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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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208


 こうしてリラックスする瞬間が訪れると、如何に旺伝と言えどもストレスなど感じはしない。窓の外から夜景を見ながら黄昏る瞬間は格別だった。しかし、何か違和感を感じてしまうのだ。それは決して違和感などでは無い。では何かと言えば旺伝も良く分からなかった。正社員奴隷地獄から解放され、着実に答えへと近づいている。だが心の中がモヤモヤとして納得が出来なかった。心当たりと言えばローンレンジャーの安否か。結局彼が銀行強盗した理由は未だに判明していない。もしかすると今頃彼は億万長者の成金生活をして世の中に溶け込んでいる可能性もある。しかし、それだけがモヤモヤの原因だとは考えられない。目の前の豪華な和食に舌鼓をするのも僅かばかりの時間だった。今ではモヤモヤの正体を探ろうと頭の中がいっぱいだ。そんな旺伝の気持ちを察したのか、ハリティーが珍しく優しい言葉をかけてきた。


「外ばっかり見てどうかしたの?」


 小首を可愛らしく傾げる様が何とも少女らしい。確かに彼女は頭でっかちかもしれないが、本来ならば中学生でもおかしくはない年齢だ。ちょっとばかり人より勉強が出来るからと言って差別的な目線を向けてはいけない。この時、旺伝はそう思っていた。


「いや……ちょっと、心の中が不安定でな。俺は昔から精神状態に難があったから珍しい訳じゃない。でも、正社員の呪縛から解放されたのに心の底から喜べないのは不思議だよ。モヤモヤとした霧がかかっているようだ」


 これまでの仕事から解放されて自由な時間を手に入れた。しかし、身体と心はまったく喜んではいなかった。むしろ仕事で得られるストレスを欲しているのだ。仕事をしないと人生のぬるま湯に浸かっているようで心が納得しないのだ。とは言っても社会復帰して心のモヤモヤが晴れる保障は何処にもない。それよりもむしろ、病気1つ持ち合わせていない健康体になるのが旺伝の目標だ。悪魔の呪いから解放されるまで真の自由とは言えない。と、自問自答の連続で答えを得ていた。世界は毎分刻みで変わっていくのに、人間が何も変わらない訳が無い。今が底辺で後は登って行くだけだと自分に言い聞かせてきた。常に劣等感を感じているから成長しようと意欲も生まれる。結局人間は凡人なのが丁度良いのだ。中途半端に才能があっても成長するための妨げになるし、かといって天才過ぎるのも孤独感が生まれるだけでメリットは少ない。だから凡人にこそ無限の可能性が秘められていると旺伝は思っていた。



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