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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 ついに決心した。いつまでもこの状態を放っておくと、ゆくゆくは会社全体の不運を招きそうな恐れさえもあったので、ここで立ち止まる訳にはいかなかった。やはり人間は感じの悪い人間をどうにかしようという気持ちは必ず芽生えるのだが、ほとんどの人間は見て視ぬフリをするのでタチが悪い。「あれが彼奴の性格なんだ」と自分の勝手な都合を決めて注意をしようと思わない。仕事でミスをすれば怒ってくれる上司でさえも、性格まで否定しようとは中々しないので本人も自分が無愛想だと気付かないまま大人として成熟してしまうというケースは多々見受けられるので、後輩や同僚の感じが悪いと思えば、必ず注意した方が良いのだろうと旺伝は考えていた。この考えが正しいのかどうかは分からないとしても、このままにしておくのはきっと未来の自分は後悔するだろうという憶測が脳内で駆け巡っていた。それ故に注意しようというのだ。


 しかし、分かると思うが他人の子を注意するという行為はかなり勇気がいる。昔はそうじゃなかったのに、今では放任主義のような感覚が組織全体を蔓延っているので、優しい口調の人間よりも厚かましい人間に出会う方がよっぽど確立が低いのだ。職場の人間が全員厚かましくて口うるさいのは滅多に無いことであり、小難しい人間は部署の中に一人ぐらいの割合だろう。それぐらいの希少度なので最近の若者は怒られることに慣れていないので、どうしても注意されると反感を買われてしまう。こちらとしても当たり前の感覚が注意したにも関わらず、後輩達は違うというのだ。昔は叱られて当たり前という風潮があったのに今では大人達もすっかり干からびてしまい、慢心している後輩を見ても無視をする傾向がかなり強まっている。このままでは若者たちにも悪影響が出てしまうので大人がなんとかしないといけないのだが、中々それは出来ない。本当は飴と鞭を交互に使って上手に人材を育成するのがプロフェッショナルであるというのに、それさえもできない情けない大人が増えてしまっている。本音では決して語らずに、上辺だけで物を言う人間は本当に多いので困ったものだ。


「注意したいが、その勇気が中々湧いてこない」


 旺伝は頑張っている。勇気を振り絞って注意しようとするのだが、どうしてもその一言が口の中から出てこない。その理由はやはり自分としても注意されるのはあまり嬉しくないので、ダニーボーイの反感を買われるんじゃないかという被害妄想のような気持ちが脳内をめぐる。やたらめったら注意する人間はこのような葛藤をした上で、相手に注意をしているので逆上する若者もどうかと思うが、それが時代の流れなのだからある意味では認めるしかないのかもしれない。己の心の弱さからくる臆病な考え方を。


「私も分かりますよ。特に年下の部下達を注意するのは勇気がいります」


 まさしくその通りだ。学生時代は完全に年功序列なので先輩にタメ口を使うものならばコンクリートの上で背負い投げされる危険性があるぐらいだ。ところが、いざ社会に出てみると年下の部下は当たり前なので学生気分で就職すると痛い目に遭う。序列関係は学生時代とはまったく違うと考え方を断ち切らないとお話しにならない。年下の上司を持つのも辛いかもしれないが、上司からしてもやりにくい感情は多少なりともあるので辛いのは自分だけじゃないと割り切る必要がある。向こうも申し訳ない気持ちを胸に抱いている筈なので、その考え方を分かってあげるべきだ。ラストラッシュのように年上の部下を多く持つまでに出世すれば上司の気持ちも分かると思うが、それはそれで難しいので無理にとは言えないのだが。


「そうだな。その気持ちはなんとなく分かるよ」


 年上の人間をこき使うのは辛いのは言うまでもない。相手が親の仇ならば話は別だろうが、そんな事が無い限りは基本的に精神的にキツイものがあるのでラストラッシュは思っている以上に病んでいるのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。いずれにしても人間の考え方は人それぞれだ。



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