした。


「ふああああ。そろそろ行くか」


 多少嫌気をさしながらも寝ぼけ眼を擦りながら部屋から出た。そして、待ち合わせ場所の喫茶店へと足を運んだのだった。距離にして僅か1キロメートル。依頼人が気をきかせて近場の場所に指定してくれたようで若干ながらも安堵する。


「いっらしゃいませ。おひとり様ですか?」


 朝早くから最高の笑顔を見せる女性店員にビクンと反応する旺伝は胸ポケットからパッと白い紙を取り出し、その紙を店員に渡したのだ。店員はビックリした様子で紙を受け取って、紙に書いてある内容を読んだ。


「もしかしてこれ……お客様の連絡先ですか」


「お客様じゃねえ。これからは旺伝と呼んでくれ」


 所謂、壁ドンをしながら長身を生かして女子店員に覆いかぶさる旺伝だった。女性店員は困った様子でパチパチと目を開いたり閉じたりしている。


「あの……」


「おい、そこの青年。彼女が困ってるじゃないか」


 そこに和服姿の初老のオジサンが割って入ってきた。女性店員はその男にペコリと頭を下げて、店の奥に避難した。勿論、旺伝は機嫌を悪くして、その男に近づく。


「人の恋沙汰にちゃちゃいれるなよ」


「済まんな。俺は此処で人を待っているのだが」


「なんだ。もしかしてアンタが依頼人か?」


「そう言うお前が旺伝か。父親と似ても似つかんな」


「その言葉、聞きなれたぜ」


「まあいい。とにかく座って話をしよう」


 初老の男が座っていた二人席に旺伝は座った。これで初老の男と旺伝が向かい合っている状態に。



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