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老害は人によって意見を変える点も、嫌われる要因となっている。奴等は口先の魔術師と呼ばれているぐらい言葉を変える。相手が自分の上司ならば笑みを浮かべて上司に近づいて甘えた言葉を出して自分に取り入れようとしているのだから性質が悪い。自分を惨めな人間だと分かっていないから、こういう人を迷惑にさせる行為を多岐に渡って繰り返す事が出来るのだ。普通の人間の感覚を持っていれば上司や部下に甘えて自分は楽しようなどとする筈も無いのだから、性格そのものが捻じ曲がっていてイカレているのだろう。奴らが常に笑顔を絶やさないのは相手を気持ちよくさせるためである。これは詐欺師の手段と同じであり、老害は上司や部下を手ごまにして動かすために感じの良い自分を演出している。そして奴等の大半は考え方が子供であり、裏になれば愚痴と嫌味を言いまくっているのだから老害は死すべき存在であると旺伝は考えていた。
「社会に貢献出来ない老害は全滅してしまえばいい」
奴等が伸し上がって、真面目な人間が批判されるのは面白くないと思っていた。特に社会では詐欺師のような人間が昇格するのは誰もが予想出来るレベルであり、その通りだとも言える。昇格するのは仕事が出来る人間ではなく、むしろ上司にゴマをすって自分の思い通りに動かそうとする陰湿な輩だ。旺伝も会社員として働くようになってから、そういう裏のある人間を多く見てきた。老害は自分のミスを他人に押し付け、他人の手柄を自分の手柄にする術に長けているので、ほとんどの上司が奴等にだまされて、老害は内心でほくそ笑んでいるのだ。見かけでは真面目そうな顔をしていても、心の底では笑いが止まらずにゲラゲラと笑っている。特に奴等は他人の不幸が大好物なので、もしも仕事中に不幸事があったら老害の顔に注目して欲しい。僅かに口元をゆるませて鼻の穴をピクピクと動かしている筈だ。他人がミスをして説教されている所を見るのが老害は好き好き大好きなので、アドレナリンが放出して笑みを堪えきれないのだろう。内心でほくそ笑んでいるのを隠しきれていないので、老害を区別するためには口元と鼻に注目すればよい。不謹慎な出来事が起こっている中で笑みを我慢しているような奴は百発百中で老害なので、奴等に対しては差別的な目で睨みつけようと旺伝は心に決めていた。
「そうですね。特に日本は老害の国ですからお年寄りは中々仕事に就く事が出来ません。老害の割合があまりにも多いと、組織の人間も分かっているのでしょうね」
しかし、クレイノート社は御老人の方が以外にも多く働いている。その理由は勿論、有能な人間は歳など関係なく採用するというラストラッシュ独特の考え方を持っているから良いのだが、相手が老害かどうかは面接だけでは判断できない。それぐらい、老害は言葉巧みに自分を感じの良い人間だと相手に錯覚させる事が出来るので、恐らくクライノート社にも老害の魔の手が忍び寄ってきている筈だ。その事についてはラストラッシュはどう思っているのだろうか。不意に、旺伝は疑問を感じていた。




