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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 毎日同じことの繰り返しで飽きないのかと言われてみればそうかもしれないが、毎日同じことを繰り返していく内に自然と習慣化されてしまうのだ。それは早寝早起きも一緒であり、最初こそ「早く起きるのが辛い」と言って中々布団から出れないが、嫌でも毎日続けているとそれが日課となるのだ。そういう意味では、旺伝は夜更かしが日課となってしまい毎日昼間は寝ぼけ眼を摩りながら起き上がるといった具合の生活を過ごしていた。その日々も会社員になった事で解放されるかと思いきや、今度は時間に縛られて多忙の生活を過ごす羽目になってしまったので、睡眠の時間は前よりも悪化している。しかし、毎日決まった時間に起きているのは不幸中の幸いであり、すくなくとも以前の不規則な生活よりは幾分もマシになっているようだ。かといって、この生活を後何年も続けているとバーサーク状態になって発狂する危険性もあるので、なんとか今回こそ悪魔を絞り上げて雇い主の元に送り届ける必要があった。だからこそ、旺伝はこの現場にいる訳だが、監視カメラに映っていた人物は以外にも知っている人物だったので自分自身もビックら仰天している。


「あれ、こいつ何処かで見たような」


 モニターに映し出されているのは黒人の男だったが、片腕は悪魔と化しているので純粋な人間ではない。しかもこの男は何処かで見たような覚えがあったので、旺伝は自身の脳内血管を酸素で張り巡らせて必死に考え事をしていた。しかしこういう時に限って余計な考え事が過るのが人間のさがである。頭の中には不思議と将来の不安や後悔の念などが次々と巻き起こってしまう。こうなってくると思いだそうとしても中々思い出されないので困り果てる。そんな感じで「うーん、うーん」と悩み続けていると、あの冷静で無口なダニーボーイが口を開いて言葉を発し始めたではないか。無愛想な人間で、職場でも災害を振りまくっている人物が自分から何かを語り始めると周りの人間も緊張感を漂わせる事に発展するので、旺伝とラストラッシュは同じタイミングで顔を硬直させていた。それだけ、普段無愛想な人間が自分の意志で喋り始めるのは周りの人間を緊張の渦に巻き込ませるのだ。


「このモニターに映っている人物は……もしかしてローンレンジャーか?」


 ローンレンジャーとは今朝方に公園で子供達と遊んでいた黒人野球選手である。阪海ワイルドダックスというプロ野球球団に在籍していて日本語も喋れるキャッチャーとしてチームを鼓舞し、ムードメーカー的なポジションに座している選手だ。旺伝とダニーボーイは偶然、その黒人と出会ったので顔をバッチリと記憶していた訳だ。しかしだからと言って、このモニターだけで相手がローンレンジャーだと判断するのはいけない。特に日本人は黒人の顔の見分け方が下手くそなのでどれも同じ人間に見えてしまう。だからこそ決めつけるのはまだ早い。確たる証拠でもなければ悪魔だと決めつけるのは御法度であろう。なので三人に取り敢えず防犯カメラの映像を持ち帰り、入念にチェックするために科学チームに解析を依頼した。勿論、警察の許可を取ってだ。


 解析が終わるまでの間、旺伝とダニーボーイ、そしてラストラッシュは仕事をしていた。そもそも今日は出社している身分であるのでいつまでも仕事を伸ばしている訳にはいかない。やるべき事はたくさんあるのだから常に手を動かして会社のために身を粉にして挑戦を続ける。それが会社員としての役目だと重々知っておきながらも、旺伝の体は既に体力の限界がきていた。いつ終わるかも分からない積み重なった原稿と格闘しながら、ああでもないこうでもないと言ってキーボードを叩く作業が延々と続く。しかも、自分では力作だと思った出来栄えになったとしても、それを採用する決定権はラストラッシュにあるのでゴールは他人任せになってしまう。元来、集団行動をするのが苦手な旺伝は他人に自分の評価を左右させる仕事を極端に嫌っているので、身も心も一匹狼タイプだった。



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