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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
163/221

163


 仮病で仕事を休む訳では無い。本当に悪魔退治を依頼されたから仕事を休むにも関わらず、旺伝は妙な罪悪感を抱いていた。会社に迷惑をかけているのじゃないかと脳裏から不安が離れず、仕舞には精神崩壊寸前に追い込まれてまう。旺伝の心は既に社畜で支配されてしまっているので、このような感情を抱いてしまうのだ。人は誰しも仕事を休んだ時には少なからず罪悪感を感じてしまうのだが、旺伝は特にその感じるポイントが他者よりも多かった。「嘘の用事だと思われていないか?」とか「仮病と思われているのじゃないか?」と自然に思ってしまい、発狂しそうになる。そういう時は大抵、風呂のお湯に顔を突っ込んで声にならない声を喉から絞りあがてブクブクと泡を立てるのが方法だった。ところが今は目の前に悪魔はいる状態なのでとてもじゃないが発狂している暇は無い。しかも悪魔がいるにも関わらず、会社での自分の身分を心配してしまっているのだからどうしようもない。もはや過去の出来事なのだから忘れてしまいたいと自分自身でも思っているのだが、それも無理な相談だった。なぜならば旺伝は既に未来に不安を感じているのだから。今は大丈夫だとしても、帰った後には絶対に心配をされる。「大丈夫?」「手応えはどうだった?」と。しかし相手が本心でそう言っているのかどうかはまったく分からないので、旺伝は相手の感情に怯えてしまっていた。ただでさえ、悪魔に体を支配されかけているのだからどうしても精神的に不安定になってしまう。そんな状態でかつ、自分本来が持っている責任感の無さや、中途半端な気持ちが余計に腹立たしくなる。本人は他人以上にそれらを意識しているのに、いっこうに改善される気配が見当たらない。その憤りさえも精神状態を不安定にさえ、過度な緊張感を与える要因となってしまっているのだった。



 ********************



 こうして、ローンレンジャーと相対している旺伝だったが、向こうは頭上に疑問符を浮かべていた。果たし状を片手に持っているので恐らく対戦相手だとは認識出来ているようだが、それとはまったく別の感情を抱いているようだ。そして旺伝には相手の反応に見覚えがあった。そうこれは自分の存在自体を忘れられている時の反応である。昔、親しかった友人と久しぶりにあった時に名前と顔を忘れられてショックを受けた経験は誰しもがあるだろう。ローンレンジャーとは昨日会ったので、記憶力の良い人は普通に覚えている筈だが、どうやらこの男は旺伝の顔も声も何もかも脳味噌から抜けてしまっているらしい。それを証拠に、ローンレンジャーは首を傾げながら口を金魚のようにパクパクと開けているではないか。


「あれ、君は誰だっけ? 何処かで会った気はするが、どうにも思い出せないよ……ちょっと考える時間を与えてくれ」


 こうして、ローンレンジャーは眉間にシワは寄せながら考え始めるのだった。



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