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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
202/221

202


 旺伝とハリティーは協力して本を探していた。今まで非協力的だった彼女だが、さすがに仕事なのでサボる訳にはいかないらしい。ブツブツと文句を言いながらも手は動かしているのだ。しかも尋常じゃないスピードで読みながら、本を流し読みしている。そんなに適当で大丈夫かと疑問を浮かべた旺伝は、ハリティーに向かって話しかけていた。


「おいおい。適当に読んでも内容は理解出来ないぞ」


「あんた本気で言ってるの? 史上最年少でアウゼンダンテ魔法学術院を卒業したあたしに向かって……あたしはね。今世紀最大の天才少女なのよ。本なんて流し読みしただけで全ての知識が頭の中に入るのよ。あなたみたいな人とは違うんです」


 最後は某総理大臣のようになっていたが、ハリティーの言っている事は理解する領域を遥かに超えてしまっていた。彼女の言う事が本当ならば瞬間記憶能力が備えれている事だ。それは紛れも無く天才の証であるので、旺伝も驚かざる終えない。嘘と思われても仕方がないぐらい、非現実的な能力だと旺伝は思っていた。誰かに頭の中を改造されない限り、ありえない。しかし頭の中を改造するなど、それも非現実的だ。しかし旺伝が今調べている悪魔についても非現実的には違いないので、結局は何が真実なのか分からなくなっていた。


「そうですか。分かりましたよ。僕は所詮、非凡な人間ですよ」


「なによあんた。人間が非凡なんて冗談じゃないわよ。人間にはまだ、未知の可能性が秘められているんだから、悔しかったらあんたもあたしみたいな天才になってみなさいよ。いつか追い越してくるのを楽しみにしてるわ!」


 彼女はそう言いながら、本を読みこんでいた。近頃の少女はこんなにも態度が悪いのかと溜め息が出るが、同時に期待もこめられていた。彼女のように優秀な人間がいれば世界の未来は明るいと思えてくる。しかしこの考え方は非常にまずいと、旺伝は自分自身を戒めていた。なぜなら、今の感情は完全にお年寄りの感情だからだ。日常生活にやる気の出ないお年寄りが苦し紛れの戯言を言う時に良く似ていた。きっと明日は老害に怒られるだろうと旺伝は確信していた。今の自分は何に対してもやる気が現れず、適当な生活に強いられているので叱咤激励が飛んでくる筈だ。旺伝にとっての老害とはラファエル=ランドクイストだ。何故かは分からないが、そろそろ彼のドギツイ言葉が自分に襲いかかってくると確信を得ていた。何故かは分からないが、分かるのだ。


「そうだな……。俺もお前のように一所懸命になるよ」


 旺伝はそう約束して、ハリティーと一緒に文書を読み込んでいた。



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