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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
221/221

221  見過ごされる犯罪


 人々が何に動かされるか、スラム街を歩いていると脳内に直接思い知らされる。少なくとも旺伝は嫌というほど現実に目を背けたくなる。路上では平然とスリが行われ、地元警察も見て見ぬフリだ。黒人操作感はハンバーガーを食べながらスリと被害者の攻防を見物し、何故か腹を抱えながら笑っている。正気の沙汰とは思えない。かつての法律で縛られていた日本は、核戦争によってがんじがらめの糸を解かれ、ある程度の犯罪は見逃されるようになった。しかしながら目の前で犯行が行われていて、警察が何も動こうとしないのは考えられない。魔法と科学による発展を遂げた第六世代東京都の中でも、碩大区は特別な存在だ。日本の象徴的シンボルであり、絶対無二の足若丸魔法学校がドンと構え、外国人観光客の類から金を吸い取っている。日本の中で唯一、金が飛び回っている場所だ。その他の地域は放射能の影響で壊滅的打撃を与えられ、戦争から80年近くが経った今でも復興作業は終わっていない。現在の日本政府が悪いという訳ではない。魔法という新たなコンテンツに目を輝かせて飛びついた民衆が全ての元凶だ。画期的な魔法産業の虜となるあまり、放射能問題から盲目になってしまった。放射能地区をシールド魔法で遮断せすれば危険性が無いと判断し、実行したのも民衆の決定だ。以前ならばプロ市民がデモ活動を行ってでも反対していたが、彼等でさえ魔法の大いなる魅力に取り込まれてしまった。あれから時を経て東日本を含む全放射能地区の復興活動に取り組むのも遅すぎる。政府が本腰を入れて動こうとしても、現状把握には程遠い。一般市民達の深層心理から戦争への恐怖は排除され、危機感を抱いていないのが現状だ。スラム街の生々しい光景でさえ彼等の目には何も映らないだろう。21世紀に普及したスマートフォンが及ぼす心的被害は衰えることなく進み続け、ウェアラブル端末を腕に巻いた者達がインターネット中毒となり、現在も死亡事故が後を絶たない。昔も今も根本的な問題が何ひとつ解決していない現状だ。この世からあらゆる問題は無くならない。今、旺伝が目にしている景色もまた同じだ。旺伝も地元警察と同じように見て見ぬフリをし、スリの現場から立ち去った。


「俺には関係の無いことだ」


 自分に言い聞かせるように呟き、スラムの中心に向かった。あそこは東日本の入口付近に匹敵するほどの放射線を抱えているらしいが、呪われた身の旺伝には無害そのものである。



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