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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 せっかく人間として生まれてきたのだから人間らしく生きていきたいのは誰しもが思っているだろう。ところがどうやっても人間とはかけ離れた冷酷な性格をしている輩は存在している。たとえば旺伝の在籍している会社の中にもそういう輩はいるのだが、それは例外なく老害である。後先考えずに後輩の心を殴り飛ばすような暴言を吐いたり、微妙な嫌がらせをしたりする。露骨な嫌がらせは自分の身の破滅に繋がるので絶対にそんなのはしない。ところが、相手も気が付かないような小さな嫌がらせは出来るのだ。狡賢い老害は精神年齢も低いので、まるで小学生のようなイジメをしてくる。ただ見た目が老いているだけなので奴等はクズ同然なのだ。本来ならば人権など必要なく、死んでいる同然の存在なのだが今の日本には老害を裁く法は存在していない。なぜならば日本は老害に支配されているからだ。国会の大半は年老いた人間なのだから年寄りを保護する法案ばかりが可決されていたりする。しかし本当に駆逐されるべきなのは老いている人間なのだからそんな法案を可決していては日本の未来は終わりであると、旺伝は考えていた。それに老害のやっている事に対してイチイチ目くじらを立てていては意味が無いので、徹底的に無視をするしかない。奴等はそもそも人間本来が持っている性格を失ってしまっている。だから死を迎えるしか奴等を止める方法は無いのだ。しかし老害を例外なく死刑にさせる法律など存在しないので、いつか自分が国会議員になった時は最低でも老害を刑務所送りにするマニュフェストを掲げたいと思っていた。その歳になるまで生きていればの話しだが。



 *************



 旺伝は悩んでいた。相手がいくら悪魔だとしても、人間の形をしているし、それに人々から愛されているプロ野球選手なのだ。ツイッターもやっているしフェイスブックもしている。そんな善良に見える人間を今から駆逐するのだから栄光ある行為だとは思えない。自分自信が結局は地獄に堕ちる行為をしているのじゃないかとも感じてしまう。本当に自分のやっている事に意味はあるのかと疑ってしまうのは無理もない。どうせ人間はいつかは死ぬのだから寿命が短かろうと長かろうと関係ないのじゃないかと不意に思ってしまう瞬間はある。しかし、人間は同時に出来るだけ長く生きたいと願うのだ。旺伝も生きたいとは思っているのだが、そのために同じ性質の生物を狩ってしまうのでは動物と同じだと。しかしだからと言って今ここで戦闘をやめてしまうのは運命に逆らっているのと同じであるので、旺伝は改めて決意していた。ここは絶対血戦区域なのだと。そう思ってしまえば幾分も気持ちは楽になってくる。


「松岡君じゃないかのか。てっきりそうだと思っていたのに」


 誰と間違っているのかは知らないが、ローンレンジャーは旺伝の事を松岡君と呼んでいた。旺伝の苗字は玖雅なので決して松岡では無い。日本人の顔を見間違えるのは外国人ならば仕方ないとして、一体松岡君とは誰なのかと疑問に思ってしまっていた。一旦疑問が頭の中に生まれると、人は疑問から逃れられなくなる。そういう性質なのだと諦めるのが人間だが、旺伝は決して諦められない。せっかく普段感じられない感情を抱いたのに、それを簡単に諦めてしまうのは勿体ないからだ。大抵の人間はいつも同じ感情を胸の中に秘めていて、刺激の少ない毎日を過ごしている。そんな寂しい毎日など至ってツマラナイのだ。



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