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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
173/221

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 旺伝は今の自分の状況を売れ残ったオカマだと表現していた。皆も知っての通り、オカマは悪口と嫉妬の塊である。そんな彼女達は売れ残っている同士を見ると指を差して笑うのだ。そんな状況と自分を重ねているのが旺伝である。別に旺伝には性同一性障害の類はまったくなく、むしろ根っからの日本男児だ。ところが、目の前の状況を見ていると自分がいかに無力だと思い知らされる。ここでくしてジッとして彼らの戦いを見ているだけしか出来ないのだから無力と感じて当然だった。彼は幼少の頃から強い人間とは程遠かった。しかしそれでも自分なりの努力を重ねて、祓魔師として食っているだけの実力を身に着けていた。親の七光りだと馬鹿にされないよう必死に努力をした結果だ。その努力は誰にも言っていないので自分だけが誇れる唯一の点だった。ところが、世の中にどう頑張っても越えられない壁はあるようだ。そう思いながら戦いの行先をぼんやりと見つめていた。今現在勝利に最も近づいているのは紛れも無くダニーボーイの方だろう。自動修復機能をお披露目して戦いの流れはローンレンジャーに向かっていると思われがちだが、如何せんダニーボーイは無関心である。普通の人間ならば目の前で自分のつけた傷が修復されてしまっては多少なりともショックを受ける筈だ。にも関わらずダニーボーイは平然とした態度で傷が修復されていく様を見続けているだけなのだから。


「成程……貴様は再生能力を持っているのか。能力的な意味合いでは決して悪くないが、如何せんユーモアが欠けているな。再生能力など今の時代ではありきたり過ぎるぞ。それ故に対処法などいくらでも存在している」


 ダニーボーイはそう言うと、例の指揮棒を使って滅多刺しにしていた。先程よりも素早いスピードだ。もしも旺伝が悪魔に変身してなければ目にも終えないスピードだっただろう。それぐらいの速さで次々と身を引き裂いている。最初はまだ修復が追いついているようだったが、次第にスタミナが不足しているのかローンレンジャーの再生能力が追い付かなくなっていた。次第にローンレンジャーは防戦一方になり、防御で何とか耐えしのぐしか無かった。こうして見ているだけでも無様だと思ってしまう。こうして息絶え絶えの旺伝よりかは幾分もマシだろうが、それでも奴は先程以上の強さを感じられない。なぜならばダニーボーイの方が二枚も三枚も上手だからだ。とてもじゃないが勝負にはなっていない様子である。


 すると、攻撃はいつの間にか止まっていた。ローンレンジャーの体は傷だらけになっているが、ダニーボーイの体は無傷である。返り血を浴びて自慢のスーツは汚れているものの、大した傷は負っていない。それにダニーボーイが攻撃を止めた理由は紛れも無く、連行するためであろう。そのためにローンレンジャーの体力が無くなった所で攻撃を中断した訳だ。しかし、あの指揮棒にどれほどまでの殺傷能力があるのかと見ていて不思議に思えてきた。よっぽどじゃない限りはあれ程までの力を生かせないだろう。そんな事を考えていると、公園から新たなる客人が押し寄せて来ていた。なんとそれは例の子供達である。登校途中のようで皆がランドセルを背負っている。人数は6人だが、なんと子供達はダニーボーイの腕や足を掴んでいるではないか。さすがのダニーボーイも無力の子供達に気危害を加えるのは躊躇うようで、反撃はしていない。だが威嚇はしていた。


「貴様等……私の邪魔をするとは良い度胸をしている!」


 ダニーボーイは確実に焦っていた。無理も無い。相手は無力な子供なのだから。



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