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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 死にもの狂いで会社のために尽くしてきたのに、こういう理不尽な状況に出くわすといつも以上に考えさせられる。体の調子が悪いのは決して言い訳の材料にはならない。悪魔の支配を受けているから今こうして闘いの場へ赴いている。だが会社には事情を知らない者がいるのだ。旺伝が喋っていないだけだが、それが理由で社内から反論の声が出ていたりする。「何故、あいつはいつも休みがちなのか」と言われるのはしばしばである。しかしそこはラストラッシュが何とか言ってくれているようでそれ以上は発展していないとも言える。旺伝にとってこれらの噂が重圧になってのしかかっているのは言うまでもない。理由を言いたいのだが、もしも理解者以外の人間に悪魔の血が流れていると知られたら、たちまち旺伝の居場所は無くなってしまうからだ。会社に悪魔の血を流している人間がいるとバレたらイメージダウンに繋がると容易に想像できる。そうなると反発の声は社内全体に響き渡り、最終的にはラストラッシュですら手を出せない状況になってしまうかもしれない。そうなってくると、借金返済の道が閉ざされる危険性だってあるのだ。それ故に旺伝が休みがちになっている事情を自分の口からは絶対に言うつもりなど無い。なので会社で居場所が無くなってしまうのは何があっても避けねばならない。遅かれ早かれ、向こうの連中は旺伝の様態に疑問を浮かぶのは仕方がないからこそ、悪魔を見つけて雇い主の元に連れて行く必要があった。それに、いつまでも会社員として縛られる人生を過ごすなど旺伝にとってはナンセンスである。いつかは独立して自分の会社を創り、人々に夢と希望を与える存在になりたいと夢見ているが故に、あの会社に浸かっている訳にはいかなかった。無論、借金返済が終わるまではどんなに苦痛だとしてもやるしかないのだが。


 早く会社を辞めたい気持ちはある。そんな気持ちを完全に踏みにじりそうな出来事が今起こっている以上、旺伝の心が葛藤してしまうのは自然の流れとも言える。自分自身が精神的に弱いのもそうだが、この精神的に弱い自分だからこそ感じ取れる部分もあるのだと、珍しくポジティブに考えていた。目の前に悪魔がいるにも関わらず、討伐する気持ちが全く湧き起こらない自分。そんな自分を許せるだけの余裕があるのだ。その余裕が何処から生まれてくるのかと言えば、やはり音楽の力が大きい。音楽を聞いていれば自然と勇気が湧いてくるので、自分の精神状態さえも好きになってくる。なので旺伝のよりどころは音楽であった。特に急いでタクシーに乗る用事がある時、不意にステレオから聞こえてくる音楽にはいつも心癒されている。この癒されている瞬間がたまらなく好きなのだ。それはすなわち、自分を愛せている証拠だとも言えるのだった。



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