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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 しかしいつまでも老害について議論を交わしていては仕事が前に進まないので、三人は素直にお昼休みを満喫しようと食堂でご飯を食べていた。それも社長のラストラッシュも一緒に飯を食べているのだから、他の社員は緊張した面持ちでガタガタと指を震わせながら御飯にありついている始末である。それぐらい、ラストラッシュは部下達から恐れられているようだが、旺伝とダニーボーにとってはただの金髪モヒカンの眼鏡兄ちゃんに過ぎないので何とも思わずに御飯を注文して飯を食べていたのだった。そして食堂にはこれでもかとデカいテレビが天井にぶらさげられている。あれはきっと今話題の101インチ超極薄型テレビだろうと旺伝は思っていた。自分のように19インチのドラム缶を使っている貧乏人とは大違いだなと、旺伝は歯がゆい気持ちと嫉妬感のようなものを感じていたところであるのだった。


「やっぱり昼頃なだけあってニュース番組が多いな」


 大体、お昼はサラリーマンもテレビを見れる時間なのでニュース番組を中心に放送している局がほとんだ。基本的にはバラエティ番組であるにも関わらず、たまに隙を見てニュースを放送しているのもその手法の一つである。そしてテレビのチャンネルはNHKにセットされているようで、旺伝の溜め息はよりいっそう深くなっていた。彼は過去に祖父からNHKを見る事を強要されていたので、そのトラウマが頭の中に過ってしまう。別にあの局が嫌いな訳では無く、むしろ時代劇とか宇宙の神秘を探ったりする番組もたくさんあって興味を抱いているのだが、どうしても嫌な記憶が脳内で蘇ってくるので溜め息が出てしまうのだった。


 すると、NHKは銀行強盗について報道していた。なにやら旺伝達が住んでいる碩大区の厳重な警戒から正面から挑んで、ありったけの金を盗み出した輩がいるそうだ。しかもその輩はとても人間業とは思えない程の強盗っぷりをしたようで、銀行のセキュリティドアを破壊して無理矢理金を掻っ攫ったのだ。さすがの旺伝もこれには度胆を抜かされて、NHK恐怖症が軽く吹っ飛ぶ程の驚きを見せていた。


「もしかすると悪魔の仕業かもしれませんね」


 ラストラッシュがボソッと呟くと、旺伝もその言葉には微妙に納得していた。各銀行のセキュリティドアには魔法を一切受け付けない結界が貼られているのがナウい警備なので、魔法使いでは到底破られない。恐らく、ラファエル=ランドクイストをもってしてもドアを破るのは不可能だと噂される程の頑丈さを持っている。しかし、その反面物理攻撃には弱いようで、このようにニュースとなっている訳だ。悪魔は人間離れした力を持っているからこそ、セキュリティドアをワンパンで破壊してまんまと金を持って逃げた訳だ。少なくとも旺伝はそのように解釈していた。と言っても、これが真実とは限らないので想像に過ぎないのだが。


「ああ……そうだ。きっとそうに違いない!」


 何の確証もなかったが、そう思わさせる根拠と理由はあった。それに今の旺伝は悪魔を一刻も捕えて雇い主の元に送る事で使命感に燃えているので全ての現象を悪魔の仕業だと結びつける思考を持ち合わせている程だった。しかしそうなってくると分別がつかなくなるので、日常生活では極力、この被害妄想に似た感情を伏せて仕事に熱心な態度をとっていた。ところが、ここにきて悪魔の仕業だと自信を持って言える事件が発生したので旺伝は張り切りを見せている訳であった。


「確かに調べる価値はありそうだ」


 ダニーボーイも冷静の表情をしているが、内心はウキウキ状態に違いないと旺伝は感じていた。ようやく天敵の悪魔の情報を得られそうな機会に恵まれているので、これ以上の幸福感はないだろう。そもそもダニーボーイだっていつまでも暇なデスクワークに乗り出している暇も無い筈だ。


「よし。今日は仕事を休んで現場に行ってみるか!」


 そして、もはや旺伝の心の中では銀行破りの犯人が悪魔だと確信を持って言えるまでに思考が回転していた。こうなると、直接現場に行って悪魔の手がかりを見つけようと思うのも無理はない。旺伝が二人の顔を見ながらそう思っていると、どうやら二人も同じ考え方のようでコクリと顎を立てに動かしていた。


 こうして、三人は死にもの狂いで飯を喉の中に押し込んだと思うと、現場に向かって急行するのだった。勿論、乗り物はこういう非常事態の時に愛用しているステルスヘリだ。




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