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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯1 山羊頭の男
17/221

017


 三人は商店街の花火専門店の前で談笑していた。


「さて、どこで花火をしましょうか」


 ラストラッシュが話しかけてきた。


「そうだな。下手だが空き地とかどうだ?」


 旺伝は空き地を提案した。


「空き地ですか。何処にあるのでしょうか」


「碩大第一小学校の近くに空き地があるぞ。ここから近い」


「いいですね。では、そこに行きましょうか」


「その前にだ。そろそろ起きてもらうか。友奈に」


「そうですね。それは私に任せてください」


 すると、ラストラッシュは友奈の耳元に近づいて、こう囁いた。


「起きてください。花火の時間ですよ」


「ひゃなび!」


 飛び起きたというべきだろうか。甲高い声を出して、顔を上げたのだ。ラストラッシュの低いボイスが、伝わったのだろう。


「やっと起きたか」


「あれ、ここは?」


 どうやら本部の出来事を覚えていないらしい。辺りを見回して不思議がっていた。


「申し訳ございません。花火大会は中止になってしまいました」


 平謝りするラストラッシュだ。


「え? なんでですか」


「実は……事故があったのです」


 そう言ったのだった。


「事故ですか。それはダメですね」


「ですから、ここに用意したのです」


 ラストラッシュは袋の中に入った家庭用花火を見せた。


「自分達でする花火ですか。いいですね」


 友奈がはしゃいでいると、


「ちょっと、いい加減に降りてくれないか」


 さすがの旺伝も腕が痺れてきた。17歳の少女を1時間近く背負っていたのだ。しかも歩きに歩いて。


「あ、ごめん。背負ってくれたの?」


「そうだよ。急に気絶しやがって」


 本当の事は言えない。本部に怪人が襲ってきて、旺伝がそれを撃退したなど、とてもじゃないが口にすることは出来なかった。


「なんで、あたし気絶しちゃったんだろう」


 可愛らしく小首を傾げていた。まるでリスのような小動物感に溢れている。


「さあな」


「私も存じ上げません」


 ある意味、二人共空気を呼んでいた。


「うーん……まあいいか」


「そうだよ。それより花火しようぜ!」


「私もウズウズしています」


「うん、花火しようー!」


 満面の笑みで、友奈は答えていた。


「それじゃ、行くか」


「目指すは空き地ですね」


「第一小学校の近くの空き地にレッツゴー」





 ■





 辺りが暗闇に包まれている頃、三人は目的地に無事に辿り着いた。商店街からここまでは十分程度の時間だった。そして空き地の管理人に電話して花火をする許可を貰うと、三人達は一斉に花火の袋を開けた。


「うわあ、花火がいっぱいですう」


 新鮮味溢れるリアクションで、友奈は目を輝かせていた。やはり、いくら年をとっても花火の楽しさは変わらないのだ。例えだが、たとえ初老が近づいていても、花火一つで子供のように盛り上がることも出来るのだ。


「これが手持ち花火って奴か」


「そのようですね。比較的スタンダードな花火です」


「どうやって火を点けます?」


 二人は未成年なので、タバコに火を点ける道具などを持ち合わせている訳も無かった。自然と、二人はラストラッシュに顔を合わせていた。


「心配ご無用です。着火マンを使いましょう」


「ライターじゃなくてか」


「着火マンの方が雰囲気あるでしょう?」


「そうですね。私の花火に付けてください!」


 ラストラッシュが花火の口に火を点けると、勢いよく火花が噴射し始めた。シュワアアアという音ともに、炸裂しているのだ。


「うお! 意外と強いな」


「そうですね。これは凄い」


 こうして、空き地での小さな花火大会が始まったのだった。




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