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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 銀行に到着するまである程度の距離があった。なんせ碩大区はかつての東京都がすっぽりとまるごと入る程の面積を誇っているので、移動するだけでもそれなりの時間がかかってしまうのだ。こうなるといつまでも会話が続く筈も無いので、必ず会話が終わる瞬間は訪れるのだ。会話をしない時は互いが黙っているのと同じであり、近くに人がいるのに独り言を呟きまくる者などいないのだ。そして旺伝は外の景色を見ながら過去の記憶を振り返っていた。何も考えずにボーっとするのも出来たが、これから悪魔が出現した場所に行くのに思考を停止する訳にはいかなかった。とにかく旺伝と悪魔は因縁深い関係性があるのでどうしても過去の記憶が思い起こされてしまう。そう、あれは初代東京都にある国会議事堂に潜入した時だ。そこは核弾頭が直撃地点なので本来ならば木端微塵に崩壊している筈なのだが、何故かそこは人の手で修復された跡があり、旺伝自身も不思議になった近寄っていた。すると何者かに背後から襲われたと思うと次の瞬間には視界がブラックアウトして、気が付いた時には海岸に辿り着いていた。海鳥が餌か何かと勘違いして自分の周りを滑空しているに気が付いて目を覚ましたはいいが、背中に激痛が生じているのを感じて一人で動くのも困難だった。それに東日本の汚染された海から、ここまで流されたようなので体にはタップリと放射能が付着しているだろう。もしかすると軽度かもしれないし、もしかすると致死量の放射線を浴びているかもしれないと、それらも不安になる材料には十分なりえたので頭の中にはネガティブな考えがひたすら蠢いていた。


「このまま俺は死ぬのか」


 そう絶望に感じていると、不意に人影が現れた。忘れもしない。まるで狙ったかのようにグッドタイミングで現れたのは徳山先生に他らない。彼は麦わら帽子を被り、夏の暑い日差しから自分を守るようにして日傘で旺伝の体を影で覆っていたのだ。今でもその時は印象的で、恐らく死ぬまで忘れない記憶として旺伝の中には残るだろう。そして再び旺伝は力尽きて、再度目が覚めた時には知らないベッドの上に寝ていた。しかもベッドと言っていいのか分からない程に汚れていて、とてもじゃないが寝れたものじゃないと飛び起きたのも鮮明に思い出される。そもそも旺伝は汚い物や粘々した物が大っ嫌いなのだ。それだけに飛び起きるのも無理はない。だが、起きた瞬間には背中に激痛が走り「はうっ!」と言葉にならない声を絞り出したかのように発していた。




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