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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯2 逃げた男の手掛かり
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021


 ここで、旺伝とラストラッシュの二人は昨日の出来事を軽く整理し始めた。昨日は謎の男に襲撃されてせっかくの花火大会が中止になったため、あまり思い出したくのだが、仕方なかった。


「昨日は大変でしたね」


 床を雑巾がけしていた時、唐突に、ラストラッシュが話しかけてきた。


「まったくだ。かなり大変だったな」


 旺伝は訝しい表情を浮かべていた。


「あの男は特殊な移動方法を持っていたようですが、心当たりは有りますか?」


 黒い泡に包まれて爆発したと思うと、いつの間にか姿を消しているという移動方法だ。


「無いな。悪魔に変身した俺でも、あの移動は出来ないし」


 山羊頭の悪魔に変身すると、戦闘力が上昇するのだが、あの移動方法は出来ないのだという。


「東日本の悪魔だけが備えている移動方法なのでしょうか?」


「どちらにしても、俺は奴を見つけなければいけない」


 借金返済のためだ。こんなところで一日中縛られて、永遠に掃除させられるのだと思うと寒気がする。だからこそ、早々と見つけ出して、依頼人の元に身柄を渡さなければならない。


「そうですね。私も早くお金を返していただきたいので」


 ラストラッシュは終始微笑んでいた。やはり、笑顔は社長に必要なスキルなのだろうか。


「だが、奴は一体何処にいるのやら……皆目見当もつかない」


 そうだというのだ。旺伝は。


「黙って再出現するのを待った方がいいですね。お互いにお互いの首を狙っているのですから、向こうからやってくるでしょう」


 ラストラッシュの言う通りだ。互いに依頼人に契約されている身分なので悠長にはしていられない。必ず、再度襲ってくるだろう。


「ああ、そうだな。しかし」


「しかし?」


 と、ラストラッシュは不思議そうに聞き返してきた。


「俺の呪いを解く方法を見つけられるか、そこが不安要素だ」


 東日本の悪魔にかけられた呪い、それは魔力を失う代わりに、悪魔に変身できるという呪いだった。ただし、悪魔に変身する度に、体が老化してしまうのだが。


「やはり魔法が使えないのはきついですか?」


 首を若干傾けて、ラストラッシュが尋ねてきた。


「当たり前だ。俺は元々、魔法使いだぜ」


 麻酔銃使いでは無い。魔力を失ったことによって、戦闘方法も無くしたので、泣く泣く使っているだけなのだ。


「そうですか。私は魔法ではなく武器を使って戦っているので、魔法の有能性は左程詳しくはありません」


 そうだというのだ。ラストラッシュは。


「やっぱり慣れた魔法が使いたいぜ。これじゃなくて」


 旺伝はポケットの中から黒い石を取り出した。この石を前に出して、心の中で悪魔に変身したいと念じることで、山羊頭アンザー悪魔イブリースへと変貌する事が出来るのだ。


「その石が変身に必要なのですか?」


「絶対条件らしい」


「しかし、老化が進むのはやっかいですね」


「ああ。どの程度老化が進むのは分からないが、最近声が低くなった気がする」


「確かに出会った当初よりも低いボイスですね」


 ラストラッシュも気が付いていたようだ。


「だろう?」


「外見は全く分かっていませんが、声は低音になってますね」


 ラストラッシュはそう言った。


「これも老化が原因かもしれない」


 つい、伏し目がちになってしまう。


「要するに、変身に制限があるということですか」


 簡単に説明していた。説明は他者に物事を教えるだけではなく、自身を納得させるためにするものでもある。この場合は、後者の方だろう。


「俺だってこの歳で老けたくないのさ。変身はここぞという時にしか使わない」


「それは同意しますよ。身体もそうですが、気持ちも若くありたいですからね」


 気持ちまで老け込んでしまうと、身体的能力に影響が出てしまうからだ。心技体の中で最も重要視されているのはメンタルだ。メンタルが萎えてしまうと、技術と体力も萎えてしまう。だからこそ、気持ちは若く保たないといけないという、会社経営者のラストラッシュらしい考え方だった。


「だから、とっとと呪いを解いて昔の自分に戻りたいぜ」


「そのためには手がかりが必要ですね。あの男の」


「ああ。捕まえて呪いを解く方法を聞き出してやる」


 拳をガッチリと固めて、やる気を見せる旺伝だ。そんな旺伝に耳よりの情報があるといった感じで、ラストラッシュが近づいてきて耳打ちをしてきた。


「ここだけの話しですが、東日本に詳しい人物を知っています」


 そう、耳元で囁いていた。


「本当か!」


 核戦争で崩壊した東日本に詳しい人物がいると言うのだ。この男は。




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