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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 無愛想な奴に限って暴言を吐いて場の空気を乱す輩に相場が決まっている事を旺伝は知っている。なぜならば口数の少ない奴はストレスを心の内側に溜めこんでいて、ふとした瞬間に風船が破裂するかのように爆発させて、周囲の皆をアッと驚かせるのだから余計にタチが悪い。当たり前だが、暴言を吐いて許されるのは精々中学生までであり、高校生以上になると下手に暴言を吐けば退学の恐れも出てくるので、ある意味では高校生は社会人と似たような境遇を受けている。それこそ校則は社則と同等の意味であり、提出期限のあるプリントは提出期限のある報告書と同じようなものだ。このように高校生には社会人と共通する点が多々存在するので、もしも高校を嫌だと思っている人間がいれば社会に出ても仕事が嫌だと悩む確立は100%である。社会は高校よりもよっぽど自由度が高いかもしれないが、自由過ぎて自分が何をすればいいのか分からずに混乱してしまう場合があるのでとにかくどんな時でも落ち着けるようにトレーニングしておけば良かったと思う旺伝だった。仕事が立て込んで、提出期限ぎりぎりになると胃が痛くなって会社の内線電話にビクビクと怯えながら胃を押さえる自分を客観的に見ると、あまりにもナンセンスだからだ。自分がここまで精神的ストレスに弱いとは知らずに、高校時代に不平不満を言っていたばかりに相応の準備が出来ていなかった。もしもそれ相応の準備が出来ていればこんな風にはならなかっただろうなと、思う旺伝だった。だからと言って、後ろばかり見ていても前には進めないので、なんとか落ち着かせようとして伸びをしたり肩を揉んだりするのだがあまり効果が無い。それは当たり前だ。本当は落ち着けないのに無理して落ち着かようだなんて虫が良すぎるので何とか自分を言い聞かせてストレスに耐えるという地獄のような毎日を過ごしていた。やはり旺伝には会社員は合わず、大人しくフリーターでもしていれば良かったのだ。なんとか借金を返済してこの正社員奴隷地獄から抜け出さないとストレスで精神を蝕まれてしまうと旺伝は躍起になっていた。そんな矢先にダニーボーイが現れたのだから余計にストレスは溜まってしまうものだ。彼は「次に悪魔を仕留めなかったら、君の身体を使わせてもらう」という苦い一言を残しているだけに、目の前の仕事に集中出来ない自分がそこにはいた。


「黙ってる奴って逆に目立つよな」


 まさしく旺伝の言う通りだ。本人は目立たないように口を閉ざしているのかもしれないが、周りは仲良く喋っている仲で一人だけダンマリを貫いている奴がいれば目立つのも当たり前である。空気を読んで自分も喋ればいいのだが、奴等はそんな気の利いた事はしない。むしろ、口を開けば暴言を言って人の事を「お前」とか「こいつ」とか言って名前で呼ばないバカがいるのだからイライラするのも仕方がない。こういうクズのような人間を職場に招き入れた人事部が悪いので、そういうのを見抜けなかった採用者にも責任があるので感じの悪い人間が大勢所属している会社は要注意だなと、旺伝は身を以って感じていた。しかし、目の前のダニーボーイは仕事が出来るのでまだマシだった。世の中にはとにかく仕事が出来ないくせに大きい顔をして偉そうな態度をとる輩が多すぎるのだから、そういう会社を蝕む害虫は駆除されれば良いのだ。一人残らず。


「目立ちますね。口数の少ない人間は」


 とにかく「話しかけるな」というオーラが凄まじいので、何処にいても存在感に溢れている。ハッキリ言って大声を出して叫び倒している人間よりも、無愛想な顔でブスッとしている人間の方がよっぽど目立つし、異常者という雰囲気があるのは絶対的には後者の方だ。彼は何故、会話に参加してこないのか理解できない。もしも第三者の会話に理解しているのなら、首を突っ込んででも会話に参加するべきだ。そうじゃないと会社の中で『無愛想な人間』という屈辱的なあだ名をつけられて、窓際に追い込まれる未来しかまっていないので、そうなりたくなければ普通に喋ればよい。


「本当だよな。自分はそうじゃないと思っているかもしれないけどさ、めちゃめちゃ目立ってるっつうの」


 旺伝はそうだと言うのだった。



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