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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 終わりなど永遠に訪れないのは分かっている。分かってはいるが、何とかしようともがいている姿も評価されないのは納得いかないと、今までの旺伝は感じていた。サラリーマン時代は所謂勝ち組企業の幹部として働いていたが、それは幻想に過ぎない。本当は借金に追われてタダ働きを強要されていたのだ。恐らくはラストラッシュの元で働いていると一生コキ使われる日々を余儀なくされるだろう。たとえそれが一般的に大企業と呼ばれるクライノート社でも関係ない。給料や面子で評価されるのではなく、あくまでも自分の仕事量に評価をして欲しいと願うばかりだ。そんな事を考えながら階段を歩いていると、まるで人生を突き進んでいるような錯覚に陥る。人生の事なんぞ分からないひよっこの17歳ではあるが、一応はラストラッシュの元で働いて人生の何たるかを教えられた気がする。仕事で何も分からない場合はとにかく人に聞けと、耳にたんこぶが出来るぐらい言い聞かされていた。自分勝手に仕事を進めて誰かに迷惑をかければ、仕事の効率が悪くなる。仕事で分からない場合は恥ずかしがらず、誰かに助けてもらうのが一流への第一歩だとラストラッシュには教わられたのだ。それと、仕事とは関係ないのだが、趣味に関しても色々と教わられた。趣味の範囲内であれば、自分のやりたいように好き勝手し放大にすればいいらしい。趣味でストレスを溜めるのは一番馬鹿らしいのだ。言われてみると確かにその通りだ。旺伝は敢えて言えば女遊びが好きな立場上、ストレスを溜める瞬間も多々ある。しかし、逆に考えれば仕事でもストレスを溜め、女性との人間関係にもストレスを溜めるなど……一体何処で休まる暇があるのだろうか。呪いを完治させる名目で、ある程度の休暇を貰った身分で推測するに、暇な時間こそが人間の質を大いに狂わせるのを学習した。大抵の人間は時間を与えられると怠け者になって、本来すべき作業が捗らない。例えるならば夏休みの宿題と一緒だ。夏休みという無間地獄に等しい休暇を与えられた学生は、何も知らずにスランプの沼地に足を踏み込んでいる。毎日コツコツと宿題を終わらせていくか、8月31日に口から泡を吹いて目の下にクマを作りながら大量の宿題に追われるか、どちらを選ぶかは貴方次第だ。前者を選んだ者にはある程度の自由と幸福を与えられ、後者を選んだ者は8月31日という日付に強いトラウマを植え付けさせる。ここで宿題をやらずに二学期を迎える選択肢を加えてはいけない。宿題とはすなわち、学校側から与えられた最低限のノルマだ。毎日の授業に比べたら夏休みの宿題など子守唄に等しいにも関わらず、大抵の学生は配られる大量のプリントに青ざめて最初から白旗を挙げている。誰だって初日に全てを終わらせるのは苦汁だ。しかし、騙されたと思って毎日コツコツと1枚や2枚でいいからプリントを終わらせて見てはどうか。きっと8月31日を迎えた時には、何とも言えない幸福感と達成感に満ち溢れている筈……と、高校を中退した旺伝は何となく想像していたのだった。なんせ旺伝は、学校で学ぶよりも身体を動かして仕事をしたいタイプなのだ。残り5分で何をしようかと頭で回転するよりも、まずは身体が勝手に動く体質をお持ちなのが、学校を中退してフリーターになった理由なのかもしれない。そして、その体質は遺伝的である。玖雅家は代々、魔力に目覚めない家系として人々から認知されていた。このご時世に魔法を使えないのは逆に珍しく、テレビに取り上げられるぐらいの貴重性だ。日本の膨れ上がった人口で比較しても、数百人程度だろう。その中でもひときわ知名度の高いのが玖雅家だ。半世紀以上前に、玖雅家の男が引き起こした事件が影響で都市部が次々と崩壊していき、結果的に六番目の東京が生み出される程の天災レベルの大事件が起こった。そのため、玖雅家の人間は代々、否定的な眼差しで見られるようになっていた。旺伝の父親である玖雅明の存在で今はほとぼりが冷めた状態ではあるのだが……やはり、未だに玖雅家に対して憎悪の眼差しを向ける者も多少は存在しているに違いない。



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