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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
220/221

220  希望の闇


 最凶国家インドによる核ミサイル攻撃によって東日本は壊滅的ダメージを受けた。あれから80年近く経過して放射線の恐怖に怯えながらも生き続けている人々が東日本にはいる。玖雅旺伝は東日本の民を救おうとして単独潜入を試み、結果的には失敗に終わった。何者かによって呪いをかけられ、山羊頭の悪魔を植えつけられたのだ。悪魔変身力を得た代わりに身体は確実に蝕まれ、最悪の場合は本体を乗っ取られる可能性も大いにあり得る。困り果てた旺伝は、クライノート社の会長をッ務めるトリプルディー・ラストラッシュに救いの手を求めたのだが、情報料の見返りに契約社員として定年まで働けと条件を提示した。クライノート社は魔法界に本部を置く超優良企業で、世界中のあらゆる媒体を独占している。家電製品から戦略兵器までクライノート社は手頃な価格でお客様の元に商品を届けている。そこで働くのは一種の名誉であるとも言われているが、旺伝は誰よりも自由を求める人間だ。自分の生き方を否定してまで契約社員になるのは間違っていると分かってはいるが、呪いを解く方法が見つかるまでの辛抱だと言い聞かせ、渋々受け入れた。ところがそこで待っていたのは残業続きの日々だった。失敗ばかりで立ち直れない。俺は一体何を目指していたのか。苦しみの連鎖と眼精疲労が重なって自信を失いかけたところ、ラストラッシュが長期休暇を提示してくれた。期限は呪いを解くまでとかなりのアバウトだ。完璧主義者のラストラッシュが曖昧な契約を認めたのはすなわち、見つかる可能性がかなり低いという意味だろう。半ば諦め、『余生を楽しめ』という理由が込められているのは間違いない。しかしながら当の本人は前向きに考えて一歩踏み出した。途方も暮れない未知の領域の足を踏み入れているのは分かっている。分かっているが、諦められる筈もない。世界に喧嘩を売ってでも呪いを解く方法を解明してやると息巻き、まずは級帝曇叡神殿を訪れた。ここに住む御方は何を隠そう、黄金の国ジパングの実質的長だ。皆からは理事長と呼ばれて親しまれている。国王が日本の象徴的存在とするならば、理事長は縁の下の力持ちと言うべきか。表沙汰になってはいないが、理事長が運営する足若丸魔法学校は世界でも有名な魔法学校であり、毎年何万人という志願者が受験に訪れる。全校生徒も把握しきれない程に膨れ上がって、世界最大のマンモス学校と呼ばれている。敷地内には熊本県1個分の面積を誇る都市が広がっていて、観光名所としても有名だ。東日本を実質的に失った日本が弱体化せず、アメリカやインドなどの強大国と肩を並べているのは、理事長の働きがあってこそだ。当然、魔法知識にも精通しているであろう彼なれば呪いを解く方法が分かるかもしれない。一筋の可能性を信じて級帝曇叡神殿に向かったのだが、理事長は何も知らぬと答えた。ただし旺伝が進むべき道を示し、可能性は閉ざされていないという有り難い言葉を頂いた。旺伝は素直に感謝し、礼を言って級帝曇叡神殿を後にした。次に目指す場所は碩大区の触れられてはならないタブーだ。スラムと化したその場所は半分無法地帯と化し、殺人や強盗の類が後を絶たない。増加する犯罪に警察もお手上げ状態だ。悪魔を抱える旺伝には丁度良い場所である。それに闇医者ならば呪いについても詳しい筈だ。そう考えた旺伝は、触れてはいけない碩大区の闇に侵入していく。何が待ち受けていようとも、余命幾ばくもない旺伝には関係の無いことだ。恐怖や不安など感じない。悪魔と共生する旺伝が、今更ごろつき共に臆するなどありえない。幸か不幸か、呪いによって怖いもの知らずになった。精神力だけなら以前よりも拡大にパワーアップしているであろう。





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