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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 旺伝は常に孤独を感じていた。こうしてベッドの下で震えながら嫌な思い出に浸るのも全て孤独感からだ。人と接するのが苦手である旺伝は、インターネットの中でも友達を作れない。画面の向こう側に人の感覚があると分かるので、どうしようも無かった。それに友達と言えば幼馴染の女子ぐらいしか思いつかない。これまでに幾度となく友達を作るチャンスには恵まれてきたが、そのチャンスは旺伝はいつも棒に振っていた。どうやって話していいのか分からなくなるなるのだ。それに旺伝は昔から舌足らずなので上手く喋るのが出来ない。そのため会話に恐怖感を抱いてしまい、赤の他人とは満足に会話も不可能だった。ラストラッシュとは既に友達のような交流をしているが、いかんせん奴の行動は読みにくい。そんな人間と友達になるのは言語道断だったので、若干の距離を空けて、いつも会話に勤しんでいた。外見ではクール一匹オオカミを装っていたとしても内面までそうなるとは限らない。常に人間は過酷な現状に置かれる危険性があるので、どうしても精神的に弱い自分も必要になってくる。どんな物事にも動じずに接していると逆に危機察知能力に欠点を覚えてしまうからだ。なので、旺伝のように精神的に不安定で落ち込みやすい人間は意外にも伸びやすい。


「くそ……こんな時に腹が減ってたまらない」


 爆発音がして危機的状況に追い込まれている時でも、腹がグーグーと鳴って空腹を訴えていた。これには旺伝も右手で耳を押さえながら今度は左手でお腹を押さえる行為をしていた。いつまでも鳴りやまない耳鳴りに耐えて、同時に空腹にも耐えようとしている。まさにそれは野生動物の象徴的な行動だった。痛みに反応して本能的に身を守ろうとするのは、かつて人間が原始時代に野生動物だった時のようだ。旺伝も自分がそういう状態なのを薄々感じているようで、「何やってるんだろう俺」という後悔に似た感情が芽生えていた。元はと言えば絶対血戦区域の東日本に侵入したからこうなってしまったのだ。あの時に勇気を振り絞って依頼を断っていれば、こうもならなかっただろう。しかし今更悔やんでも仕方ないのでこうなれば前を見るだけだ。旺伝は匍匐前進の形になりながら、一歩ずつ一歩ずつ動いていた。全てはこの部屋から脱出するために。その事で頭がいっぱいになり、多少の耳鳴りと空腹感にも動じなくなる自分がそこにいた。こうして徐々に進歩を感じている旺伝は完全にベッドの下から這い出ていた。



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