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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 趣味に時間を費やす価値など全く無いのだと旺伝は確信を得ていた。こうして荒波に揉まれている方がよっぽど生きている感じがする。趣味とはあくまでも自分を納得させるための行為に過ぎないので、やり過ぎるのも時間の無駄になってしまう。不用意に趣味の時間を増やし始めると生活習慣病を引き起こす切っ掛けになるかもしれない。敵を発見する危機察知能力の欠如も問題になってしまうだろう。ようするに惰性で趣味をしていないかと旺伝は自問自答を続けていた。旺伝は本を読むのが大好きで依然は夜更かしをしてまで読書をしていた。1日に1冊の本を読破する速読能力にも目覚めた。だが、そんな事には全く価値が無かった。読書とは短時間の内にするのがストレス解消になって丁度良い。ところが、何時間も読書を続けて眼精疲労を引き起こすのはやる気を削ぐ事に他ならない。趣味とは常に短時間の内にする方が効率も良く、ストレス解消になるのだ。無駄に時間を費やしていたあの頃を考えると、断然今の方が生きている感じがする。仕事や戦いの場でしか感じられないストレスや恐怖感。これが格別なのだ。決して日常生活では得られない感情だからこそ仕事にやりがいが出てくる。楽しくは無いにしても、生活に張りが出てくるのは間違いないと旺伝は独自の発想を得ていた。


「人生の彩を増やすためには幸福感が必要だと思ってる。その中でも趣味は幸福感を増やす画期的な材料になる筈だ。でも、やり過ぎるのは罪悪感を生み出すだけだと今ならハッキリと言える。昔は夜遅くまで起きて読書をしていたが、夜更かしするだけの価値など無かった。そんな事をするぐらいなら黙って寝ていた方が良かった気がする。俺達は決して徹夜が当たり前の業界にいる訳では無い。雑誌記者は締切に追われて徹夜をするのが仕事の内だから良しとして、俺達は普通のサラリーマンだった。そのありがたさを何となく分かってきたような気がする」


 そうなのだ。あれだけサラリーマンの生活を嫌がっていたのだが、いざその場から離れると妙な喪失感を感じてしまう。職場では常に敵に囲まれていたと錯覚をしていた。それだけ精神状態に不安を感じていたが、今思えば人間として当たり前の感情だったと理解出来る。真の仕事人間とは言い難い。真面目に仕事に取り組めたとは言えないが、傷痕を残すには成功した。それを積み重ねれば人生の彩も増えるのではないかと思えて仕方が無い。


「そんなに思いつめていたのね。まあ、あんたの考え方は何となく分かるわよ。あたちだって好きで仕事をしてる訳じゃないもの。生きるために仕事をするんだから、人生=仕事の方程式は成り立っているわよねえ」


 ハリティーも幼いながらも良く分かっているようだ。仕事と何かを。



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