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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 なんやかんやありながらも、旺伝はしばらく無音の素晴らしさを全身で味わっていた。何も聞こえないからこそ体が安らいでいく瞬間がたまらなく好きだった。しかしいつまでも無音の世界の住人でいられる筈もなく、目の前の扉が開いていくのが分かった。そして扉からはダニーボーイが現れたのだ。どうやらこの場所に軟禁されている理由は彼にあるらしい。それを瞬時に理解した旺伝は瞬きを連続して、如何にも信じられない素振りを見せていた。実際に想像もつかなかったので当たり前の反応と言えば当たり前なのだが、やはりワザとっぽいと言われても仕方がない。とにかく日本人は感情を表情に出さないと有名なので、諸外国からは日本の満員電車を『奴隷船』と呼んでいるのだ。日本の仕事はあまりにも意識が低いので、外国からは奴隷仕事だと言われている。それぐらいの例えをされるぐらい日本人の表情筋は毎日衰えている。しかし旺伝はそういう風潮が嫌いだったので、あえて外国人のように表情豊かな顔を造っている。毎日朝起きたら鏡の前に向かって『おはよう』と言うのも忘れない。全ては表情筋を活性化させるための手段なのだ。今時、無愛想で特をするのはうどん職人ぐらいなので、人間的に出世するためにはとにかく笑うしかない。どんな物事にも柔軟に対応してストレスを溜める事も無く、笑いに変換させる作業が必要なのだ。しかし現代人は笑うのを極端に嫌う。笑うだけでストレスをかなり軽減できるのに、そうしようとしないのだ。その理由は恐らく「緊張している俺かっこいい!」という自己主張が強いからだろう。日本人は基本的にプライドが高い生物なので自分の主張を絶対に曲げようとしない。今世界で必要とされているのは柔軟に対応できる微生物のような人間だと言うのに、そんな意味不明なプライドを持っていては成功しないのも当たり前である。だからこそ旺伝はこの状況さえも表情豊かに乗り切る必要性があった。全ては将来のために。


「おいおい、こいつは驚いたな。まさか俺を軟禁した奴の正体がお前だったとは……恐れ入ったよ。嫌、本当に参ったな」


 ワザとらしいのとは違う。欧米っぽい言い回しだったのだ。日本人は欧米の喋り方と日本の喋り方の区別をこのようにしがちである。ワザとっぽいと。しかしこれからはグローバルな言い回しと呼ぶ時代がやってくるだろう。そういう意識を高く維持している人間だけが出世する世の中の仕組みになっていく筈だ。なので旺伝は時代を先取りしているつもりになっているのだ。無論、これから先の未来はどうなるか分からないので旺伝の考え方は杞憂になるかもしれない。だが、それでもいいと思っている。杞憂に終わったのならば新に時代を感じさせられる行動をしていけばいい。それだけなのだから。そんな事を考えていると、ダニーボーイは此方に近づいてきた。そして目と鼻の先まで接近したと思うと、今度は語り始めた。いつものような冷酷な言い方で。


「あれから色々あって君の発言をフォーカスしていた。確かに悪魔を研究材料とする考え方は疑問が浮かぶ。そもそも悪魔の正体を知らないからと言って彼らをモルモットのように扱うのはどうかしている。と、君の発言を自分流に解釈させてもらった


 ダニーボーイはどうやら改心してくれたらしい。



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