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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 悪魔の正体がローンレンジャーだと分かったのは旺伝にとってあまりにも過酷だった。今朝の子供達の顔が脳内から離れずに、このままだと子供達のヒーローを奪う可能性だってあるのだ。悩むのは仕方がない。そもそも旺伝は誰よりも精神状態が不安定で、メンタルも最弱だと自分がよく分かっている。しかしそれでも勇気を出して逃げずに闘ってきた。だから今回も勇気を振り絞る必要があるのだが、それ以上に旺伝の中では天秤が揺れ動いていた。ローンレンジャーを倒して雇い主の元に連れて行くか、それとも今回は見逃して別の悪魔を探すか、選択肢があると思っていた。しかし、それはダニーボーイの登場によって突如にしてかき消されたのだった。ダニーボーイは屋上のベンチで項垂れている旺伝を発見したと思うと、いつものように冷静な口調で語りかけてきた。


「この状況下で君に選択肢があると思っているのか? もしそうだとしたら、それは錯覚に過ぎない。そもそも隷属されている人間に選択など存在しないのだ」


 ハッキリ言って、今の旺伝にはダニーボーイの方がよっぽど悪魔に見えていた。その漆黒のサングラスは相変わらず表情が読み取れないし、平気でローンレンジャーを消す発言をしているのだから。そんなダニーボーイに憤りを感じながらも、それと同時に彼の言葉は的を射ていた。自分には選択肢など無いのは最初から分かっているし、旺伝はただ悩みたかったのだと自覚もしていた。悩んでいる時が一番現実から離れている瞬間であり、逃げ道を作る手段でもあった。このように旺伝は前向きが大切だと思いながらも、実際には逆の行動をしてしまっていた。それが旺伝の弱い部分であるのだ。


「それは重々承知だ。だが、俺に子供達からローンレンジャーを惹け剥がせと言うのか? あいつは子供達にとってのヒーローなんだぞ!」


 今時の子供は戦隊ヒーローに憧れているにも関わらず、それ以上の英雄感をローンレンジャーに抱いているのだ。今朝の子供達の笑顔を見ていると、誰でもそれが分かる。ところが、ダニーボーイには人間本来が持っている感情が欠如しているのか、冷酷な発言を繰り返している。こうなると、目の前にいる男の方がよっぽど悪魔にしか思えないので旺伝の眉間は自然と狭まっていた。怒りとまではいかないが、それと似た感情が心の中から沸々と湧き上がってくる。


「何度も言うが君には選択権は無い。今日の6時に奴の家を襲撃しろ、朝は誰でも動きが鈍いからそこを狙え……当然だが私は監視しているぞ」


 旺伝の逃げ道はもはや塞がれていた。ローンレンジャーを倒して、雇い主の元に連れて行くのが最優先事項と決定してしまった。もしもローンレンジャーに返り討ちされてしまうと、雇い主の元に行くのは自分自身である。確かに旺伝は人間と悪魔の血を持っているので、研究材料としては使い勝手も良いだろう。そんな自分にチャンスを与えているのだから、本当は何の苦も無く奴を倒す必要がある。しかしそれでは子供達の笑顔を失わせる可能性が限りなく高い。葛藤は続いていたが、他の道など残されていない。不本意ではあるが、やるしかなかった。



 *******************



 朝の6時。旺伝は昨日の公園に来ていた。本当はローンレンジャーの家を襲撃するつもりだったのだが、それではナンセンスにも程があるので昨日の公園を選んだ訳である。決闘の紙をポストに入れてきたので、恐らく来るだろうが自信は無かった。しかし旺伝が到着する以前に既に公園には人影があった。しかも見た所人影は黒人なので間違いなくローンレンジャーだ。その名に恥じずに、決闘を承諾したのだ。



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