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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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 朝の4時に起きるという事の実が旺伝の体を精神的に弄んでいた。旺伝は22時に会社内のベッドルームに案内され、早速風呂に入って寝ようとしたのだが寝れない。目がパッチリと開いてしまい、睡魔に誘われることもない。とにかく視界は暗黒世界のままで、意識がある。この眠れないという事実に旺伝は危機感を覚えて、眠りにつこと必死に羊を数える。だが、そのようなマユツバで睡魔を騙しきれることもなく、10300匹目を数えた所でようやく理解し、ベッドから跳ね起きた。そして、今の時間帯を傍に置いてある目覚まし時計で確認する。と、時刻は0時52分だった。こうなると、おしまいである。後、3時間ちょっとしか眠れない。


「くそ……本当だったら家で読書している時間帯だぜ」


 絶望と遅寝遅起きの輪廻の波動を感じながらも、どうあがいても眠れないということは完全に理解したので、とりあえず体を動かして行動に出る事にした。と言っても、運動をするような真似はしない。これまでに旺伝は度重なる不眠感と闘ってきた。何も今日だけでは無い。だからこそ運動の恐怖を知ってしまっている。間違っても腕立て伏せや素振りなんかをしてしまうと、逆に細胞が活性化して、眠れなくなってしまう。それこそ避けねばならない。


「なんとかしないと」


 そう思った旺伝はベッドから立ち上がり、会社内をウロウロとうろつき始めた。重要な場所にはカードキーがないと入れないため、誰でも利用可能な休憩所でココアを飲んだり、見学自由な展示品コーナーを見て回っている。その中でも展示品コーナーではこの会社の歴史資料やこれまでに開発した商品が展示されていた。


「トリプルディー・ラストラッシュ、18歳の時に町工場を設立。それが後のクライノート社に発展する……か」


 今や、年商5兆円をコンスタントに叩きだす大企業のクライノート社は町工場から始まったというのだ。しかも、この町工場は貧層な町に建てられ、そこに住んでいる無職の人達に仕事を与えるために造られたのだという。その無職達も今では会社の重役となっているのだから、人生とは分からないものだ。


「僅か2年足らずで年商5兆円か。どんな方法を使ったんだ」


 宇宙船開発、武器開発、、ロボット開発、食料品開発、化粧品開発などのマルチな開発に関わっている。もちろんこれらだけではないが、とにかくクライノート社が開発した商品は価格が安く設定されて売られている。御蔭で、クライノート印の商品はスーパーなどでバカ売れになっている。庶民に優しいお安い商品を提供しつつ、宇宙船や武器などの国家規模の商品も開発して、まるでコンビニ企業だ。それが年商5兆円の秘密なのだろうか。嫌、それだけではない筈だ。もっと革新的な方法を使って、ここまで成り上がったに違いない。


「こうして、会社としての功績を見ていると、奴の成り上がり人生が気になってきたな。金も腐るほどあるだろうし……羨ましい限りだぜ」


 生活費も底を尽き、冷蔵庫に入っていた賞味期限切れの卵を使って卵焼きを食べて何とか暮らしていた旺伝にとって、お金は喉から手がでるぐらい入手したいものであった。今はクライノート社の社食を無料で食べているので、なんとか生きながらえているるが、もし借金を返済すれば、今までのように本来の売れない祓魔師生活に逆戻りすることとなる、ここで正社員として働いて縛られるよりかはマシだが、それでも金に困ることは火を見るより明らかだった。



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