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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 旺伝が理想の自分を見つけるために努力しているのは何一つ無かった。これまでに努力さえずれば成功の道は開けると思っていたが、この世は努力だけではどうにでもならないのだと悟った。それから旺伝は努力を放棄して自分の才能だけに頼る人生を過ごしていた。しかしそれにも当然限界があった。自由な時間が有り余っているよりも、むしろ限られた時間の中で努力をしながら、汗水垂らす方が人生的に充実している。ようやくその事実に気が付いた旺伝は以外にも冷静だった。先程まで日光を遮断された部屋に監禁されていたにも関わらず、そこから人生の教訓を得て自分のプラスに変えていた。もう、精神安定剤に頼る日々は終わった。これからは人生の目標に向かってひたすら前進を続けるだけだ。旺伝はそう思い、窓の外から安定剤の瓶を投げ捨てていた。あの薬には悪魔を押さえる効力もあったが、それも関係は無い。ようは内なる悪魔を屈服させてコントロールをすればいいのだ。今まではそれが出来なかったが、これからはきっと出来る。そう信じていた。


「玖雅君。あの部屋で何が行われていたのか話して頂けませんか?」


 ラストラッシュがハンドルを握りながら尋ねてきた。こんなトラックを使ってまで自分を助けにきてくらたのだから感謝感激しかない。それぐらいはお安い御用だと旺伝はこれまでの敬意を彼に話し始めた。


「別に何も無かったさ。この場合、何も無いから逆に不満を感じてしまったと言うべきか。そこそこ整った部屋の中に閉じ込められ、トイレと風呂が付いていて必要最低限の暮らしは出来る。でもそこに希望は感じないだろう? 少しでも精神的不安を感じている方が人間は行動出来る。でも、一生安泰の烙印を押されたらそこでもう人生にやりがいは無くなるから俺は部屋を出たかった。自分の人生を人に決められるのも嫌だったし、悪魔の治療方法が見つからないなんて誰が決めつけたって話しだ。少しでも可能性がある限り、俺は諦めたくない」


 今のご時世人は安定を求めているが、不安定だからこそ張りのある人生を過ごせる。安定の二文字が良く似合う公務員に精神病患者が多いのもそれが理由だ。毎年一定の給料を貰って毎日淡々と仕事をこなす。その作業が退職するまで延々と続く。特に公務員はリストラが無いので危機感を持てない。リストラされるかもしれない危機感を持っていればだいぶ違ってくるが、公務員にはそれも無理だ。故に旺伝は安定を求めない。いつ仕事が無くなるか分からないフリーの状況に身を投じて生きていこうと決意を抱いていた。



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